7月10日、TNW(The Next Web)が「Big Tech's AI debt hits $350bn and heads to Europe」と題した記事を公開した。Alphabet、Amazon、Meta、Microsoft、Oracleの5社が積み上げたAI投資向け債務は合計約3500億ドルに達し、米国の債券市場で資金吸収の限界感が出てきたことで、各社は欧州市場での社債発行に軸足を移しつつある。その構造が欧州の企業や投資家にも波及し始めていると、記事は指摘する。
5年で2倍に膨らんだAI債務
Alphabet、Amazon、Meta、Microsoft、Oracleの5社は、過去5年でその債務を合計約3500億ドルにまで倍増させた。これはBloombergが集計したデータによるものだ。
現時点では利払い負担は相対的に軽い。5社が昨年支払った利息は合計約100億ドルで、2019年比では2倍以上だが、Googleの直近四半期のキャッシュフロー約640億ドルと比べれば小さい。
ただし、ひずみは周辺から現れ始めている。Amazonの3月期フリーキャッシュフローはマイナスに転落。Oracleの有利子負債は売上高の約2.5倍に達し、格付け機関S&Pは7月10日、AI支出を理由にOracleの格付けをジャンク級の一段上に引き下げた。
債券市場が飽和しつつある
投資家はこれまで旺盛に債券を吸収してきたが、その勢いに陰りが出始めている。Amazonが今週実施した250億ドル規模の起債は、Meta以来最もクールな反応だったとされる。トレーダーはAmazon、Nvidia、Oracleの既存債を売って新発債の購入資金を捻出しており、需要の問題というよりキャパシティの問題だ。
Morgan StanleyのVishal Khanduja氏はBloomberg TVで「現在の市場はクレジットリスクを過小評価しすぎている」と述べた。
なぜ欧州が舞台になるのか
ここが核心だ。米国内でドル建て資金調達の余地が縮小したBig Techは、欧州の社債市場に照準を向けた。ハイパースケーラー(超大規模クラウド事業者。AWS、Azure、Google Cloudなど、世界規模でデータセンターを運営するクラウド企業群を指す)は2024年にドル以外の通貨建て債券を発行していなかったが、2026年にはそれが資金調達の主軸になっている。
Morgan Stanleyの予測によれば、ハイパースケーラーによるユーロ建て社債の発行額は今年だけで500億ユーロに達する見込みだ。元記事はこの数字をMorgan Stanleyの予測として紹介しており、同行のレポートを参照している。これが実現すれば、米国Big Techはフランスを超え、ユーロ圏最大の社債発行主体となる。
Alphabetの一例が象徴的だ。同社はこの1年で円、カナダドル、スイスフラン、ポンド建てで起債し、100年債まで発行している。
影響は直接的だ。欧州の企業がAIとまったく無関係であっても、Big Techが先に資金を吸い上げることで信用スプレッドが押し広げられ、資金調達コストが上昇するという構造になっている。元記事はミュンヘンやパリのスタートアップを例として挙げており、地域を問わず欧州の資本市場参加者全般に影響が及ぶ可能性を示唆している。
Intelの先例が示す警告
強気な声は多い。AmazonのAndy Jassy CEOは「収益化できると強く確信している」と言い、Mark Zuckerberg氏は「コンピューティング需要は供給を上回り続けている」と主張する。DA DavidsonのGil Luria氏も「もし一桁違う規模の借り入れなら問題だが、現状は管理可能に見える」と評価する。
一方、Fitchのアナリスト、Jason Pompeii氏は手厳しい。「現時点では非常に楽観的な需要の誇張に見える」と述べた。
そして一つの反面教師がある。Intelだ。Intelは長年かけて債務を積み上げながらAIチップのブームに乗り遅れ、米政府の支援とNvidiaからの出資なしには生き残れない状況に追い込まれた。
賭けの本質
AIインフラの建設は、企業史上最大規模の債務による賭けの一つになりつつある。ある調査会社はAI関連の債務市場が2029年までに7兆ドルに達すると試算している。
株価に目を向けると、今年プラス圏で推移しているのはAlphabetのみで、MicrosoftとOracleはともに20%超下落している。かつてこれらの企業を象徴していた自社株買いもほぼ停止した。
問題の核心は「AIが機能するかどうか」ではなく、「収益が債務より先に来るかどうか」だ。欧州市場はその清算の舞台になりつつある、と元記事は結ぶ。
詳細はBig Tech's AI debt hits $350bn and heads to Europeを参照していただきたい。