7月10日、Maxwell Zeffが「Anthropic Wants You to Pay Up for Claude Fable 5」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicがClaude Fable 5を月額サブスクリプションの範囲外に置き、従量課金制を導入するという業界初の動きについて詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「サブスク料金を払っても、追加課金」という新モデル
7月12日 23:59(PT)以降、Anthropicの月額$20・$100・$200プランの加入者がClaude Fable 5(同社の最上位モデル「Mythos 5」のコンシューマー向け版)を利用するには、サブスク料金に加えて従量課金が発生する。フロンティアAIラボがコンシューマー向けモデルを従量課金の壁の後ろに置いたのは、これが初めてと見られている。
料金体系は開発者向けAPIと同一だ。
- 入力トークン:100万トークンあたり$10
- 出力トークン:100万トークンあたり$50
具体例を挙げると、月額$20プランのユーザーがFable 5に100万トークンを送信し、モデルが100万トークンで回答した場合、追加料金は$60となり、月の合計は$80になる。Amazonプライムが約5ヶ月分使える金額だ。
「100万トークンなんて現実的に達するのか」という疑問は自然だが、100万トークンは約75万語——指輪物語シリーズ全巻より長い分量に相当する。ただし、Fable 5のような最新モデルは回答生成の過程で隠れた思考連鎖(chain-of-thought)プロセスを走らせており、これがトークン消費を大幅に押し上げる。APIヘビーユーザーが月に数千ドルの請求を受けるケースは珍しくない。
なぜ今、このタイミングか
従量課金への移行は突然の出来事ではない。伏線はいくつもあった。
昨年、AIコーディングツールのCursorが「無制限AI」を謳うサブスクを廃止し、従量課金モデルへ切り替えた。Anthropicも最近、大企業向けに従量課金制を導入済みだ。IPO(新規株式公開)を視野に入れた財務整理という観点からも、この方向性は自然な流れと言える。
OpenAIでChatGPTの責任者を務めていたNick Turleyは、ポッドキャストでこう語っている。
「AIエージェントの時代において、無制限プランを提供することは、電力の無制限プランを提供するようなものかもしれない。それは理屈に合わない」
Claude CodeやCodexのようなAIエージェントは、従来のチャットボットと比べて計算リソースを桁違いに消費する。この構造が、フラットな月額課金を成立させにくくしている。
Anthropicの本音:容量不足と「Apple戦略」
Anthropicはサブスク内でのFable 5提供を完全に諦めたわけではない。同社広報のReem Ateyehは、WIREDの取材に対し「十分な処理能力が確保できた時点で、できる限り早くサブスクへの組み込みを目指す」と述べた。同社はSpaceX・Amazon・Googleとデータセンター容量に関する数十億ドル規模の契約を結んでいるが、それでも需要に追いついていない状況だ。
一方で、この価格変更はコンシューマー市場におけるAnthropicの地位を試す実験でもある。Claude(クロード)の月間ユニーク訪問者数は2025年5月時点で2億4500万人に達し、2月比で倍以上に増加した(市場調査会社Sensor Tower調べ)。ただし、ChatGPTの11億1000万人、Google Geminiの6億6200万人と比べると、まだ大きな差がある。
記事中、Anthropic関係者(匿名)はこう語っている。
「今起きている興味深いダイナミクスは、誰も『このタスクに最高の知能が必要か?』という問いを立てようとしないことだ。人々はむしろ『自分は中レベルの知能で十分な人間か、それとも最高が必要な人間か?』と自問している」
AnthropicはOpenAIやGoogleが採用しつつある広告モデルを明確に否定している。その分、収益確保の手段は価格引き上げしかないというのが現実だ。
サブスク黄金時代の終焉
OpenAIやGoogleは無料・低価格帯での広告導入を検討しているとされる一方、Anthropicは広告に対して否定的な姿勢を取り続けている。今回の動きは、補助金によって支えられてきたコンシューマー向けAIサブスクの「お得な時代」が終わりを迎えつつあることを示す一つのシグナルだ。
なお、Fable 5は6月7日にAnthropicが初公開した時点では加入者に追加料金なしで提供されており、その後米政府が一時外国人への使用を禁止、7月1日に解禁するという経緯もあって注目度が高まり続けている。
詳細はAnthropic Wants You to Pay Up for Claude Fable 5を参照していただきたい。