7月10日、Benedict Collinsが「AI servers set to out-consume every traditional data center by 2027 as power security becomes 'the new battle ground for scaling and protecting margins'」と題した記事を公開した。2030年には電力消費量が1,200TWhを超え、供給が需要に追いつかなくなる——Gartnerはそう予測する。日本の年間総発電量が約1,000TWhであることを踏まえると、AIデータセンターだけで一国の発電量を超える規模の電力が求められる時代が、わずか5年先に迫っている。
2027年、AIサーバーが従来型データセンターの消費電力を超える
Gartnerの最新予測によると、AIに最適化されたデータセンターの電力消費は2026年に175テラワット時(TWh)に達し、2027年には258TWhへと拡大する見通しだ。一方、従来型データセンターの消費量はそれより低い水準にとどまり、2027年にAIデータセンターがこれを追い抜く計算になる。
2025年と比較すると、AIデータセンターの消費電力は約84%増加している。データセンター全体の消費量で見ると、2026年は565TWhと前年比26%増の見込みだ。
「電力確保が、スケールアップと利益率を守るための新たな戦場」
Gartnerのダイレクトアナリスト、Linglan Wangは次のように述べている。
「コンピューティング集約型AIワークロードへの需要急増がデータセンターの電力消費を空前の規模で押し上げており、AI容量は今や電力の確保可能量に制約されている。データセンターの電力セキュリティが、グローバルなAIレースにおいてスケールアップと利益率を守るための新たな戦場になっている」
米国に絞ると、全世界565TWhのうち36%にあたる約204TWhを米国が消費しており、その中でAIデータセンターは約3分の1、68TWhを占める見込みだ。
2030年には供給が需要に追いつかなくなる
Gartnerはさらに長期的な警告も発している。2030年には消費量が1,200TWhを超え、電力供給が需要に追いつかなくなると予測している。前述のとおり、これは日本の年間総発電量(約1,000TWh前後)を上回る数字であり、一国規模の発電インフラに匹敵する電力をAIデータセンターだけが要求するという、前例のない事態だ。(※編集部の考察:日本の発電量との比較は元記事に記載のない注釈であり、規模感の参考として付記した)
この制約への対策として、WangはAIワークロードを最も消費する冷却システムなどのハードウェア効率化と電力グリッドのアップグレードに注力するよう、ビジネスリーダーおよびインフラ提供者に提言している。
別途、Google Cloudのレポートでは、電力コスト増大への対策として集中型クラウドからエッジデプロイへの移行が提案されている。エッジへの分散配置は効率向上に加え、集中型クラウドの障害による広域サービス停止リスクの回避にも寄与するとされている。元記事ではこのGoogle Cloudレポートが、電力制約下での設計指針の一例として紹介されている。
反データセンター感情の高まりと建設遅延
電力需要の急増は、米国で強まる「反データセンター感情」をさらに悪化させる要因にもなっている。この感情的な反発は、巨大データセンターが地域の電力網を圧迫し、電気料金の上昇や停電リスクをもたらすとして住民や地方議会が建設計画に反対するという文脈で広がっており、米国各地で建設許可の遅延や条例による規制強化の事例が相次いでいる。
記事によれば、こうした住民反発に加え、ハードウェアや電力の供給不足も重なり、2026年に計画されたデータセンターの約半数が遅延または中止に追い込まれている。単に設計や調達の問題に留まらず、立地選定の段階から地域社会との合意形成が不可欠になりつつある。
インフラ投資を判断する立場にあるエンジニアやアーキテクトにとって、電力調達の見通しはもはや技術選定と同列に扱うべき要件になっている。