7月16日、PYMNTSが「DeepSeek Revenue Nears $500 Million as Chinese AI Startup Eyes IPO」と題した記事を公開した。競合の約27分の1という破格の価格設定でありながら粗利率70〜80%を確保する——その高収益構造を武器に、中国のAIスタートアップDeepSeekが年間換算収益5億ドル近くに達し、IPOを含む大型資金調達を本格的に検討していることが明らかになった。
年換算収益は最大5億ドル、IPO申請は今年中を目標
The Informationが事情に詳しい3人の関係者の話として報じたところによると、設立3年のDeepSeekの年換算収益は4億〜5億ドルに達した。収益の大半はAPIを通じたクラウドアクセスの販売、すなわちモデルへのAPI課金によるものだ。
同社は現在、500億元(約69億ドル)の企業価値での評価を前提に、50億元(約6億9000万ドル)の資金調達を目指している。この評価額は年換算収益の約10〜17倍に相当する。
上場先として検討されているのは上海のSTAR Market(科創板)だ。STAR Marketはハイテク・イノベーション企業を主な対象とした市場で、中国のNASDAQとも称される。今年中にIPO申請を行い、来年の上場完了を目指しているとされる。また、中東の投資家からの資金調達にも強い関心を示しているという。
粗利70〜80%の高収益構造——なぜ安く提供できるのか
DeepSeekのビジネスモデルで特筆すべきは、低価格でありながら高い粗利率を維持している点だ。同社のフラッグシップモデルである「V4」(DeepSeek-V4)のAPI提供において、粗利率は**70〜80%**を確保している。なお、DeepSeekのモデル体系はV系列(汎用大規模言語モデル)とR系列(推論特化モデル)に大別されており、V4はその最新汎用モデルにあたる。
価格面では、DeepSeekのAPIは100万トークンあたり2.19ドルで提供されている。2025年2月時点でOpenAIのo1モデルが同60ドルであったことと比較すると、約27倍安い計算になる。
この価格差を支えているのがインフラ効率の改善だ。より少ないチップで多くのクエリを処理できるよう最適化が進んでおり、モデルの運用コストを大幅に削減している。これはDeepSeekが一貫して主張してきた「強力なAIモデルは少ない計算インフラでも開発・運用できる」という命題の実証でもある。
セキュリティ懸念と企業導入の実態
コスト面での優位性から、企業によるDeepSeekモデルの採用は進んでいる一方、国家安全保障とデータプライバシーに関する懸念は依然として残る。PYMNTSの過去の報道によれば、モデルをオンプレミスで自己ホストすることでデータの外部流出リスクを低減できるが、DeepSeekのコンシューマー向けアプリケーションを利用する場合はデータ共有リスクが高まるとされている。
創業者の方針転換——「外部資本は不要」から上場へ
Wall Street Journalによれば、創業者の梁文鋒(Liang Wenfeng)氏はこれまで外部資本の受け入れに否定的で、商業化よりも先端研究を優先する姿勢を貫いてきた。今回のIPO検討はその方針からの大きな転換を意味する。
背景にあるのは計算資源(コンピュート)の調達コストだ。AI開発の規模が拡大するにつれ、オープンソース志向のAI開発者であっても、ベンチャー資本や公開市場への依存を避けられなくなりつつある実情が浮き彫りになっている。
詳細はDeepSeek Revenue Nears $500 Million as Chinese AI Startup Eyes IPOを参照していただきたい。