7月8日、The Next Webが「MiniMax plans China's biggest AI model, and will open-source it」と題した記事を公開した。中国のAIスタートアップMiniMaxが2.7兆パラメータの大規模言語モデルを開発中であり、オープンソースとして公開する計画を報じている。
現行モデルの6倍──「M3 Pro」の規模
The Informationの報道によると、MiniMaxが社内で「M3 Pro」と呼んでいる新モデルは、2.7兆パラメータを持つ。同社の現行フラッグシップであるM3の428億パラメータと比較すると、約6倍の規模だ。
この数字の業界的な位置づけも押さえておきたい。現時点で広く知られるオープンウェイトモデルの中では、MetaのLlama 3.1の最大構成が4050億パラメータ、MistralやDeepSeekの主力モデルも多くが数十億〜数百億パラメータ台にとどまる。2.7兆という数値はそれらを大幅に上回る。
また、M3 ProはMixture of Experts(MoE)アーキテクチャを採用している可能性が高いと見られている。MoEは推論時にモデル全体のパラメータを使うのではなく、入力に応じて一部の「専門家(エキスパート)」ネットワークだけを活性化する仕組みで、巨大なパラメータ数を持ちながら計算コストを抑えられる点が特徴だ。DeepSeekやMistralのMixtralもこの方式を採用しており、大規模モデルの実用化において主流のアプローチとなっている。
パラメータ数の多さは直接的な性能保証ではないが、複雑な推論や多段階のタスク処理において有利に働く傾向がある。現在の最前線AIレースが「複雑な推論」に焦点を当てていることを考えると、この規模拡大の方向性は的を射ている。
リリースは2025年第3四半期と報じられていた。元記事の公開日は2025年7月8日であり、本稿執筆時点(2026年7月)では当該期間はすでに経過している。モデルが実際に公開されたかどうかは、元記事および公式チャネルで確認が必要だ。公開される場合はオープンウェイト(重みパラメータを公開する形式)での提供が予定されており、最終的なモデル名は変わる可能性があるとも報じられている。
中国AI市場の競争環境
MiniMaxは香港に上場しているAI企業で、DeepSeek、Zhipu、Moonshot AIと競合する。これらの企業はいずれも「高性能モデルを低コストで」という方向性を競い合っており、多くがオープンウェイトを採用している。
2025年から2026年にかけて、中国発のオープンモデルは世界的に普及が進んだ。開発者たちが「高頻度かつ重要度が低めのタスク」に対して、米国のフロンティアモデルより大幅に安価な中国製オープンモデルを選ぶケースが増えており、エンタープライズ向けの採用も拡大傾向にある。
米国ラボへの圧力
この動きが米国のAIラボにとって無視できない理由がある。OpenAIやAnthropicといった企業は、数十億ドルをかけてフロンティアモデルを訓練し、APIアクセスに高い料金を設定するビジネスモデルで収益を上げている。
高性能なオープンウェイトモデルが無償で出回ると、その前提が崩れる。蒸留(distillation)やアクセスをめぐる摩擦はすでに顕在化しており、中国政府側も海外への高性能モデルの提供制限を検討しているとされる。
ただし、MiniMaxの計画はあくまで報道段階のものだ。モデルが発表通りの性能・スケールで公開されるかどうか、またオープンウェイトとしての実際の利用条件がどうなるかは、正式リリースを待って判断する必要がある。米国ラボへの「脅威」となるかどうかも、実際のベンチマーク結果や開発者コミュニティの反応次第と言える。
MiniMaxにとっての意味
今回の発表は、技術的な達成と同時に市場での立ち位置を示す行為でもある。中国最大のオープンモデルという称号を獲得できれば、DeepSeekなど国内競合との差別化につながる。逆に期待を下回れば、オープンウェイトのトップの座は依然として争奪戦のままだ。
実際のところ、評価は重みが公開されてからだ。報道通りのスケールで公開されれば、世界中の開発者がすぐにベンチマークを走らせることになる。
詳細はMiniMax plans China's biggest AI model, and will open-source itを参照していただきたい。