7月7日、Hostimが「PostgreSQL Benchmark: AWS RDS vs Hostim vs Self-Hosted on Hetzner (2026)」と題した記事を公開した。同一スペック(2 vCPU / 4 GB RAM、PostgreSQL 16)で揃えたAWS RDS・Hostim managed Postgres・Hetzner自己ホストの3環境を実測比較し、性能差とコストの実態を検証している。
ただし最初に明記しておく。この記事はHostim——欧州でマネージドPostgreSQLサービスを提供する比較的新しいプロバイダー——が自社ブログで公開したベンチマークであり、自社サービスが比較対象に含まれる。一方で使用したコマンドはすべて公開されており、再現可能な構成になっている。数値をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分のワークロードで検証する材料として読むのが適切だ。
結論から:AWS RDSは書き込み性能で最下位
記事の要点を先に整理する。
- 書き込み性能:Hostimが最速。RDS比で約2.5倍のスループット
- 読み込み性能:Hetzner自己ホストが最速。RDSはHostimとほぼ同水準
- コスト:RDSの表示価格(~$48)はインスタンス料金のみ。ストレージ・IOPS・バックアップ・転送量が別途加算される
- HA(高可用性)構成込みで比べると、差はさらに広がる
クラウドコスト最適化が開発組織の共通課題となるなか、「RDSの表示価格と実際の請求額が乖離している」という指摘は以前から根強い。この記事はその問題を数字で可視化しようとしたものだ。
テスト環境と方法論
比較対象は以下の3環境。いずれも欧州中央リージョン、2026年7月実測。
| 環境 | インスタンス | 表示価格/月 | HA(自動フェイルオーバー) |
|---|---|---|---|
| Hostim managed Postgres | drp-50(2 vCPU / 4 GB) | €50 | 標準で含む |
| AWS RDS | db.t4g.medium(2 vCPU / 4 GB) | ~$48(インスタンスのみ) | 別途Multi-AZオプション |
| Hetzner 自己ホスト | CPX22(2 vCPU AMD / 4 GB、共有) | €19.49 | 自前構築が必要 |
※ Hostimは2020年代前半に欧州で設立されたマネージドデータベースサービスで、定額料金にレプリカ込みのHAを含む点をAWS・GCPへの対抗軸としている。「drp-50」は€50の月額プランを指す。
ベンチマークにはpgbench(PostgreSQL公式の負荷テストツール)を使用。スケールファクター50(約750 MB、RAM収容範囲)で、ディスクのコールドリードではなくCPUとコミットパスを計測する構成にしている。負荷生成クライアントはデータベースとは別の4 vCPUマシンに配置し、クライアント側がボトルネックにならないようmpstatで確認済みだ。
自己ホストのHetznerノードはPostgresのデフォルト設定のまま(shared_buffers 128 MB、チューニングなし)で動かしている。「インストールしてそのまま使う」という現実的な基準として設定したものだ。一方、RDSはAWSがインスタンスサイズに合わせて調整したデフォルトパラメータグループを使用し、Hostimも独自のマネージドチューニングが入っている点は明記されている。
性能比較の数字
書き込み(TPC-Bライク、4クライアント、300秒)
| 環境 | TPS | 平均レイテンシ |
|---|---|---|
| Hostim drp-50 | 2,708 | 1.48 ms |
| Hetzner(デフォルト) | 1,303 | 3.07 ms |
| AWS RDS t4g.medium | 1,080 | 3.71 ms |
単一接続書き込み(fsyncレイテンシの分離計測)
| 環境 | TPS | 平均レイテンシ |
|---|---|---|
| Hostim drp-50 | 871 | 1.15 ms |
| AWS RDS t4g.medium | 416 | 2.41 ms |
| Hetzner(デフォルト) | 276 | 3.63 ms |
