7月7日、Windows Latestが「Microsoft 365 Copilot adoption is under 4.5% after 3 years, only 1% use it weekly, yet prices went up」と題した記事を公開した。Microsoft 365 Copilotがリリースから約3年を経てもなお採用率が4.5%未満、週次利用に至っては約1%という低迷を抱えたまま値上げが断行されたという実態を伝える内容だ。
企業のAI投資に対するROI(費用対効果)への懐疑論が世界的に高まっている2026年、Microsoftの旗艦AIプロダクトを巡るこの数字は、「AIブームの実態」を測る一つのバロメーターとして広く注目を集めている。
「週1回使う人」は全ユーザーのわずか1%
Fortuneの報道によると、Microsoft 365の商用ユーザー約4億5000万人のうち、有料のCopilotアドオンを契約しているのは4.5%未満だ。さらにその中で週に1回以上Copilotを使うのは20〜30%にとどまる。掛け算すると、週次アクティブユーザーはMicrosoft 365全体の**約1%**という計算になる。
MicrosoftはWord、Excel、Outlook、Teams、Windows 11のタスクバーにまでCopilotを組み込んできた。それでこの数字だ。積極的な統合戦略を取り続けた結果がこれである。
Copilot担当VPのJacob Andreou氏の社内メモ(The Decoderなどが報道)には、Copilotは 「存在する権利を勝ち取らなければならない(earn the right to exist)」 と記されていたという。社内からこういう言葉が出てくること自体、状況を物語っている。
なお、この4.5%という数字は有料のCopilotアドオンの話だ。Microsoft 365の対象プランに含まれる無料の「Copilot Chat」は追加費用ゼロで自動的に利用できるため、それなりに使われている。低採用率の問題はあくまで「追加料金を払ってまで使う人がいない」という点にある。
有料にすると何が増えるのか
Microsoft 365 Copilotの有料アドオンは、Business Basic/Standard/Premium、またはEnterpriseプランの上に重ねる形でライセンスされる。エンタープライズ向けはユーザー1人あたり月30ドル、300席未満の中小企業向けはプロモーション価格終了後で約21ドルだ。
ベースのBusiness Standardが直近で月12.50ドルから14ドルに値上がりしたことを考えると、フル構成では月35ドル超/ユーザーになる。
無料のCopilot Chatとの主な差分は以下のとおりだ。
| 機能 | Copilot Chat(無料) | Microsoft 365 Copilot(有料) |
|---|---|---|
| 業務データへのアクセス | アップロードファイルのみ | メール・会議・チャット・ファイル等すべて |
| エージェント | 限定的 | Researcher、Analystなど高度なエージェント含む |
| Copilot Studioアクセス | 従量課金 | 含む |
| ピーク時の優先度 | 標準(低速の場合あり) | 優先(高速・安定) |
有料版の核心的な差別化要素は、Microsoft Graph(Microsoft 365全体のデータを横断的に扱うAPI基盤)と連携して自分のメール・会議・ファイルを横断検索できる点だ。たとえば「先週の会議で決まったことをまとめて」「このプロジェクトに関連するメールを検索して」といった業務文脈に踏み込んだ質問に答えられる。有料版限定の「Researcher」「Analyst」は、そうしたデータをさらに深く分析・調査するための高度なエージェント機能だ。
有料版の目玉機能が「他社モデルの利用権」という皮肉
有料層で最も実用的な追加機能の一つがモデル選択だ。MicrosoftはAnthropicのClaudeモデルをResearcher・Copilot Studio・Copilot Chat・Excelのコパイロットで利用できるようにしている(管理者がMicrosoft 365管理センターからオプトインする必要がある)。
つまり月30ドルの相当部分は、自社モデルではなくAnthropicのClaudeをMicrosoftのインターフェース越しに使うための料金という構図になっている。Microsoft Graphとの統合はセールスポイントとして機能するが、モデル出力のクオリティでClaudeに勝るとは主張していない。
「Microslop」と呼ばれた末の値上げ
Copilotの不人気には経緯がある。MicrosoftはNotepad、Paint、ファイルエクスプローラー、果てはCopilotキーと称したハードウェアキーまで、ユーザーが求めていない場所にCopilotを押し込み続けた。そのCopilotキーについては、Microsoftが「生産性を下げる可能性がある」と認めてリマップを許可する事態になっている。WordやExcelのフローティングCopilotボタンも批判を受けて撤回した。
この一連の強引な展開にネットが付けた名前が「Microslop」だ。批判が大きくなり、MicrosoftはNotepadなど標準アプリでのCopilotブランディングを2026年前半に縮小している。
元MicrosoftのVPも採用率について「Microsoft 365ユーザーの**3.3%**しかCopilotに課金していない」と数字を示しており、今回のFortuneのデータとほぼ一致する。
開発者向けのGitHub Copilotも課題を抱える。有料加入者数は伸びているものの、CursorやClaude Codeがここ1年で急成長しており、開発者のマインドシェアは移動しつつある。コードアシスタント市場においても、Microsoftがかつて持っていた「一択」の地位は崩れている。
低採用率と批判を受けながらも値上げを断行したMicrosoftの賭けは、次世代のCopilotが「自分から開きたい理由」をユーザーに与えられるかどうかにかかっている。Jacob Andreou氏の言葉を借りれば、Copilotはまだ「存在する権利」を証明できていない。
詳細はMicrosoft 365 Copilot adoption is under 4.5% after 3 years, only 1% use it weekly, yet prices went upを参照していただきたい。