7月12日、Matthias Bastianが「S&P Global sees OpenAI as a "key credit risk" for Oracle and cuts its credit rating」と題した記事を公開した。S&PグローバルがOracleの信用格付けを引き下げた今回の判断で、最も衝撃的なのはその理由だ。Oracleが抱える6,380億ドルの契約上の義務のうち約半分を、たった一社・OpenAIが占めている。S&Pはこの集中リスクを「key credit risk(主要な信用リスク)」と明示し、Oracleをジャンク債まであとワンノッチの水準へと格下げした。AIインフラへの巨額投資が、信用リスクとして公式に認定され始めた最初の大きな事例といえる。
S&P、Oracleをジャンク債まであとワンノッチへ格下げ
S&Pグローバルは、OracleのAIビジネスに関連する財務リスクを理由に、Oracleの信用格付けを「BBB」から「BBB-」へ1段階引き下げた。
S&Pの格付け体系では、BBBは「投資適格・中程度の信用力」を示す水準であり、BBB-はその最低ランクにあたる。BBB-をさらに一段下回るとBB+となり、これはいわゆる「ジャンク債(投機的格付け)」の領域に入る。投資適格を義務付けられている年金基金・保険会社・一部の機関投資家は、ジャンク債への投資が規約上制限されているケースが多く、格付けがBBB-を割り込んだ瞬間に大規模な売却圧力が生じるリスクがある。今回の格下げはそのギリギリ手前であり、市場へのシグナルとして重い意味を持つ。
格下げの核心にあるのが、OpenAIへの依存だ。Oracleが抱える6,380億ドルの契約上の義務のうち、約半分をOpenAIが占めている。S&Pはこれを「key credit risk(主要な信用リスク)」と明示した。
データセンター投資が膨らみ続ける一方、収益化は遠い
S&Pによれば、OracleのAI関連の設備投資見通しは当初の600億ドルから950億ドルへ(2027年時点)と大幅に上方修正された。問題は、その投資に見合う収益が数年先まで見込めない点だ。
もしOpenAIが経営破綻するような事態になれば、Oracleは埋めようのない大規模なデータセンター余剰キャパシティを抱えることになる。S&Pはこの点において、OracleがAWS・Google・Microsoftより不利な立場にあると指摘している。後者3社は自社のワークロードで余剰キャパシティを吸収できる上、財務的な余力も大きい。OracleにはそのバッファーがなくOpenAI依存度が突出しているため、相対的なリスクが格付けに直接反映された格好だ。
OpenAIリスクはOracleだけの問題ではない
S&Pの指摘はOracleに限った話ではない。AWS・Google・Microsoftも、OpenAIが破綻した場合には「財務的に深刻な打撃を受ける」とThe Informationは報じている。なお、同記事はAnthropicのGoogle Cloudへの支出に関する報道を起点としており、OpenAIと同様にAI企業がクラウド大手の財務に与える影響を広く論じた内容となっている(該当記事)。
市場の懸念は他にも広がっている。SoftBankはOpenAI株を担保とした融資枠を100億ドルから60億ドルへ削減せざるを得なかったと報じられている。これは貸し手がOpenAIの非上場企業としての評価に難色を示したためとされており、非上場企業の評価の不透明さが融資の現場でも実際の障壁になっていることを示す事例だ。OpenAI自身のIPOも2027年以降にずれ込む見通しであり、サム・アルトマンは1兆ドル未満の評価額での上場を望まないとされているため、市場との折り合いがついていない状況が続いている。
集中リスクが格付けを動かした事実の重み
今回のS&Pの判断が示すのは、AIインフラへの巨額投資が信用リスクとして正式に認定され始めたという事実だ。OpenAIという一社への集中依存が、クラウドインフラ企業の格付けを動かすほどの規模になっている点は、業界全体にとって無視できないシグナルだ。非上場企業の評価の不透明さが、融資や格付けの現場で実際の障壁になっていることも浮き彫りになった。
※編集部の考察:OracleがBBB-に留まっている間は機関投資家の強制売却は発生しないが、今後の設備投資拡大やOpenAI依存が続く限り、さらなる格下げ圧力が継続する可能性はある。格付け動向は引き続き注目に値する。
詳細はS&P Global sees OpenAI as a "key credit risk" for Oracle and cuts its credit ratingを参照していただきたい。
