7月7日、Ars Technicaが「How AI could enable autonomous robot workers in workplaces」と題した記事を公開した。この記事では、AIが汎用ロボットの自律性をどう変えようとしているか、研究者や起業家の視点から深掘りして紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「やる気のあるエンジニアが世界を変える」という自己実現
記事が最初に取り上げるのは、ロボット研究者のHurst氏の発言だ。AIロボティクスに「本気で取り組む有能なエンジニアが大勢参入している」ことが、汎用ロボット実現の自己実現的な予言(self-fulfilling prophecy)になりうる、という見立てである。
その象徴的な人物として紹介されるのが、パデュー大学でコンピュータサイエンスの博士課程に在籍しながら、米陸軍DevCom陸軍研究所でもロボット試験を行うDipam Patel氏だ。
地震の瓦礫を歩くロボット──自律性の本質的な難しさ
Patel氏の研究テーマは、地震災害後の捜索・救助シナリオにおける、未知の障害物だらけの地形をロボットに自律的に踏破させることだ。具体的には、4脚ロボット(いわゆる「ロボット犬」)の背部にロボットアームを搭載し、障害物をつかんで脇に移動させながら前進する「インタラクティブナビゲーション」も実証している。
人間の救助隊員にとっては当然の動作でも、ロボットには複数の困難が重なる。記事が特に強調するのが「壊滅的忘却(catastrophic forgetting)」の問題だ。強化学習でAIモデルを訓練する際、新しいタスクを学習すると以前に習得した能力を上書きしてしまう現象で、複数のスキルを安定して保持しながら長期的なタスクをこなすことが難しい。
「ロボットは外部依存なしに、すべてを自力でこなせなければならない。そこに至って初めて、汎用ロボットへの道が開ける」
— Dipam Patel氏(IEEE学生会員)
もう一つの制約がオンボードコンピューティングだ。外部カメラやクラウドサーバーへの処理オフロードに頼れない現場では、ロボット自体が十分な演算ハードウェアとセンサーを搭載している必要がある。
「人型である必要はない」──形よりも機能
Patel氏はIEEE学生会員としてより広い研究も手がけており、4脚型と人型ロボット双方の全身制御スキーム(whole-body control scheme)の開発に取り組んでいる。Physical IntelligenceのLevine氏と同様、どのロボット形態が実用的かについて現実的な立場をとる。
「みんな『人間に似たロボットが必要だ』と言うけれど、本当にそうじゃない。ただ、仕事をこなせるロボットが必要なだけだ」
— Dipam Patel氏
「人型ロボット」は投資家や一般メディアの注目を集めやすいが、現場の研究者の視点は異なる。形よりもタスク遂行能力が本質、というのが実務家共通の認識だ。
背景:なぜ今、汎用ロボットが語られるのか
ロボティクスへの大規模な資本流入が続く中、研究開発の加速が顕著になっている。AgilityのDigitのように工場・倉庫向けに実用展開が始まったロボットもあり、「AIとロボティクスの融合」は研究室の話題から産業実装の段階に移りつつある。Patel氏のような軍・学術の複合的なフィールドでの研究は、そのギャップを埋める存在として位置づけられる。
詳細はHow AI could enable autonomous robot workers in workplacesを参照していただきたい。