7月6日、The Next Webが「Midjourney wants Hollywood's own AI files revealed」と題した記事を公開した。MidjourneyがDisney・Universal・Warner Bros.を相手取った著作権訴訟で、スタジオ側の社内AI利用情報の開示を裁判所に求めた経緯を報じている。
Midjourneyの反撃——「同じことをしているはずだ」
AI画像生成ツールのMidjourneyが、自社を訴えているハリウッドの大手スタジオに対し、社内でのAI利用実態を裁判所に提出するよう命じることを連邦判事に申し立てた。Varietyが報じた。
この訴訟の経緯を整理する。Disney・Universalは2025年6月にMidjourneyを提訴した。ダース・ベイダー、バート・シンプソン、エルサといったキャラクターの大規模な著作権侵害を可能にするツールだとして、「盗作の底なし沼」と批判した。同年9月にはWarner Bros. Discoveryも参加し、スーパーマン・バットマン・バッグス・バニーを対象に、侵害作品1件あたり15万ドルの賠償を求めた。Midjourneyの防御戦略は「フェアユース(公正利用)」——公開されている画像で学習させることは合法だ、という主張だ。
スタジオ側に求めた開示内容
今週Midjourneyが提出した申立書では、John Kronstadt判事に対し、スタジオ側に以下の情報を開示させるよう求めた:
- AIに関するビジネスプラン・研究報告書
- 学習データセットとモデルの重み(model weights)
- 取締役会へのAI関連プレゼン資料
6月に担当の治安判事(magistrate judge)が開示範囲を「消費者向けツール」に限定する判断を下していたが、Midjourneyはこれを覆すよう求めた。
Midjourneyの弁護士Bobby Ghajarは申立書の中で論拠をこう記した。「原告らが、自分たちが罰しようとしている行為をまさにやっているのであれば、その証拠はフェアユースおよびアンクリーン・ハンズ(unclean hands)の抗弁の核心に触れる」。
「アンクリーン・ハンズ」とは、不公正な行為をした当事者は衡平法上の救済を求められない、という法原則だ。Ghajar弁護士が示した具体例はこうだ——あるスタジオがライセンスなしの画像を使ってストーリーボード作成用の画像モデルをひそかに学習させていたとすれば、それはこの慣行が「業界慣習(industry custom)」であることを示す証拠になる、と。
スタジオ側の反論
スタジオ側の主任弁護士David Singerはこの申し立てを「不当な証拠漁り(fishing expedition)」と一蹴した。スタジオはAI技術を止めようとも、Midjourneyのビジネスを潰そうとも思っていない——ただ自社キャラクターの無断コピーをやめさせたいだけだ、と主張した。「これはAI企業かどうかに関係なく、著作権者なら誰でも主張する権利だ」とも述べた。
ただし、スタジオ側がAIと完全に距離を置いているわけではない。DisneyはOpenAIの動画生成AI「Sora」に自社キャラクターを提供する10億ドル規模の契約を計画していたが、Soraのサービス終了(OpenAIは2025年に同サービスを終了した)により破談になった。Disneyはその後、「知的財産を尊重するAIとは引き続き協力する」との方針を示している。Midjourneyが突いているのは、まさにこのグレーゾーンだ——訴える側も、形を変えてAIと深く関わっている。
この訴訟が持つ意味
もしMidjourneyが証拠開示の申し立てで勝訴すれば、ハリウッド自身のAI実験が法廷の証拠として扱われることになる。「被害者と侵害者」という単純な構図は一気に複雑化する。
AI著作権をめぐる訴訟はこの案件だけではない。出版社はMetaのLlamaを訴え、一方でGetty ImagesはOpenAIとライセンス契約を結んだ。ドイツの裁判所ではGoogleのAI機能の責任が問われている。これらの多くが「AIが生成したものへの責任は誰が負うか」を問う訴訟であるのに対し、今回のMidjourney案件は「AIに学習させること自体」の合法性、すなわち業界全体の学習データ調達慣行の是非に直接踏み込んでいる点で、判決の射程がより広い。
詳細はMidjourney wants Hollywood's own AI files revealedを参照していただきたい。