7月8日、RuntimeWireが「Figma buys Bud team to pull AI agents closer to the design canvas」と題した記事を公開した。FigmaがYCバックのAIエージェントスタートアップ「Bud」チームを買収し、デザインキャンバスへのAIエージェント統合を加速させていることが報じられている。
FigmaがBudチームを買収——狙いはエージェントの「デザイン統合」
Figmaが、Y Combinator(YC)支援のAIエージェントビルダー「Bud」(旧称:Orchids)のチームを買収した。買収額は非公開。TechCrunchが7月7日に報じており、BudのCEO Kevin Luが自身のX(旧Twitter)への投稿で明らかにした。
Budのサービスは7月18日をもって終了し、ユーザーはそれまでにプロジェクトを移行するよう求められている。BudもOrchidsも独立したプロダクトとして畳まれ、Figmaが引き継ぐのはチームとプロダクト開発で蓄積した知見だ。
Budは2025年のYC Winter Cohort出身、サンフランシスコ拠点の6人チームだ。YCはBudを「コンピュータを持つエージェント」と位置づけており、Webブラウジング、コーディング、リサーチ、スライド・ドキュメント・スプレッドシートの生成、自律的なタスク実行などを備えていた。もともとOrchidsとしてモバイル・Web・Slack向けのアプリ生成プラットフォーム(いわゆるvibe codingツール)として出発し、その後より広範なエージェント機能へとピボットした経緯がある。
なお、TechCrunchはBBCの報道を引用して、Orchids上で生成されたアプリにサイバー攻撃への脆弱性が指摘されていたとも報じている。AIによるコード生成が容易になるほど、セキュリティ責任もツール側に問われるという課題を示す事例だ。
Figmaが「ビルドレイヤー」に食い込む理由と、Budチームが解く課題
Figmaはここ1年で、コラボレーティブデザインツールという本来の立ち位置を超えた動きを続けている。
すでにFigmaはFigma Makeを提供している。これはプロンプトからプロトタイプを生成し、コードを維持しながら視覚的に編集できるツールで、デザインシステム、npmパッケージ、Figmaフレーム、PDFなどをコンテキストとして利用できる。
財務面でもその重要性は数字に表れている。2026年Q1の売上は前年比46%増の3億3,340万ドル。年間契約額10万ドル以上の有料顧客のうち約60%がFigma Makeを週次で利用しており、前四半期の50%超から上昇している(いずれもFigma発表の数字)。Figmaにとって、Makeはデザインツールのデモ機能ではなく、ソフトウェア開発領域への本格的な切り込み口になっている。
コーディング環境との統合も進んでいる。Q1にFigmaは、Claude Code・Codex・Cursor・VS Code・Warpなど複数のツールへの「Code to Canvas」サポートを拡張。これらのツールで生成されたUIをFigmaの編集可能なレイヤーとして取り込めるようになった。またMCP(Model Context Protocol)——Anthropicが策定したAIエージェントと外部ツールを接続する標準仕様——への対応により、AIエージェントがFigmaファイルを直接読み書きし、コンポーネント・変数・トークンを使ってデザインアセットを生成・変更できる。
こうした文脈でBudチームの買収が意味を持つ。プロンプトからプロトタイプを生成する技術そのものは、もはや多くの企業が持っている。Figmaが解かなければならない課題は別のところにある。最初のプロンプトの後でも、生成物がプロダクトチーム・デザイナー・エンジニアにとって読み解ける状態を維持できるか、だ。
Budはブラウジング、外部サービスの利用、コーディングを組み合わせたエージェントの開発に取り組んでいた。このアプローチは、AIが生成したアプリケーションをFigma上で編集・レビュー・ハンドオフできる場所として成立させたいFigmaの方向性と合致している。プロンプトからソフトウェアを生成する市場で既に一度の高速ピボットを経験したチームが、その課題に取り組む。
上場企業としてのFigmaのAI戦略
Figmaは2025年7月にNYSE(ニューヨーク証券取引所)にティッカー「FIG」で上場した。上場企業として、AI機能がリテンションや座席拡大、既存顧客の使用量増加につながることを示す必要がある。
CEOのDylan Fieldは「コードが汎用品になるとき、デザインが競争優位になる」と述べている。FigmaはフルIDEになろうとしているわけではなく、生成コード・プロトタイプ・モーション・アセット・プロダクト判断が集まる「共有サーフェス」としてデザインファイルを位置づけている。
競合側の動きも参考になる。RuntimeWireの5月の報道では、VisaがReplitに出資し、IDE内でのエージェント決済の探索が始まっている。コーディングツール側がデザイン・決済・デプロイ・ワークフロー自動化を取り込もうとする一方、Figmaはデザインファイル・コンポーネント・ブランドシステム・コラボレーションという「プロダクトチームの重心」から同じ領域に攻め込んでいる。
6月のConfig発表では、コードレイヤー、Figma Motion、シェーダー、生成型プラグイン、Notion・Slack・GitHub・Atlassianなどに接続できるFigmaエージェントを発表しており、この方向性は一貫している。人間がエージェントの生成物を検査・編集・管理できる場所を作るという構想に、Budチームが加わった形だ。
詳細はFigma buys Bud team to pull AI agents closer to the design canvasを参照していただきたい。