7月10日、Los Angeles Timesが「Nvidia's $1 trillion wipeout leaves AI titan trading at pre-boom prices」と題した記事を公開した。Nvidiaをカバーするアナリスト82人中81人が「買い」を推奨し、平均目標株価が現在から50%超の上昇を示唆している——にもかかわらず、株価は予想PER18倍という2019年初頭以来の割安水準まで売り込まれている。業績は過去最高ペースで伸び、市場シェアも拡大中だ。それでも時価総額1兆ドルが2カ月足らずで消えた背景には、Nvidia自身の問題ではなく、市場センチメントと資金フローの変化がある。
アナリスト総強気、しかし株価は割安水準に
Bloombergが追跡するNvidiaカバーアナリスト82人のうち、売り推奨はわずか1人。ホールド評価も3人にとどまる。平均目標株価は302ドルで、現在から50%超の上昇余地を示唆しており、これはいわゆる「マグニフィセント・セブン」(Apple、Microsoft、Alphabet、Amazon、Meta、Tesla、Nvidia)の中で最高水準だ。
それにもかかわらず、Nvidiaの株価は5月14日の史上最高値から16%下落し、約1兆ドルの時価総額が2カ月足らずで吹き飛んだ。現在の株価は予想PER(株価収益率)18倍で取引されており、これは2019年初頭以来の水準だとBloombergのデータは示している。S&P 500全体が予想PER20倍超、Nasdaq 100が約23倍で取引される中、Nvidiaの18倍という水準はHersheyやDominion Energyよりも安い計算になる。S&P 500構成銘柄の約半数よりも割安だという。
時価総額1兆ドル消失、それでも業績は過去最高水準
この下落は業績悪化を反映していない。ウォール街のアナリストたちはむしろ今後の利益予想を引き上げており、Nvidiaは2027会計年度(2027年1月期)に売上3,930億ドル、純利益2,280億ドルを達成する見通しだ。これはそれぞれ前年比82%・90%増に相当し、利益予想はここ3カ月で13%も上方修正されている。
Huntington Bankのエクイティリサーチ責任者Randy Hareは「株価は利益に連動する。Nvidiaは安定した実績を持つ銘柄だ」と述べ、今後数カ月での反発を予想している。
「売られた理由」は業績ではなく、市場の資金移動
では、なぜ株価は下がっているのか。市場の資金がNvidiaから他の半導体株へと流出しているのが実態だ。Accuvest Global AdvisorsのCIO Eric Clarkは次のように語る。
「Nvidiaの株はかつて非常に混雑したトレードだった。市場が他の銘柄へのエクスポージャーを求め始め、Nvidiaがそのための資金源になった」
資金の向かった先として際立っているのがMicron Technologyだ。高帯域幅メモリ(HBM)チップ——AIの学習・推論処理において大量のデータを高速にGPUへ供給するために不可欠な部品——への需要急増を背景に、同記事によればMicronの株価は2026年だけで229%上昇している。2025年にも239%高を記録しており、2年連続でフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の首位銘柄だ。SOX指数全体も2026年に74%上昇と、2003年以来最高のペースで推移しているという。
Nvidiaは同指数の構成30銘柄の中でワースト3位。2024年には2位だったことを考えると、立場の逆転は鮮明だ。
競合の台頭と「97%のシェア」のねじれ
株価の重しとして記事が指摘するのが競合の台頭だ。AMDやIntelの株価は今年に入ってから2〜3倍に達している。さらに重要なのが、AlphabetやAmazonといったNvidiaの主要顧客が自社製カスタムチップの開発・展開を加速させている点だ。
ただし、実際の市場シェアはほぼ動いていない。Nvidiaのサーバー用GPU市場シェアは2024年末の95%から2025年末には97%へと拡大している。データセンター向けの実需は依然として旺盛で、Nvidiaのビジネス自体は崩れていない。
Fulton Breakefield BroennimanのリサーチディレクターMichael Baileyは「センチメント(投資家の気分)が移った。期待値の低かったMicronのような銘柄が脚光を浴びている」と分析する。
強気派は「息を止めて待つしかない」
Bailey氏は「過去にも似たような急速な割安化と急速な回復を経験してきた。強気派はここで息を止めて待つしかない」と締めくくっている。業績拡大・シェア維持・アナリスト総強気という三拍子が揃いながら、株価だけが取り残されているという構図は、現在のNvidiaを取り巻く状況を端的に表している。
詳細はNvidia's $1 trillion wipeout leaves AI titan trading at pre-boom pricesを参照していただきたい。