7月11日、Wiredが「OpenAI's Head of Safety Is Leaving the Company」と題した記事を公開した。OpenAIの安全システム責任者であるJohannes Heideckeが退職を表明したのは、同社が安全チームを研究チームへと統合する組織再編を実施した直後のこと。さらに今週だけで安全系リーダーの離脱が複数重なっており、OpenAIの安全研究体制に対する外部からの注目が再び高まっている。
安全部門の再編と責任者の離脱
OpenAIの安全システム責任者(Head of Safety Systems)であるJohannes Heideckeが今週、社員に向けて退職を通知した。Heideckeの退社は、OpenAIが安全チームと研究チームを統合する組織再編を実施した直後のタイミングで起きている。
Wiredが入手した社内メモによると、最高研究責任者(CRO)のMark Chenは、安全チームが今後はVP of ResearchかつHead of AlignmentであるMia Glaeseの管轄下に置かれると通達した。Glaeseは新たに「VP of Research and Safety」という拡張された役職に就く。また、かつて安全チームを率いていたSaachi Jainが暫定的な安全システム責任者となり、Glaeseに報告する体制となる。
Mark Chenはメモの中でこう述べている。「安全に対する要求は増し続けている。モデルのトレーニング頻度は大幅に上がり、リリースサイクルは大幅に短縮された。その結果、安全に関わる調整課題は今まで以上に大きくなっている。」
Heideckeは2021年にAI安全アナリストとして入社し、2024年に責任者に昇格した人物だった。
新モデルのリリースと「懸念される挙動」の公認
Heideckeの離脱は、OpenAIが急速に能力を高めるAIモデルのリリースを続けるさなかに起きた。Wiredの記事によると、OpenAIはエージェント的なコーディングタスクで同社最高性能を誇る新モデルをリリースしたばかりだが、OpenAI自身がそのモデルについて「懸念される形のミスアライメント(misaligned behavior)」を示したと認めている。
ミスアライメントとは、AIが意図した目標や価値観から逸脱した行動を取る現象を指す。安全性研究の文脈では重大なシグナルとして扱われる概念であり、OpenAIの安全チームが担ってきた中核的な課題でもある。こうした公認が行われた直後に安全責任者が離脱したという事実は、タイミングの面で外部からの関心を集めやすい状況にある。
今週だけで複数の安全系リーダーが退社
Heideckeの前任にあたる安全システム責任者のLilian Wengは2024年に退職し、元OpenAI研究者らとThinking Machines Labを共同創業している。
今週はさらに、安全に関わる人材の離脱が重なった。OpenAIのチーフ・フューチャリストで9年間にわたり安全研究に従事してきたJoshua Achiamも、同僚に退社を告げている。
加えて、Wiredの記事ではFidji Simoが長期の医療休暇を経て退任することも報じられている。同記事によれば、Simoの不在中に製品チームを率いてきたGreg Brockmanが、引き続き製品部門のリードを務めるという。
「研究との統合」が示すもの
Mark ChenのコメントにあるOpenAIの公式見解は「安全業務をフロンティアモデル開発と統合し、モデル・製品・ローンチの意思決定により早期かつ直接的に関与させる」というものだ。組織として安全を軽視するのではなく、開発プロセスの中に組み込む意図を強調している。
しかし、2024年から2025年にかけてOpenAIの安全系リーダーが次々と離脱しているという事実は、外部から見れば単純に楽観視できるものではない。「統合による強化」という説明と、実際に責任者が相次いで退社するという現象が並行して起きていることに対し、研究者や業界観察者からの注視が続いている。
詳細はOpenAI's Head of Safety Is Leaving the Companyを参照していただきたい。