7月2日、The Decoderが「Meta follows SpaceX's playbook and builds a cloud business to sell its spare AI compute to outside customers」と題した記事を公開した。Metaが自社の余剰AIコンピュートを外部企業に販売するクラウドビジネスの構築に乗り出したとBloombergが報じたもので、報道を受けてMetaの株価は報道時点で約10%上昇した。
SpaceXモデルの踏襲:余剰GPUを売る
Bloombergの報道によれば、Metaは自社が保有する余剰AIコンピュート能力を外部顧客向けに販売するクラウドビジネスを構築中だ。自社AIモデルの開発だけでは消費しきれない大量の計算リソースを収益化する動きである。
この手法の先例はSpaceXだ。SpaceXはxAI向けに確保したGPUキャパシティの余剰分を外部に貸し出しており、AnthropicおよびGoogleとの間にそれぞれ月額12億5000万ドル、9億2000万ドル規模の契約を結んでいると元記事は伝えている。MetaはそのSpaceXの「プレイブック」を参考にする形となる。
Metaが今年だけでAIインフラに投じる予定の金額は最大1450億ドルとされている。NvidiaのGPUを大量購入する一方で、従業員を大規模にレイオフし、その資金をAIインフラへと振り向けてきた経緯がある。これだけの規模のハードウェアを自社モデル開発だけで使い切れないとなれば、外販による収益化は財務的に理にかなった判断だ。
また、Metaはコンピュートの提供にとどまらず、自社インフラ上でのAIモデルへのアクセスも提供する可能性があるとされている。
AWS・Azure・Googleとの競合構図と参入障壁
Metaがクラウドビジネスに本格参入すれば、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudという既存の三強と直接競合する構図になる。ただし、現時点ではMetaの提供内容の詳細(価格体系、対応リージョン、SLAなど)は明らかになっていない。
既存のハイパースケーラーは単なるGPUリソースの貸し出しにとどまらず、ストレージ・ネットワーク・セキュリティ・マネージドサービスを組み合わせたエコシステムを長年かけて整備してきた。Metaがコンピュート単体の外販から始めるとしても、エンタープライズ顧客が求めるコンプライアンス対応や可用性保証、サポート体制を短期間で構築できるかどうかは未知数だ。規制面でも、個人データを大規模に扱うMetaがクラウド事業者として各国の規制当局からどのような審査を受けるかは注目点となる。
一方で、「余剰があるということは、本来の目的である自社モデル開発の需要が想定より小さい」という見方もできる。元記事中でもその点が指摘されている。
※編集部の考察:AIインフラ投資の規模が先行し、実際のモデル学習需要がそれに追いつかない状況は、Meta固有の問題というよりも業界全体で生じ得る構造的な課題でもある。コンピュートの外販はその「余剰」をポジティブに転換する手段として機能し得るが、同時に投資規模の正当性を問われるリスクも内包している。
Metaの社内AI体制の変化
AI組織の面でも動きがある。Scale AIからヘッドハンティングしたAlexandr Wangの主導のもと、Metaは新たなフロンティアモデルの開発を進めている。元記事によれば、このモデルは「AIへの取り組みをゼロから作り直す最初の成果物」と位置づけられており、従来のLLaMAシリーズで知られるオープンウェイト路線(モデルの重みを公開する形式)を採らない初のMetaモデルとなる点でも注目される。オープンウェイトからの転換は、外部向けクラウドサービスとしてモデルアクセスを有償提供する方向性とも整合する。
なお、モデル名称については元記事の記述を参照されたい。本紹介記事では元記事の表現に準拠している。
また、著名なAI研究者であるYann LeCunが現在Alexandr Wangの下に置かれる体制になっており、Metaの研究・開発の優先順位が変化しつつあることを示している。
MetaがSpaceXと同様にコンピュートの外販で存在感を示せるか、あるいはAWS等の既存プレイヤーとの価格競争に巻き込まれるかは、今後の詳細発表と市場の反応次第だ。
詳細はMeta follows SpaceX's playbook and builds a cloud business to sell its spare AI compute to outside customersを参照していただきたい。