7月4日、Los Angeles Timesが「With token prices collapsing and regulation rising, AI's pricing power looks fragile」と題した記事を公開した。この記事では、トークン価格の下落と規制強化を受けて、AI企業の価格支配力が揺らぎつつある市場構造について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
トークン支出指数が高値から約20%下落
AI業界では、莫大な設備投資(capex)が本当に回収できるのかという懸念が市場に広がる中、利用単価に相当するトークン価格が下落傾向にある。
Silicon Data LLM Token Expenditure Index(ユーザーがAIトークンに支払う価格を追跡する指数)は、昨年12月の開始以来ほぼ倍増した後、5月の高値から約20%下落した。この指数は、業界全体で進む7,000億ドル超のcapexブームの実態を最もクリアに映し出す指標として注目されている。
ただし、指数の下落が直ちに「AIが安くなった」を意味するわけではない点に注意が必要だ。この指数は価格と使用量を合算したもので、下落の原因は複数考えられる。
- 提示価格(list price)そのものの低下
- 需要が安価なモデルにシフトしている
- ユーザーが支払いを厭う水準に近づいている
Silicon Dataは「価格の代理指標ではなく、限界支払い意思(marginal willingness to pay)の代理指標だ」と説明しており、単純な価格タグとして読み解くことをやめるよう警告している。
強気派と弱気派、それぞれの読み方
楽観シナリオから見ると、2023年以降トークン価格は90%超崩落したが、総支出は前年比でほぼ倍増した。安価なトークンが市場そのものを拡大した、という解釈だ。指数の踊り場は単なる消化局面に過ぎず、Nvidia・メモリメーカー・データセンター関連銘柄への強気の根拠はここに求められる。
一方、悲観シナリオも無視できない。Allianz Researchの試算によれば、AIへの投資とその売上の間には約46%の乖離がある。これは2001年の通信バブル崩壊時に記録された32%の乖離を上回る数字だ。
ベテラン投資家のLouis Navellierはこう語っている。「トークン課金制のAIソリューションを使うユーザーが、コストを理由に使用量を制限せざるを得ないという報告が増えている。OpenAIがIPOを来年に先送りしているという話も、現時点では収益化が依然として課題であることを示唆している」
規制という新たな下方圧力
需要サイドにも変化が生じている。米政府は今週、AnthropicのClaude(Fable 5モデル)への海外アクセス制限を解除したばかりだが、その数日前にはOpenAIの新モデルのロールアウトに段階的な公開を求めていた。
EU側では、AIアクトがフロンティアモデルに対して義務的な評価と厳格な透明性要件を課している。これらは価格を直接規制するものではないが、主要プラットフォームにデプロイ・コンプライアンスの負担を上乗せする。その結果、CFOが「安価なモデルに処理を振り向ける合理的な理由」を手に入れることになりかねない。
本質はシリコン(半導体)の話ではない
この記事が強調するのは、現在の問題がチップ不足ではないという点だ。ハイエンドGPUと高帯域幅メモリ(HBM)は2026年を通じて売り切れ状態が続き、実質的な供給緩和は2028年まで見込めない。ただし需要のミックスが変化しており、高価なトレーニング用GPUから推論最適化チップへとシフトしつつある。これは勝者の顔ぶれを変えるが、即座に売り材料にはならない。
DWSのチーフ投資責任者Vincenzo Vedda率いるストラテジストチームはこう述べている。「中国との競争激化や価格感応度の高まりを踏まえ、バリュエーションが割高に見える領域を注視している」
結論:これは価格支配力の問題だ
記事の最終的な論点は明快だ。トークン指数の読み方は強弱両方向にある。6月下旬の底打ちが本物であれば、安価なトークンが市場拡大を続け、capex投資は正当化される。しかし、もしここが「ユーザーの支払い意思がピークに達した転換点」であれば、2027年に向けた1兆ドルのcapex計画を支えているのはシリコンの物語ではなく、価格支配力の物語だということになる。そしてその価格支配力が最初にほころびる。
詳細はWith token prices collapsing and regulation rising, AI's pricing power looks fragileを参照していただきたい。