プログラミングと数学への興味から、新卒で開発支援会社(SES)に入社。AI画像認識の検証からロボット制御まで幅広く経験し、2024年に独立した。以後はROS2を軸に、自律走行・ロボティクスのフリーランスとして、工場の搬送ロボットから建設機械、宇宙関連まで、多様な案件に携わってきた、Mさん(33)。
そんなMさんが2026年、フリーランスから正社員へと戻る決断をした。選んだのは、AI系の開発ベンチャー。きっかけは、収入の不安定さと、「新しい分野に挑みたい」という思いだった。なぜいま正社員を選んだのか。フリーランスの自由と限界、エージェントとの二人三脚、そして同じ道を歩むエンジニアへの本音を伺った。
AIに惹かれて、新卒で開発支援会社(SES)へ

Q. 新卒では、開発支援会社に入社されています。どのような理由で?
もともとプログラミングは、大学に入る前から少し勉強しておりまして、数学も得意でしたので、それを活かせるところがいいなと思っていました。当時はディープラーニングがとても流行っていたので、AIをやっている会社を、自分でいろいろ調べていたんです。
正直に申し上げると、ホームページに少し惑わされたところもありまして(笑)。入ってみますと、自社でAI開発をしているような見せ方だったのですが、実態は少し違っていて。AI関連のエンジニアを他社に出している、いわゆるSESの会社だったんです。当時は業界のこともよく分かっていなかったので、そういうところに入れば、AIの開発ができるのかな、と思って応募しました。
AIの「学習させるだけ」から、ロボットの「手触り」へ
Q. 開発支援会社での4年間で、印象に残っている仕事は?
最初の半年は、ちょうどコロナの直後で仕事がなかなかなく、社内研修の講師をしたりしていました。その後、AI分野では、大手メーカーのAI研究の現場で画像認識の検証などを担当しました。
ただ、AIの仕事は、海外の大学やメガベンチャーが作ったモデルを学習させるだけ、という感じだったんです。データを綺麗に整えて、設定して、学習させる。意外と、自分で作るという面白みは希薄でした。
逆に面白かったのは、途中から入ったロボット分野ですね。経験はまったくありませんでしたが、物がちゃんとあって、プログラミングした通りに動く。とても手触り感のある世界で、自分で物を動かす面白さがありました。半導体の描画装置の制御や、搬送ロボットへのシステム導入など、業界をまたいでいろいろ経験することができました。
給与は上がらず、還元率は下がる。フリーランスへ
Q. 4年で独立されたのは、どのような背景があったんですか?
一番は、入社時からほとんど給与が上がらなかったことです。手取りで申し上げると、最初が18〜19万円くらいで、4年経っても20〜21万円ほど。それくらいしか上がっていなかったんです。そのうえで、会社から「他社に出して入ってくるお金の、社員に還元する割合を下げます」というお話があって。もともと上がっていないことに不満があったところに、さらに下がると言われてしまいまして。
そのとき、社員の方とお話しする中で、「仕事はそのままで、契約形態をフリーランスに切り替えれば、自分で払うものは増えますが、手元に入るお金自体は増えますよ」と教えていただいたんです。それで「ぜひそうしたいです」と。仕事は継続したまま、正社員からフリーランスに切り替えました。その案件が一通り終わった段階で、開発支援会社との契約も終わった、という流れですね。
Q. フリーランスになることへの不安は?
それは、あまりありませんでした。周りに、高校や大学時代の知り合いで、同じくIT系で独立している人がたまたま何人かいまして。話も聞いていましたので、それほど不安は感じませんでした。
