7月2日、Search Engine Landが「What 1 million keywords reveal about AI's impact on search」と題した記事を公開した。100万件超のキーワードデータと消費者調査を組み合わせ、AIが検索需要をどのように変容させているかを詳細に分析した内容だ。最も注目すべき知見は「検索が消える」という単純な話ではなく、「消費者の18%がAI推薦のみで購入を完結させる」「追跡対象の検索ボリュームの90%が非ブランドクエリとして最大のリスクにさらされている」という構造的な変化にある。
「検索需要の消滅」ではなく「需要の移動」
2024年、調査会社Gartnerは「2026年までに従来の検索エンジンのボリュームが25%減少する」と予測した。FractlとSearch Engine Landはその予測を検証するため、月間1万件以上の検索ボリュームを持つ1,010,848件のキーワードを分析した。対象は379ブランド、8業種にわたり、データセット全体の月間検索数は354億件に達する。
結果として確認されたのは「検索需要の減少」ではなく、「需要の再分配」だ。
- 減少キーワード(前年比-15%超):285,489件、合計約102.9億/月
- 増加キーワード(前年比+15%超):140,835件、合計約103.1億/月
- データセット全体の純変化:+1,680万件/月
減少しているキーワードの数は増加しているキーワードの数より多いが、増加側のキーワード1件あたりのボリュームが大きいため、合計はほぼ相殺される。なお、元記事で言及される「-29%」はGartnerの25%予測との比較ではなく、減少キーワード群における検索ボリュームの下落率を指す。データセット全体では純増(+1,680万件/月)であるため、「全体が29%落ちた」ではなく「下落した領域に絞ると落ち込みはGartner予測の25%を4ポイント上回る-29%だった」という解釈が正確だ。増減が業種・クエリ種別によって混在している点は、以下の業種別分析を見ると明確になる。
業種ごとの格差が鮮明
業種別に見ると差異は大きい。
| 業種 | 動向 |
|---|---|
| FinTech | 最大の下落(-37.7%) |
| HealthTech / Wellness | Gartner閾値を大幅に超える下落 |
| SaaS | 増加(伸び率48%) |
| Lifestyle | 増加(伸び率40%、成長/下落比2.6倍) |
| Insurance | ほぼ横ばい〜微増 |
| Travel | ほぼ横ばい〜微増 |
※元記事ではInsuranceとTravelはそれぞれ独立した業種として集計されているが、いずれも横ばい〜微増の類似した動向を示すため、上表では並列で記載している。
このパターンには構造的な理由がある。AIチャットボットが「完結した回答」を返せる情報型クエリほど検索離れが起きやすい。薬の相互作用、保険の控除額の説明、ファンドの概要といった内容はチャットウィンドウで完結するため、Googleに飛ぶ必要がなくなる。一方、「SaaSツールを選んで購入する」「家具を比較して買う」といったトランザクション型クエリは、AI回答が「次の検索」を生み出すため、検索ボリュームが維持される。
HealthTechの成長/下落比は0.4倍と全業種で最も低く、最も大きな影響を受けている業種だ。
非ブランドクエリが最もリスクにさらされている
データセット全体で、追跡対象の検索ボリュームの90%が非ブランドクエリだ。ブランド名を含まないクエリはAIチャットボットが置き換えやすい。回答が特定サイトへの誘導を必要としないため、チャットウィンドウで完結するからだ。
業種別の非ブランド率はHealthTech(**99.6%)、Wellness(98.5%**)が突出して高い。反対にInsurance(73.8%)やSaaS(82.0%)は比較的低く、両業種とも全体として成長している。非ブランド率が低いほどAI代替のリスクが分散されるという構造が、業種間の明暗を分けた一因と読み取れる。
消費者の実態:70%がAI利用増、だが「検索を減らした」は17%のみ
1,004人の米国消費者への調査では、70%がAIの利用頻度が増えたと回答した一方、従来の検索を減らしたと答えたのは17%にとどまった。多くの人はAIをGoogleと置き換えるのではなく、習慣に追加する形で利用している。
検索行動の分散先として、YouTube(68%)とReddit(57%)が他を大きく引き離してトップ2に入った。この2つはGoogleのインデックスにも乗るため、可視性の効果が複数プラットフォームで重複する点が特徴だ。
購買調査の入口としては、従来の検索エンジンとオンライン小売りサイトが47%ずつで同率1位。AIチャットボットからスタートする人は13%にすぎず、購入前に平均3つのオンラインソースを確認している。
ただし見逃せない数字がある。消費者の18%が、別途確認なしにAIの推薦だけで購入した経験があるという点だ。Gen Z・ミレニアル世代は、ベビーブーム世代と比べてその行動を取る確率が2.5倍高い(20% vs. 7%)。また、59%の消費者がAIチャットボットにブランド名が挙げられた後、そのブランドのウェブサイトを訪問すると回答した。AIは購買起点として少数派にとどまる一方、一度名前が挙がれば購買・訪問につながる確率が高いという非対称な構造が浮かび上がる。
「AIに推薦されること」が新たなランキング
記事の結論は明快だ。AIの登場で「検索が消える」のではなく、「どの検索がボリュームを持つか」が変わった。AIが完結した回答を返すカテゴリでは、従来のSEO戦略に加えてGEO(Generative Engine Optimization)が不可欠になる。
GEOとはAI生成回答への露出を最大化するための最適化戦略であり、従来のSEOがGoogleの検索結果ページ(SERP)における順位を競うのに対し、GEOはChatGPTやPerplexity、Google AIオーバービューといったAIが回答を生成する際に自社ブランド・コンテンツが引用・言及される確率を高めることを目的とする。具体的な手法としては、権威性の高い一次情報としてAIに学習・参照されやすい構造化コンテンツの整備、引用されやすい簡潔な定義文や統計の明示、信頼性シグナルとしての外部リンク獲得などが挙げられる。SEOが「クリックを獲得する」戦略だとすれば、GEOは「回答の中に存在する」戦略と言える。
Googleが5年後も主要な検索ツールだと回答した消費者は**52%。「おそらくそうではない/確実にそうではない」は20%**。少数派だが無視できる規模ではなく、彼らがすでに移動した先でのプレゼンスを確保することが求められる。
詳細はWhat 1 million keywords reveal about AI's impact on searchを参照していただきたい。