7月10日、Latent Spaceが「[AINews] OpenAI launches GPT 5.6 Sol/Terra/Luna, Codex becomes ChatGPT superapp」と題した記事を公開した。OpenAIが発表した3モデル構成の新ファミリー「GPT-5.6」と、ChatGPTのスーパーアプリ化戦略について詳しく紹介されている。
GPT-5.6は「Sol/Terra/Luna」の3サイズ構成
OpenAIはGPT-5.6 Sol、Terra、Lunaの3モデルを、ChatGPT・Codex・APIで同時展開した。命名は太陽・地球・月の大きさに対応しており、Claudeシリーズの文学的な命名(Sonnet、Opusなど)に対するOpenAI流の回答とも言える。
APIの価格体系は以下の通りだ:
| モデル | 入力(/1Mトークン) | 出力(/1Mトークン) |
|---|---|---|
| Sol | $5 | $30 |
| Terra | $2.5 | $15 |
| Luna | $1 | $6 |
初めてキャッシュライト価格が導入され、キャッシュリード割引は90%オフが継続される。
性能面では、OpenAIの公式発表によれば「TerraはFable 5をわずかに上回り、LunaはOpus 4.8を超える。いずれも約3分の1の時間、半分の出力トークン数、約4分の1のコストで達成する」としている。なお「Fable 5」「Opus 4.8」はLatent Space記事内でのAnthropicモデルの呼称であり、一般にはClaude 4系列の上位モデルに相当するとみられる(※Anthropicの公式ネーミングとの厳密な対応は未確認)。
独立した評価機関Artificial Analysisによると、Sol(max)のIntelligence Indexスコアは59で、Fable 5(max)の1ポイント下だが、コストは約3分の1。Coding Agent IndexではSolが80でトップとなり、Fable 5とOpus 4.8を上回った。
最も物議を醸した主張:Solが Lunaを自律的にポストトレーニングした
今回のリリースで最も議論を呼んだのが、「GPT-5.6 SolがGPT-5.6 Lunaを自律的にポストトレーニングした」という主張だ。
ここで言う「ポストトレーニング」とは、ベースとなる事前学習済みモデルに対して、指示追従性や安全性・特定タスク性能を高めるために行う追加の学習フェーズ(RLHF・DPO・SFTなど)を指す。上位モデルがこのプロセスを自律的に担ったとすれば、AIによるAI改善ループの実例として注目に値する。
Greg Brockmanは自身のXポストでこの含意はエンジニアリングワークフローの加速という文脈で見落とされやすいと述べ、単なるマーケティングではないと強調した。一方で、技術的な精査はすぐに始まった。
「おそらく実際に起きているのは、LLM-as-a-judgeグレーダーの実装や報酬シェーピングロジック、既存のOpenAI RLインフラ上での小さなトレーニング設定の記述であって、自律的なエンドツーエンドの研究やトレーニングシステムではない」
— Xユーザー @scaling01
「LLM-as-a-judge」とは、モデルの出力品質をスコアリングする評価者役にもLLMを用いる手法で、強化学習における報酬モデルの代替として広く使われている。つまり @scaling01 の指摘は、「Solが行ったのはトレーニング設定の記述や評価ロジックの実装であり、エンドツーエンドの自律研究ではない可能性が高い」というものだ。
別のユーザー @nrehiew_ は「Solが高レベルのアイデアからconfigの編集・実験の起動までできる、という意味であり、Lunaのエンドツーエンドのポストトレーニングを完全に自律で行ったわけではない」と解釈している。
「もし文字通りの意味なら、自動化研究のタイムラインに関する大きなアップデートになる」(@tenobrus)という声もある一方、現時点では誇張を割り引いて読む必要がある主張だ。OpenAIが技術的な詳細を公開していない以上、この点の検証は今後の続報を待つことになる。
新effort level「ultra」と並列エージェント
新たに追加されたultra effort levelは、「デフォルトで4エージェントを並列に調整し、高いトークン消費と引き換えに、要求の高いタスクで強い結果と速い完了時間を実現する」と説明されている。
「effort level」とはResponses APIにおける推論コスト・精度のトレードオフを制御するパラメータで、lightから始まり段階的に計算量が増える。今回の追加で順序は light → medium → high → xhigh → max → ultra となり、モデル3種類×複数のeffort levelという大きな設定マトリクスが生まれた(@rasbt が整理している)。
Artificial Analysisによると、Sol maxは1タスクあたり約15kの出力トークンを使用しており、GPT-5.5の16kより少ない。OpenRouterの初期テストでも、5.6モデル全体でトークン効率が改善しコストと完了時間が下がったと報告されている。
注目ベンチマーク結果
- Agents' Last Exam:Solが53.6でClaude Fable 5 adaptiveに13.1ポイント差をつけてトップ
- ARC-AGI-2:92.5%でSOTA。3ヶ月前のGPT-5.5 Proと比べてコストは1桁違い(@GregKamradt)
- ARC-AGI-3:Solが7.8%を記録し、フロンティアモデルとして初めてARC-AGI-3のゲームをクリア(@arcprize)
- CyberBench・SWE-bench・Terminal-Bench 2.1・Legal Research Bench:Solが#1(@ValsAI)。なおCyberBenchではClaude Fable 5の拒否率がほぼ**100%**だったとも報告されている
一方、ParseBenchではテキストと表の処理は良好だが、チャートとレイアウトは依然として弱いという評価が出ており(@llama_index)、GPT-5.5からの改善は限定的とされる。Artificial Analysisはまた、GPT-5.5 maxより幻覚率が上昇している点も指摘している。
ここで編集部として強調したいのは、ベンチマーク結果の「読み方」だ。Sol が複数のエージェント系・コーディング系タスクでトップを取る一方、総合Intelligence IndexではFable 5が依然1ポイント上に位置し、幻覚率は悪化している。「最強モデル」という単純な物語にはなっておらず、用途別に使い分けが必要な局面が続いている。
ChatGPT Work と Codex スーパーアプリ化
モデルと同時に、ChatGPT Work(CodexとChatGPTを統合したデスクトップアプリ)が発表された。主な追加機能は以下の通りだ:
- Programmatic Tool Calling(Responses API)
- Multi-agent beta
- Chromeエクステンション、リニューアルされたアプリ内ブラウザ、認証済みサイト、永続的なマルチタブセッション、ファイルダウンロード
- Sitesベータ:GPTが作成したアプリのホスティング・ストレージ・認証機能(有料ユーザー向け)
Sam Altmanは「明らかに我々がこれまで作った中で最高のモデルだ」「5.6 SolはDollars-per-task(タスク単価)で大きな前進だ」と述べている。
Codexがチャット・コーディング・アプリ実行を一体化した「スーパーアプリ」として再定義されつつある動きは、モデル単体の性能競争から「プラットフォームとしての定着」へとOpenAIの戦略軸がシフトしていることを示唆している。※編集部の考察
詳細は[AINews] OpenAI launches GPT 5.6 Sol/Terra/Luna, Codex becomes ChatGPT superappを参照していただきたい。