7月5日、The Newsが「AI will cost 15m US jobs: Goldman economist」と題した記事を公開した。ゴールドマン・サックスのエコノミストがAIによって今後10年間で米国の労働人口の約9%、1500万人が職を失うと予測したことを軸に、MITの研究者による慎重論、足元の雇用統計、そして過熱する投資家心理までを横断的に伝える内容だ。
「労働人口の9%」という数字
発言したのは、ゴールドマン・サックス・リサーチのグローバル経済チームのシニアエコノミストであるJoseph Briggsだ。同行が運営するポッドキャスト「Exchanges at Goldman Sachs」に出演し、AIの普及によって今後10年で米国労働者の約9%、おおよそ1500万人が雇用を失う可能性があると述べた。
Briggsはこの変化の規模を、1990年代後半から2000年代初頭にかけての技術革命に匹敵するものと形容した。テクノロジー、コンサルティング、グラフィックデザインといった分野では、すでに毎月1万〜1万5000件の雇用喪失が起きていると指摘した。
一方で楽観的な見方も示した。「歴史は我々の味方だ」と述べ、過去80年間の雇用増加の約85%が技術によって生まれた新しいポジションによるものだったことを根拠に挙げた。また、現状でも年間3000万件の雇用創出と2900万件の消滅が同時進行しており、採用が増えれば職を失った多くの人が再就職できると主張した。
MITの研究者は「慎重論」
同じポッドキャストに出演したのが、MITコンピュータサイエンス・人工知能研究所(CSAIL)の研究者であるNeil Thompsonだ。Thompsonはテクノロジーの経済的影響や産業へのAI応用を専門とする研究者であり、Briggsとは異なる角度からAI導入の現実を論じた。
Thompsonが挙げた主な障壁は以下の三点だ。
- データへのアクセス制限
- 法的な障壁
- コスト効率の問題
これらを理由に、AI導入のペースは技術の進歩より遅れる可能性があると指摘した。自動化は「完全な置き換え」ではなく、「部分的な自動化」にとどまるケースが多くなるという見立てだ。BriggsとThompsonの議論は対立するものではなく、変化の速度と範囲についての見解の差として読み取れる。
足元の雇用統計は何を示しているか
米労働統計局(BLS)によると、6月の雇用者数増加は5万7000人にとどまり、エコノミスト予測の約半分だった。さらに4月・5月分の数字も合計7万4000人分が下方修正されている。
失業率は4.2%に低下したが、これは就職によるものではなく、労働市場から退出した人が増えたことが主因だとされる。この数字がThompsonの言う「技術的混乱が限定的である証左」なのか、Briggsが懸念する「雇用喪失の初期兆候」なのかは、現時点で解釈が分かれている。
AIへの投資家心理は「強欲」フェーズへ
元記事によると、ゴールドマン・サックスのCEOであるDavid Solomonは6月初頭、AI技術に対する投資家の姿勢が「強欲(greedy)」な方向に転じたと発言した。OpenAI、Anthropic、SpaceXが史上最大級のIPOに向けて動き出している状況を背景にした発言とされる。
雇用への不安と投資マネーの熱狂が同時進行しているのが、現在のAIをめぐる構図だ。BriggsとThompsonの対話が示すのは、AIが労働市場に与える影響の「方向性」についてはコンセンサスがある一方で、「速度」と「規模」についてはいまだ不確実性が大きいという現実である。
詳細はAI will cost 15m US jobs: Goldman economistを参照していただきたい。