収入は増えた。でも、半年間ゼロになった
Q. フリーランスになってみて、良かった点と課題は?
メリットは、まずお金です。仕事内容は変わっていないのに、フリーランスになっただけで、自分で払う分を差し引いても、収入が相当増えました。そこは明らかに良かったですね。
課題は、案件の安定性でした。開発支援会社との契約が終わった後は、もともと入っていた職場から案件をいただいて続けていたのですが、エージェントを挟んでいなかったんです。それで、だんだん仕事が不安定になっていって。実は昨年、前半に200万円ほどの案件をこなした後、後半は半年ほど、収入がまったくない時期がありまして。そこは想定していなかったので、金銭的にかなり困りました。貯金がみるみる減っていって、「これはまずいな」と。
Q. それで、エージェントを使い始められた。
そうです。まさに、それがきっかけでした。自分で営業活動をしてこなかったので、営業の仕方もよく分からなくて。エージェントなしでは、自分で案件を獲得することが全然できていなかったんです。ですから、自分にとっては、エージェントを使う一択だったなと思っています。
Q. いくつかのサービスの中で、ITプロパートナーズに絞られたと伺いました。
フリーランスで参画したときの対応が、他と比べて圧倒的に早かったんです。あるサイトから連絡したときに、本当にすぐ返信が来て、すぐに仕事をご紹介いただいて。他社ですと、登録してから連絡が来るまでに1日くらいかかり、案件のご紹介が来るのも次の週だったりして。そのスピードの違いが、一番印象に残っています。ですから、正社員を探すときも、他社は併用せず、ITプロパートナーズ1本で進めました。
「新しい分野に挑むなら、正社員だった」
Q. もともと資金繰りのためにフリーランスとして参画され、その後で正社員を考え始められたと。
はい。エージェントで仕事を探すなら、ロボット分野以外の仕事も受けたいな、と相談したんです。AIに関心があってキャリアを始めましたが、もともとWebやモバイルなど、他の分野にも関心があり、スキルの幅を広げたい気持ちは以前からありました。ただ、既存顧客から継続的に案件を請けていたため、フリーランスではロボット分野しか仕事が入ってこない状況になっていたんです。
そうしましたらエージェントの方から、「フリーランスは10年以上その分野で経験を積まれた方がたくさんいるため、未経験の方が案件を獲得するのは難しい」というお話をいただきました。一方で、「正社員であれば、未経験でも可能性がある」と教えていただきました。それなら、と。生活面を考慮し、まずは一旦フリーランスで入り、しばらく経ってから正社員を探そうと考えました。
Q. 入社時期の設計も、相談しながら進められたんですね。
そうですね。フリーランスに入って3ヶ月で抜けるのもどうかと思いましたので、半年以上はやるとして、8月末でフリーランスを終え、9月頃に入社を目指す、と。それで「9月入社を考えるなら、5月頃に活動を再開するのがちょうどいい」とご助言をいただいて。その通り、5月の中旬から本格的に動き始めました。逆算して進められたのは、とても助かりましたね。
「LLMをやりたい」という希望が、そのまま叶った

Q. 転職活動の軸は、どのようなものでしたか?
分野で申し上げると、最初はWebやモバイルが多いのかなと思っていました。ですが相談する中で、「LLM(大規模言語モデル)関連の求人も出てきていますよ」と。自分は大学院を出ているわけでもないので、その辺りは難しいのかなと何となく思っていたのですが、「可能性はありますよ」と言っていただいて。それならぜひ、と。LLMの方が興味がありましたので、5月からは、そちらをメインに探しました。
正直、「LLMをやりたい」というのは、少しわがままな希望かなとも思っていたんです。もっと広げて、いろいろ受ける必要があるのかな、と。ですが実際には、希望に沿ったLLM関連の求人を、しっかり揃えてご提案いただいて。そこは本当に、ありがたかったですね。
Q. フリーランスの面談と、正社員の選考で、違いは感じましたか?
試験があったり、レポートを求められたり、という点は違うなと思いました。あと、フリーランスのときは、意外と技術的な話があまりなかったのですが、正社員ですと、技術的な質問もたくさんされて。そこは違いましたね。
