7月10日、Ars Technicaが「OpenAI may have made a fatal misstep in copyright fight with news orgs」と題した記事を公開した。OpenAIがニューヨーク・タイムズ(NYT)との著作権訴訟において証拠の隠蔽・削除を行ったとして、原告側が裁判所に制裁を申し立てている問題を詳報している。
OpenAIが「検索できない」と主張していたデータが実は存在していた
今回の訴訟で最も問題視されているのは、OpenAIが訓練データのログを「検索できない」と主張し続けながら、実際にはそのデータが存在していたとされる点だ。
NYTの主張によれば、OpenAIはこれまで約2年間にわたって、裁判所およびニュース系原告側に対し、訓練検査データのログは提出不可能であると主張してきた。ところが実際には、当該データセットが過去の証拠開示(production)の中にすでに含まれていたという。
NYTはこの点について、「OpenAIが意図せずそのデータセットを提出し、訓練検査データの中に埋もれていて自社でも気づかなかったか、あるいはOpenAIは以前の提出物の中にデータセットを埋めていたことを知りながら、約2年間その事実を裁判所と原告側に隠し続けた——その間もユーザープライバシーを侵害するとしてログの提出に強く抵抗していた」と指摘している。
数十億件のログを削除・圧縮、サンプルの一部も無断削除か
証拠隠蔽の疑いはこれだけにとどまらない。NYTを含むニュース系原告は、OpenAIが数十億件(billions)のログを削除または圧縮したと主張している。このログは、裁判所が発した包括的な保全命令によって保存が義務付けられていたものだ。
OpenAIの証人であるMonaco氏は、OpenAIが保全命令への準拠を検討したものの、「難しいと判断して何も対応しなかった」と証言したという。NYTはこれを根拠に、「OpenAIの行為が故意であることは疑いようがない」と主張している。
さらに、裁判所が認めた限定的なサンプル(具体的な件数・削除量は黒塗りで非公開)についても、OpenAIが無断で一部を削除したと原告側は主張している。なお元記事タイトルには「billions of logs」とある一方、本文中では裁判所が承認したサンプルの規模について別途の数字が言及されているが、黒塗り部分が多く詳細は確認できない。
原告が求める「厳しい制裁」の中身
ニュース系原告は、今回の申し立てについて「軽率に制裁を求めているわけではない」としながらも、OpenAIの違法行為の「深刻さ」が制裁を正当化すると訴えている。具体的に原告が求めている制裁は以下の通りだ。
- 裁判所が承認したサンプルデータについて、OpenAIによる使用の禁止
- 隠蔽された出力ログにはニュース系原告の著作物の「実質的な」そのままの再現(regurgitation)が含まれていたと裁判所が認定すること、およびOpenAIがこれに異議を唱えることの禁止
- 数十億件のログを削除した事実を陪審員に示す陪審説示
原告は「軽い制裁では効果がない」と断言しており、OpenAIの違法行為が「意図的かつ故意である」ことから「厳しい制裁こそが適切だ」と主張している。
著作権訴訟の行方を左右する「フェアユース」の壁
この訴訟の核心にあるのは、AIが著作権で保護されたコンテンツを訓練データとして利用することがフェアユース(公正利用)に当たるか否かという問いだ。フェアユースの成否は、ニュース系原告が「市場への損害(market harm)」を立証できるかどうかに大きく左右される。
もし裁判所がOpenAIの行為を「egregious(著しく悪質)」と認定し、サンプルデータの使用が禁じられれば、「著作権侵害は実質的に発生していない」というOpenAI側の防御論はかなり困難になる。原告側の「AIによる著作物の市場代替」という主張を、OpenAI自身がログを隠すことで裏書きする形になりかねないからだ。
今後、裁判所がOpenAIの一連の行為をどう評価するかが焦点となる。AI企業と報道機関との著作権をめぐる争いは、業界全体のビジネスモデルに影響を与えうる局面に差し掛かっている。現時点では原告側の申し立て段階であり、裁判所の判断はこれからだ。
詳細はOpenAI may have made a fatal misstep in copyright fight with news orgsを参照していただきたい。