7月11日、PYMNTSが「AI Chipmaker SK hynix Secures $26.5 Billion to Boost Capacity」と題した記事を公開した。韓国の半導体メーカーSK hynixがNasdaqへの上場で265億ドル(約3.9兆円)を調達し、外国企業による米国上場として史上最大規模を達成した。株価は過去1年で600%超の上昇、時価総額は1兆ドル超——この急騰の背景にあるのが、AI向け特殊メモリ「HBM」市場での圧倒的な支配力だ。
外国企業最大の米国上場、265億ドルを調達
SK hynixは2026年7月10日(金)、Nasdaqへの上場を果たし、265億ドル(約3.9兆円)を調達した。Financial Timesの報道によれば、これは外国企業による米国上場としては史上最大の規模となる。
同社の業績も急成長している。2026年第1四半期の売上高は52.6兆韓国ウォン(約345億ドル)と、前年同期比でほぼ3倍に達した。成長の主要因はAI向けチップへの需要だ。韓国の主要株式市場Kospi(コスピ)における株価は過去1年で600%超の上昇を見せており、時価総額は1兆ドルを超えた。
HBMという「希少品」
BloombergはSK hynixについて、AIコンピューティングに不可欠な**HBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)**の供給において「支配的」な地位を持つと評している。
HBMはNVIDIAのGPUなどAIアクセラレータに積層実装される特殊なDRAMで、通常のメモリと比べて帯域幅が桁違いに広い。大規模言語モデル(LLM)の学習・推論においてボトルネックになりやすいメモリ帯域を解消する部品として、現在AI開発の根幹を支えている。
Reutersはこの状況を「HBMは希少品と化している」と表現している。AIへの需要がチップ価格を押し上げるとともに、製造企業への投資家の関心も高めており、半導体株は一時的な調整局面を経ながらも依然として強気の見方が続いているという。
調達した265億ドルはこのHBM生産能力のさらなる増強に充てられる。
Big Techとの関係と市場背景
SK hynixのCEO、Kwak Noh-Jung氏はNasdaqの開場セレモニーで「HBMはAIの中心にある」「SK hynixはAIがあるところに必ずいる」と述べた。同社はGoogleやAmazon、MicrosoftといったBig Tech顧客に対して安定した供給能力を持つと強調し、今回の上場が「Core AI Partner」としての地位を確固たるものにすると位置付けている。
背景として、Big TechによるAIインフラへの投資規模も見ておく必要がある。元記事が引用する調査予測によれば、2029年までのAIインフラ支出は2.8兆ドルを超えるとされている。GoogleやAmazon、Microsoftはすでに容量制約の解消に向けて数十億ドル規模の投資を行っており、HBMの安定調達はその優先課題の一つになっている。
半導体インフラ競争の最前線
今回の上場は単なる資金調達にとどまらない。SK hynixは「グローバルなAI産業と資本市場の中心に入った」とプレスリリースで表現しており、米国の機関投資家や顧客企業との距離を縮める戦略的な意味合いも持つ。
HBM市場ではSamsungやMicronも追随を強めているが、現時点ではSK hynixがNVIDIA向けの主要サプライヤーとして先行している。今回調達した265億ドルはその技術的・生産的優位をさらに引き離すための原資となる。AIモデルの大規模化が続く限り、HBMの需要曲線は右肩上がりを維持する公算が高く、「HBMを押さえたプレイヤーがAIインフラ競争の鍵を握る」という構造は当面変わらないだろう。半導体サプライチェーンの上流に位置するメモリメーカーが、AI産業全体の命運を左右する存在へと急速に浮上しつつある現状を、今回の上場は象徴している。
詳細はAI Chipmaker SK hynix Secures $26.5 Billion to Boost Capacityを参照していただきたい。