決め手は「本当に、その業務に当たれるか」
Q. 最終的に、AI系の開発ベンチャーに決められた理由は?
一番は、「入った後に、本当にその業務に当たれるか」でした。LLM関連をうたっている企業でも、会社の様子的に、自分が入ったときに、本当にその業務に入れるのかが不透明なことが多くて。オープンなポジションで入りますと、結局、自分がその業務に当たれるのか分かりません。
その点、この会社は、まずAIの部署がきちんと分かれていて、AIの部署に入れば、そちらに入れる。しかも、実際にLLM関連の業務を、かなりたくさんこなしている実績がありました。その2つで、自分が入ったときに、実際にその業務に当たれる可能性が高いだろうな、と。そこが魅力的でした。
Q. 逆に、気になった点はありましたか?
最初は、ホームページだけでは、本当に業務があるのかが分かりづらかったんです。以前、入社してみたら、HPで見ていた体制と実態が違った、という経験がありましたので、今回は少なくとも、それは避けたくて。最初は少し心配でした。ですが、選考の中でお話を伺っていくうちに、実際にかなりの数をこなしていると分かり、その不安は解消されました。
転職活動を振り返って ── 70点の理由
Q. ご自身の転職活動を、100点満点で言うと?
自分の活動としては、70点くらいかな、と思っています。面接に慣れていなかったのもあって、うまく答えられなかった面談がいくつかありまして。「もっとちゃんと答えられたな」という後悔が残るものがあったので、そこは点数が下がりました。ただ、最終的には、かなり自分の希望に近いところに決められましたので、結果としては、とても良かったなと。
一方で、エージェント(ITプロパートナーズ)の対応は、ほとんど完璧だったなと思っています。レスポンスも早いですし、「LLMをやりたい」という、少しわがままにも思える希望に対して、実際に希望に沿ったものを全部出してくださった。そこは本当に、ありがたかったです。
Q. 当時のご自身に、アドバイスするなら?
正直に申し上げると、面接を受ける前に、もう少し準備しておけばよかったな、と。十分に想定できたはずの質問で、かなり詰まってしまいましたので。例えば、「これまでの経歴の中で、どういう状況で、自分が何をして、結果どうなったか」をいくつか話してほしい、というのは、とてもよくある質問なんです。それなのに、「テストが揃っていなかったので、自分が入って揃えました」というような答え方をしてしまって。必要以上に、スキルの低いエンジニアのように見せてしまったかもしれない。もっと自分の実力をアピールできる事例を出せたはずでしたので、絶対に準備できたな、と思いました。
これからと、フリーランスに向いている人
Q. これからのキャリアプランを教えてください。
総合的に、いろいろできるようになりたい、というのは漠然とあります。そのうえで短中期的には、いまLLMがとても成長していて、将来性をとても感じますので、まずはその分野で実力を伸ばして、スペシャリストになりたいなと思っています。あと3〜4年は正社員で頑張って、その後は、またフリーランスに戻ってもいいかな、とも。技術力が十分についたら、という前提ですね。
Q. 正社員とフリーランス、両方を経験されて、フリーランスに向いているのは、どのような人だと思いますか?
まず、自分でバリバリ営業ができる方。私はそうではなかったのですが、そういう方は、フリーランスに相当向いていると思います。あとは単純に、技術力があれば、フリーランスはそもそもおすすめです。入ってくるお金が、正社員と比べて多いことが多いので。それに、企業に入ると、場合によっては、その会社のプロダクトだけに関わることもありますが、フリーランスなら、本当にいろいろな業種に当たれる。そういう働き方をしたい方には、とてもいいと思います。
最後に ── フリーランスから正社員を考えている人へ
Q. いま、フリーランスから正社員を考えている方へ、メッセージをお願いします。
自分の状況は、ご自身が一番よく分かっていらっしゃると思いますので、その考えに素直に従うのがいいのではないかな、と思います。正社員に戻りたいと思っているなら、それはとてもいいことですし、フリーランスのままが合っていると思うなら、それもとてもいい。
そのうえで、一時的に戻るのは、結構ありだと思っています。私自身、今回決めていただいて、お給料もそんなに下がらないな、と感じましたし。そこはあまり心配しなくても、実力がちゃんとあれば、いい正社員のところも探せると思います。ですから、まずは自分の考えに、素直に。それが一番なのかなと思っています。