7月13日、TNW(The Next Web)が「AI's gas-plant boom, and the fight to stop it」と題した記事を公開した。AIデータセンターの急拡大が引き起こす天然ガス発電所建設ラッシュと、それを阻止しようとする州・規制当局・市民の動きを詳報している。
「ガス発電所ブーム」の正体
AIインフラ整備が、化石燃料業界が自力では成し得なかった事態を招いている。AP通信によれば、天然ガス発電所の建設ラッシュが史上最大規模に達している。老朽化した石炭発電所も廃止予定日を過ぎてなお稼働を続けており、電力会社・施設オーナー・連邦政府がこぞって閉鎖の先送りを押し進めている。
理由はシンプルな算数だ。データセンターによっては中規模都市ひとつ分の電力を消費するが、風力・太陽光はそのペースで建設できない。
州法による規制の試み
事態を打開しようと、複数の州が法制化に動いている。
ニューヨーク州のKathy Hochul知事の署名待ちとなっている法案では、大規模データセンターに対して2030年から再生可能エネルギー基準の達成を義務付け、2040年までに少なくとも90%を再エネで賄うことを要求している。法案を起草した州上院議員Kristen Gonzalezは「データセンターに数十億ドルを投じられる企業なら、その電源を自前で整備する余力もある」と主張する。
ミシガン、オレゴン、ミネソタの3州はすでに動いており、いずれも過去18カ月以内に2040年の排出ゼロ電力に関する既存コミットメントを守る法律を成立させた。ミシガン州はより直接的な手段として、ハイパースケールデータセンターが6年以内に90%クリーンエネルギーを達成しなければ、手厚い売上税免除の恩恵を失う仕組みを導入した。
同様の法案はカリフォルニア、イリノイ、ニュージャージー、ペンシルベニア、バージニアにも登場している。
「対立する側」の正直な告白
記事の中で最も本質を突いているのは、勝利宣言でも反論でもない。オレゴン州市民公益委員会(Citizens' Utility Board)のBob Jenksが認めた次の言葉だ。
「2040年の目標は、データセンターがあっても難しいし、なくても難しい」
つまり、クリーンエネルギーへの移行はAIの登場以前からすでに綱渡り状態だった。そこにAIが来て、目標をさらに遠ざけた。
家庭への影響も出始めている。多くの電力管轄区域で電気代が上昇しており、AIデータセンターがラストベルト(米国製造業衰退地帯)の工場の電力コストを押し上げているという報道も出ている。
規制の「裏口」戦略:大口需要家が自前で発電する
建設ラッシュに正面から対抗できないと見た推進派は、規制を迂回する戦略に切り替えた。狙いは、大口電力需要家が自前のクリーン発電設備を建設し、送電網に接続することを規制当局に認めさせることだ。
コロラド州はXcel Energyにそのようなプログラムの策定を命じた。Xcelは4月の申請でこれが顧客に利益をもたらし得ると認め、Googleがネバダ州で115メガワットの地熱、ミネソタ州で1,900メガワットの風力・太陽光・蓄電を接続したプロジェクトを例として挙げた。
GoogleとNV Energyの契約は業界初とされており、同社によれば同様の取り決めがすでに他の8州で承認済みまたは審査中だという。企業向けエネルギー購入者協会(CEBA:Clean Energy Buyers Association)はジョージア電力との類似契約を締結し、ノースカロライナ州でも交渉中だ。
電力会社へのセールスポイントは道義的なものではなく商業的なものだ。大口顧客が独立した自家発電設備を建設して送電網から離脱するよりも、グリッドの拡張費用を負担してくれる長期顧客を獲得できるという論理である。
本当の戦場は「送電網への接続順」
法律よりも決定的なのは、送電網への接続をめぐる規制だ。規制当局はデータセンターの系統連系を優先処理する動きを見せており、この接続待ちの順番を誰が管理するかが、何が建設されるかを左右する。
資金もそのボトルネックに集中している。Nvidia支援のスタートアップがデータセンターの電力問題の解決に向けた資金調達を進めているように、今やAIの制約要因はシリコンではなくエネルギーだ。
市民の反発も大きい。2026年第1四半期だけで、総額1,300億ドル相当の75件のデータセンタープロジェクトが地域住民の反対によって阻止されており、議会もデータセンターのエネルギーコストをテック企業に負担させる法案の採決を行った。
CEBAの政策責任者は、今下される判断が今後20〜30年のエネルギー政策を規定すると見ている。ガス発電所はルールが書き終わる前にコンクリートで固められていく。コンクリートはたいていそのレースに勝つ。
詳細はAI's gas-plant boom, and the fight to stop itを参照していただきたい。