7月10日、Varietyが「RIAA, Grammys, SAG-AFTRA and Other Groups Launch New Labeling Program for AI Music」と題した記事を公開した。RIAA・グラミー賞・SAG-AFTRAなど音楽業界の主要団体が連携し、AI生成音楽に対する統一ラベリングプログラムを発足させたことを報じている。
「AI Generated」か「AI Assisted」か——業界横断のラベル規格が誕生
音楽業界を代表する複数の団体が、AI音楽への対応で足並みを揃えた。RIAA(全米レコード協会)、IFPI(国際レコード産業連盟)、グラミー賞を運営するレコーディング・アカデミー、SAG-AFTRA(映画俳優組合・テレビ・ラジオ芸術家連盟/Screen Actors Guild – American Federation of Television and Radio Artists)が共同で、AI音楽向けラベリングプログラムを発足させたと発表した。
今回導入が提案されたラベルは2種類だ。
- 「AI-Generated(AI生成)」:リードボーカルや主要楽器がAIによって生成された場合、またはプロンプトのみで楽曲全体が制作された場合に付与
- 「AI-Assisted(AIアシスト)」:人間が制作した楽曲において、AIが「一部の表現的要素」を補助した場合に付与
ラベルはトラック単位で付与される。現時点では、歌詞・楽曲の作編曲・ミュージックビデオ・カバーアートへのAI使用には適用されない点に注意が必要だ。
このラベルの位置づけは、CDや配信楽曲に付与される「エクスプリシット(不適切な表現を含む)」マークに近い——リスナーが一目で判断できる標準的な表示を目指している。
なぜ今、業界が一丸となったのか
背景にあるのは、SunoやUdioといったAI音楽生成サービスの台頭だ。これらのサービスは、既存アーティストの楽曲を無断で学習データに使用したとして著作権侵害訴訟を抱えており、音楽業界との対立が続いている。
ストリーミング各社の対応もばらばらだった。SpotifyとApple Musicはアーティスト自身によるラベル申告を前提とする方式を採用。一方、Tidalは独自にAI生成楽曲をタグ付けし、さらにそうした楽曲からのロイヤリティを禁止するという強硬策に出ている。申告ベースにとどまるSpotify・Apple Musicと、プラットフォーム主導で規制まで踏み込んだTidalとの間には明確な温度差があり、こうした対応の分断が業界統一規格の必要性を押し上げた形だ。
今回の取り組みには、RIAA・IFPI・グラミー賞・SAG-AFTRAに加え、以下の団体も参加している。
- American Association of Independent Music(A2IM):米国のインディペンデントレーベルを代表する業界団体
- Worldwide Independent Network(WIN):A2IMに相当する各国団体の国際連合組織
- European Independents Association(IMPALA):欧州インディペンデント音楽産業の利益を代表する団体
- Human Artistry Campaign:AIの急速な普及に対して人間のクリエイターの権利保護を訴えるため、音楽・映像・出版分野の団体が結集したアドボカシー連合。RIAA・AFM(全米音楽家連盟)・SAG-AFTRAなども参加している
各団体と当事者の反応
IFPI CEOのVikki OakleyとRIAA会長兼CEOのMitch Glazierは連名で次のように述べている。
「ファンは、自分が聴いている音楽においてジェネレーティブAIがどのように使われているかを知りたがっている。人間の芸術性と真正性が音楽ファンにとっていかに重要かを踏まえれば、これらのラベルは透明性への即座に理解できるアプローチを提供する。」
グラミー賞CEOのHarvey Mason Jr.は「アーティストがその経緯を伝える能力を与えることで、信頼が強化され、音楽の持続可能な未来を支える」と述べた。
SAG-AFTRAのナショナル・エグゼクティブ・ディレクターDuncan Crabtree-Irelandは、「AIは同意と公正な補償なしにアーティストを置き換え、模倣し、搾取するために使われるべきではないという原則を引き続き強調する」とコメントした。
一方、Sunoのスポークスパーソンは「透明性は重要だと考えているが、これらの複雑な問題をどう扱うかはアーティストとプラットフォームが決めるべきだ」と述べ、業界主導の枠組みに対して一定の距離を置いた。同社はすでにウォーターマーキングや音声フィンガープリンティングといったツールを導入しており、アーティスト自身がAI使用を開示できる仕組みを整備済みだとしている。
コンテンツ認証の標準化という文脈
AI生成コンテンツへのラベリングは音楽業界に限った話ではない。画像・動画分野では**C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)**がメタデータによるコンテンツ来歴の標準化を進めている。C2PAはAdobe・Microsoft・Intel・Arm・BBCらが創設メンバーとして立ち上げた業界横断の標準化団体であり、生成AIコンテンツの出所を技術的に証明する仕組みの普及を推進している。音楽業界が今回打ち出した枠組みが、実際の配信プラットフォームにどこまで採用されるかが今後の焦点だ。
詳細はRIAA, Grammys, SAG-AFTRA and Other Groups Launch New Labeling Program for AI Musicを参照していただきたい。