7月6日、Raheel Junaidが「PSA: Anthropic's Method to Losing Goodwill in a Few Easy Steps」と題した記事を公開した。AIコーディングツールの急速な普及とともにAnthropicのClaude ProおよびClaude Codeへの依存度が高まる一方で、同社の料金体系の変更や品質問題に対するユーザーの不満が蓄積しつつある。筆者はその構造的な問題を具体的な事例とともに列挙し、「善意の喪失」と断じた。
これはAnthropicに批判的な一個人の見解ではあるが、HackerNewsやRedditでも類似の不満が繰り返し浮上しており、開発者コミュニティ全体に共鳴している問題提起だ。以下に内容を整理する。
サブスクリプションが「使えない」二重課金構造
最も実害が大きい問題として筆者が取り上げているのが、サブスクリプション料金の「二重取り」構造だ。
Claude Pro/Maxに加入したユーザーは月額料金の範囲内でClaudeを使えると認識しているが、2026年6月15日以降、Anthropicはサブスクリプションの利用枠を「ファーストパーティツール経由」と「サードパーティ経由」の2つのプールに分割した。Zedのブログはこの変更を次のように整理している:
Claude ProやMaxのサブスクリプション枠は、Anthropic公式ツール(ChatのUI、公式Claude Code CLI)経由の利用にのみ適用される。ACP(Agent Connection Protocol:AIエージェント間の通信規格)経由やサードパーティツールでの利用は、別途「Agent SDKクレジット」から引かれる。Proなら$20、Max 5xなら$100、Max 20xなら$200。これが尽きると、通常のAPI料金が課金される。
問題はその価格差の大きさだ。サブスクリプションはAPIと比較して約15〜30倍の補助が効いていた。新クレジット制度はAPI正規料金で課金されるため、ヘビーユーザーにとっては実質的な大幅値上げになる。
さらに悪質なのが通知の欠如だ。多くのユーザーはサービス停止ではなく、請求ページを確認して初めてこの変更を知ったという。claude -p(Claude Code CLIの公式コマンド)でCLIを自動化に組み込もうとすると、ファーストパーティのツールを使っているにもかかわらずサードパーティ扱いとなり、追加課金が発生するケースも報告されている。
バグ放置と、閉じたエコシステムへの囲い込み
筆者はClaude Codeの品質にも言及する。2026年時点でGitHubには約9,100件のオープンイシューがあり、6ヶ月以上放置されている「完全フリーズ」の問題や、1年以上未解決の「画面ちらつき」問題が含まれている。皮肉なことに、AnthropicはClaude CodeをClaude自身に書かせているとされており、筆者は「その品質に如実に表れている」と指摘する。
さらに問題の根底にはエコシステムの囲い込みがある。Anthropicのサブスクリプションは事実上Claude CodeのCLI/Desktop、Claude CoWork、Slack上の@Claudeにしか使えない。OpenCode、Zedといった他社の優れたツールでClaudeのサブスク枠を使いたくても、制度上それができない。
それだけではない。以前Anthropicは、セッションディレクトリに特定の名前のファイルが存在するだけでサードパーティツールを使用していると「みなし」、追加課金を適用していた(該当Issue)。実際には使っていなくても、だ。また、サブスクリプションとサードパーティツールの橋渡しをしていたプロキシツール(meridian等)が、クエリ機構を何も変えていないにもかかわらず一夜にして追加課金対象になった事例もある。
「急所を握られているから使い続ける」という自己分析
なぜこれほどの不満がありながらAnthropicを使い続けるのか。筆者は率直に述べる:「彼らに急所を握られているから」だ。
AnthropicのCEOであるDario AmodeiらがAIによるコーディングの自動化を積極的に訴える中、コードを理解せずAIに丸投げする開発スタイル——いわゆるバイブコーディング(vibecoding:コードの詳細を理解せずAIとの「雰囲気」でソフトウェアを作る開発手法)——の実践者が増えている。コードを書けない・書かない層が増えるほどAnthropicの市場支配力が高まる、という構造だ。
筆者自身もバイブコーディングを試みたが、Claudeが落ちると自分も止まる状態になり、スキルの劣化と自分のコードへの理解の喪失を経験したと告白している。その後、GitHub Copilot時代のような「オートコンプリート」スタイルに回帰し、エージェント主導ではなく「エージェント補助」の開発に戻ったという。
オープンソースモデルへの移行という選択肢
筆者はAnthropicを離れた後、QwenとGLM(中国発のオープンソース系大規模言語モデル)をOpenCodeのワークフローに組み込み、Claude Sonnetの代替として問題なく機能していると報告している。
OpenRouterのようなAIゲートウェイ(複数のAIプロバイダーを束ねてAPIを統一的に扱えるサービス)を使えば、最安・最安定のバックエンドに自動ルーティングでき、ゼロデータリテンション設定やプロンプトからの機密情報除外なども設定できる。OpenRouterの比較データによると、GLM 5.2やQwen 3.7 MaxはClaude Sonnet 5と近いコーディング性能を持ちながら、コストは大幅に低いとされている。
筆者が列挙する「善意喪失」の6項目
記事の末尾で筆者は以下を列挙している(あくまで筆者個人の評価である):
- 市場独占のために顧客をクローズドな系に閉じ込める
- 競合が脅威になると競合を貶める
- 自社製品の品質が低いのに「品質向上」と謳う
- 恐怖心を煽るマーケティングとして自社製品を人工的に制限する
- ユーザーに対してダイナミックプライシングを試す
- 販売後に規約を変更し、ユーザーに通知しない
「これは三大AIラボの一つに過ぎない。OpenAIについても書けるネタがある」と筆者は締めくくっている。
詳細はPSA: Anthropic's Method to Losing Goodwill in a Few Easy Stepsを参照していただきたい。