7月10日、SiliconAngleが「Open-source AI model developer MiniMax raises $2B in funding」と題した記事を公開した。上海発のオープンソースAI開発企業MiniMaxが総額20億ドル(約3,000億円)の資金調達を実施すると報じており、同社の最新モデルが持つ技術的特徴にも詳しく触れている。
最新モデル「MiniMax-M3」の技術的な見どころ
MiniMaxが6月に発表した最新LLM「MiniMax-M3」は、4,270億パラメータを持ち、最大100万トークンのコンテキスト長に対応する大規模モデルだ。
エンジニアとして注目したいのは、推論速度の改善に使われた独自技術「MiniMax Sparse Attention(MSA)」である。
LLMが推論を行う際、処理は大きく2つのフェーズに分かれる。
- Prefill(プリフィル)フェーズ:入力プロンプトを読み込んで理解する段階
- Decode(デコード)フェーズ:トークンを1つずつ生成していく段階
MiniMaxによると、M3は前世代のフラッグシップモデルと比較してprefillが9倍、decodeが15倍高速化されているという。
MSAが速い理由
GPUにはSRAM(高速だが小容量)とHBM(大容量だが低速)という2種類のメモリが存在する。LLMの推論中はこの2つの間でデータが頻繁に転送され、これがボトルネックになりやすい。
MSAは**FlashAttention**(メモリアクセス効率を高めるML手法)を活用し、SRAM・HBM間のデータ転送回数を削減することで推論を高速化している。加えて以下の最適化も組み込まれている。
- Block-sparse prefill:大きなプロンプトを素早く処理するための技術
- 量子化モジュール:LLMが生成するデータを圧縮してメモリ使用量を削減
LLM推論の高速化はGoogleのFlashAttention採用など業界全体の共通課題であり、MiniMaxのアプローチはその文脈で位置づけられる。
LLM以外の研究領域:視覚トークナイザー「VTLシリーズ」
MiniMaxはLLMだけでなく、オープンソースの視覚トークナイザー「VTLシリーズ」も開発している。視覚トークナイザーとは、画像をLLMが扱いやすい抽象的な数値表現(ベクトル)に変換するAIモデルだ。マルチモーダルAIの基盤技術として位置づけられる。
大型資金調達の構造:20億ドルと65億ドル転換社債の関係
今回報じられた資金調達は、大きく2つのトランザクションから構成されている点に注意が必要だ。
まず、20億ドルの調達についてはBloombergの報道によると、調達額の半分超を新株発行で賄い、残りを転換社債(投資家が後から株式に転換できる債券)の発行で調達する予定だ。
これとは別に、同社は65億ドル相当のゼロクーポン転換社債(利息が付かない転換社債)を売り出す計画も報じられている。こちらは20億ドル調達に続く追加のファイナンス施策として位置づけられており、投資家は木曜終値から12.6%高い価格で1,940万株を取得できる権利を持ち、償還期限は2027年となっている。
この報道を受けて、MiniMaxの株価は同日9.8%下落した。同社は今年初めに香港市場へ上場しており、IPOで約6億1,900万ドルを調達している。
ビジネスモデルとCEOの異例の宣言
収益面では、ホスティングされたモデルへのアクセスを提供するクラウドプラットフォームと、一般ユーザー向けの有料マルチメディア生成アプリが収益源となっている。
また、The Informationの報道によると、CEOYan Junjie(閻俊傑)氏はAGI(汎用人工知能)を実現するまで給与を受け取らないと宣言。さらに保有株式の5%を拠出し、従業員インセンティブとオープンソースプロジェクトの資金に充てることを約束したという。
中国発のオープンソースAIとしてはDeepSeekが注目を集めたが、MiniMaxも技術・資金両面で存在感を高めている。今回の大型調達がどのような研究成果につながるか、引き続き動向が注目される。
詳細はOpen-source AI model developer MiniMax raises $2B in fundingを参照していただきたい。