書き込みでHostimが高スループットを出している理由はWALフラッシュのfsyncレイテンシにある。synchronous_commit = on(デフォルト)では各トランザクションがWAL(Write-Ahead Log)書き込みの完了を待つため、ストレージの応答速度が直接TPSに効く。HetznerとRDSはどちらもネットワーク接続型ブロックストレージを使うため、このパスでのレイテンシが高くなる構造だ。
読み込み(8クライアント、300秒、-Sオプション)
| 環境 | TPS | 平均レイテンシ |
|---|---|---|
| Hetzner(デフォルト) | 20,068 | 0.40 ms |
| Hostim drp-50 | 14,333 | 0.56 ms |
| AWS RDS t4g.medium | 13,261 | 0.60 ms |
読み込みはCPUスケールに依存するため、オーケストレーション層を挟まないHetznerのAMD CPUが有利に出た。なおdb.t4g.mediumはバースタブルインスタンス(CPUクレジット方式)であり、300秒の持続負荷ではCPUクレジット基準値まで落ちる可能性がある。継続的なCPU性能が必要なワークロードではmクラスへの移行が必要で、コストはおよそ2倍になる。
「$48」は請求額の下限に過ぎない
記事が特に力を入れている指摘が、コスト構造の話だ。RDSの~$48はインスタンス料金のみであり、実際には以下が別途従量課金される。
- ストレージ:GB単位で課金
- IOPSとスループット:gp3ベースラインを超えた分
- バックアップ:ボリュームサイズを超えた保持分
- データ転送:エグレスおよびクロスAZトラフィック
記事が示す具体例が分かりやすい。RDSの作成ウィザードでストレージタイプを「Provisioned IOPS SSD」に切り替えると、デフォルトで3000 IOPSがプロビジョニングされ、それだけで月約$300(io1換算)が加算される。一方gp3のデフォルトでは同じ3000 IOPSが400 GBまで無料で含まれるため、ドロップダウン一つで同じデータベースが月$300変わる構造になっている。
HA構成で比べると差が広がる
記事が「最も重要な部分」と位置づけるのが、HA(高可用性)込みのコスト比較だ。
- Hostim:€50に自動フェイルオーバー付きスタンバイが標準で含まれる
- AWS RDS:HA構成はMulti-AZオプションが必要で、インスタンス+ストレージコストがおよそ2倍。さらに同期スタンバイ待ちで書き込み性能は上記測定値よりも低下する
- Hetzner自己ホスト:2ノード目(~€20)に加え、ストリーミングレプリケーションの設定・Patroniやrepmgrなどのフェイルオーバーツールの構築・運用をすべて自前で行う必要がある
Hostimの€50という数字は、RDSで言えば価格を2倍にする要素を最初から含んでいる。本番運用でHAが必要な場合、単一ノードの表示価格同士を並べることにはほとんど意味がない。
再現方法
記事には全コマンドが掲載されており、同じ構成であれば再現可能だ。
sudo apt-get install -y postgresql-contrib nmap sysstat
# データ初期化(約750 MB)
pgbench -i -s 50
# 書き込みベンチマーク(4クライアント、5分)
pgbench -c 4 -j 4 -T 300
# 読み込みベンチマーク(8クライアント、5分)
pgbench -c 8 -j 4 -T 300 -S
# 単一接続書き込み(1分)
pgbench -c 1 -T 60
ネットワークレイテンシはTCPポート5432へのping(nping --tcp -p 5432)とSELECT 1の往返時間で計測している(ICMPが開放されていないプラットフォームがあるため)。
まとめ
今回の結果が示すのは「AWS RDSが劣っている」という単純な話ではなく、コスト比較は表示価格だけで判断できないという構造的な問題だ。ストレージ・IOPS・Multi-AZの組み合わせ次第で、RDSの実コストは表示価格の2〜4倍になりうる。一方でHostimのような後発マネージドサービスはその複雑さを定額に吸収したうえで、性能面でも競争力を持ちはじめている——ただし、この結論はHostim自身が出した数字である点は忘れてはならない。
詳細はPostgreSQL Benchmark: AWS RDS vs Hostim vs Self-Hosted on Hetzner (2026)を参照していただきたい。