7月9日、CleanTechnicaが「US Accounted for Nearly 50% of World's CO2 Emissions Growth in 2025 — Thanks, AI Data Center Explosion」と題した記事を公開した。この記事では、2025年に米国が世界のCO2排出量増加の約半分を占めた事実と、その主因がAIデータセンターの急激な電力需要拡大にあることについて詳しく紹介されている。
米国だけで世界のCO2増加分の47%を占めた
Energy Instituteが公表した第75版「世界エネルギー統計レビュー」によると、2025年の米国のCO2排出量は前年比3.2%増となった。世界平均の増加率が**1.4%**であることを考えると、突出した数値だ。
この47%という数字は米国単体に関するものだ。元記事が引用するOilPrice.comのRobert Rapierの報告では「北米主導の排出増」として言及されており、カナダ・メキシコを含む北米全体の文脈で語られることもあるが、CleanTechnicaの元記事が強調するのはあくまで米国単独でのシェアである点に注意が必要だ。
米国の排出量は近年ほぼ一貫して減少傾向にあっただけに、この反転は深刻な変化を示している。
主犯:AIデータセンターと石炭の復活
記事が指摘する要因は大きく2つだ。
第一に、AIデータセンターによる電力需要の急増。 米国は世界のデータセンター電力消費量の**40%**を占める。AI関連の計算需要が急拡大する中、その電力消費量は「想像を絶する規模」で増加している。
第二に、石炭火力発電の13%増。 米国全体の電力需要は3%増にとどまったが、その需要増を賄うために老朽化した石炭発電所が稼働し続けた。トランプ政権が公益事業者に対して旧式の石炭発電所の維持を求め、大規模な風力・太陽光発電プロジェクトの許認可を阻んでいることも、状況を悪化させている。
太陽光発電は2025年に28%増と大きく伸びた。しかし伸び率と絶対量は別の話だ。世界全体で見ても、再生可能エネルギーは約9.7%増と高い伸び率を示したが、絶対量の増加分は約3.2エクサジュール(EJ)にとどまった。エクサジュール(EJ)とは10¹⁸ジュールに相当するエネルギー単位で、国家・地球規模のエネルギー統計で用いられる。一方、世界の総エネルギー供給量は592.2EJから600.3EJへと8.1EJ増加しており、再エネの増加がエネルギー需要全体の伸びを吸収できていない構図が浮かび上がる。
「効率化」ではなく「消費拡大」が進んでいる
記事はこの問題の本質を次のように整理している。再生可能エネルギーの普及と並行して、エネルギー効率の大幅な改善が不可欠だという議論は長年なされてきた。しかし実際に起きているのは、AIブームとそれを支える巨大データセンターの建設ラッシュによる、エネルギー消費量の急増だ。
この構図を理解する上で重要なのが「リバウンド効果」と呼ばれる現象だ。技術が効率化されると、単位あたりのコストが下がり、結果として利用量が増加し、総消費量がむしろ拡大するという逆説である。AIインフラはまさにこの構図にはまっている。モデルの推論・学習コストが改善されるほど、より大規模なモデルの開発・運用が経済合理的になり、需要が爆発的に増加する。GoogleやMicrosoftなど主要クラウドプロバイダーが相次いでデータセンターへの大規模投資を表明していることも、この傾向を裏付けている。
エンジニアの立場から見れば、クラウドインフラやAIモデルの電力効率(PUE:Power Usage Effectiveness=データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った指標。1.0に近いほど効率的)の改善が急務であることを、このデータは改めて示している。AIの推論・学習コストを下げる取り組みが、単なるコスト削減だけでなく、排出量削減に直結する問題として捉え直される必要がある。
詳細はUS Accounted for Nearly 50% of World's CO2 Emissions Growth in 2025 — Thanks, AI Data Center Explosionを参照していただきたい。

