7月11日、Techstrong AIが「Congress Examines Security Risks as Businesses Use Lower-Cost Chinese AI」と題した記事を公開した。中国製AIモデルの米国企業への普及が急加速している。OpenAIやAnthropicの同等モデルと比べて60〜90%安いコストを背景に、米国企業による週次トークン使用量に占める中国製モデルのシェアはピーク時に**46%**を記録。事態を重視した米議会は、安全保障と経済競争の両面からリスクの審議を開始した。
米議会が中国製AIの企業採用に本格的な調査を開始
下院国土安全保障委員会と下院中国共産党特別委員会は今年4月、中国製AIモデルを利用する米国企業に対する合同調査を立ち上げた。調査の焦点は当初、AIコーディングスタートアップのCursorと民泊大手のAirbnbの2社に絞られており、各社における中国製モデルの利用実態と、機密データを保護するための安全対策について情報提供を求めている。
60〜90%安いコストが普及を加速、CursorやAirbnbも採用
注目すべきは、その価格差だ。複数の主要な中国製オープンウェイトモデルの利用コストは、OpenAIやAnthropicの同等モデルと比べて60〜90%安い。これだけのコスト差があれば、AI活用コストを抑えたいスタートアップや開発者が飛びつくのは自然な流れである。
実際、AIスタートアップのLindyはワークロードを中国のDeepSeek(中国のAI企業DeepSeek社が開発・公開するオープンウェイトモデル群)に移行することで数百万ドル規模のコスト削減を見込むと公言している。Coinbase CEOのBrian Armstrongも、より優れた価値を提供する場合には中国製AIモデルの利用を支持する発言をしている。
具体的な事例として、Cursorのコーディングモデル「Composer 2」は、中国スタートアップMoonshot AI(北京を拠点とするAIスタートアップ)が開発したKimi(Moonshot AIが提供する大規模言語モデル)を使って構築されたことが明らかになっている。Airbnbはこれに対し、AI活動の大部分は米国製モデルに依存しており、中国製オープンソースモデルの利用は限定的で、顧客データをモデルから分離する米国拠点のプロバイダー経由で処理していると説明している。
市場全体の動向を見ると、採用の加速は数字にも表れている。議員らが引用した業界データによると、OpenRouter(複数のAIモデルAPIを一元的に利用できるルーティングサービス)経由での米国企業による週次トークン使用量に占める中国製オープンウェイトモデルのシェアは、2月8日以降に30%超に達し、ピーク時には**46%**を記録した。前年の平均は11%であり、急速な拡大が見て取れる。
「オープンウェイト」という規制の難点
議員らはこの問題に対する規制の難しさも認めている。多くの中国製モデルはオープンウェイト(モデルの重みを公開し、誰でもダウンロードして独自に実行できる形式)であるため、事実上の禁止は執行が困難だ。
※ オープンウェイトモデルとは、学習済みモデルのパラメータ(重み)を公開しているモデルのこと。オープンソースとは異なり、学習コードやデータは非公開の場合もあるが、推論実行には十分な情報が提供される。
議会は同時に、米国内に十分な競合的代替手段が存在するかどうかも検証している。国内のオープンウェイトモデルへのアクセスが不十分か、ライセンス制限によって企業が中国製に誘導されているのかを調査する委員会スタッフの評価が進んでいる。
安全保障上の懸念と政治的文脈
国土安全保障委員会委員長のAndrew Garbarino氏は、中国製AIの急速な性能向上がサイバーセキュリティ上の懸念を高めていると指摘する。一部の中国製オープンウェイトモデルが、脆弱性の発見やサイバーセキュリティタスクにおいて米国の主要システムに匹敵する性能を示しているという報告を根拠に挙げている。
国務省も同様の懸念を示しており、中国製AIモデルには北京の政治的優先事項や検閲・イデオロギー的統制が反映されていると主張している。これに対し中国側は、自国のAI産業への批判は根拠のない政治的動機によるものだと反論している。
調査はまた、モデル蒸留(既存AIシステムの出力を用いて新たなモデルを訓練する手法)に関する懸念とも重なっている。米国のAI開発企業は、中国の競合他社がこの手法を利用して高度な能力の開発を加速させていると主張している。
立法化はこれから
委員会はまだ具体的な法案を提出しておらず、新たな調達規則の必要性や国内AI開発へのインセンティブを検討する段階にある。米国政府は、国家安全保障上の懸念と、低コストな外国製AIモデルへの企業の需要という相反する課題のバランスをどう取るかという難題に直面している。
詳細はCongress Examines Security Risks as Businesses Use Lower-Cost Chinese AIを参照していただきたい。