7月1日、Matthias Bastianが「San Francisco's AI boom is pricing out six-figure tech workers who can't find rent under $5,000」と題した記事を公開した。サンフランシスコのAIブームによる生活費高騰が、年収6桁ドル(six-figure、すなわち年収10万ドル以上)のテック系従業員すら住居を確保できない水準に達している実態を詳しく伝えている。
年収5,475万円の夫婦でも、家賃5,000ドル以下の部屋が見つからない
ニューヨーク・タイムズの報道によると、年収18万ドル(約2,700万円)のリクルーターと、年収18万5,000ドル(約2,775万円)のソフトウェアエンジニアのカップルが、月額5,000ドル未満のアパートを3ヶ月間探し続けたが、見つからなかった。結果、エンジニアはレイク・タホへ移住。リクルーターは今もルームシェアで月1,650ドルを払い続けている。
合算年収が36万5,000ドル(約5,475万円)を超えるカップルでもこの状況だ。このエピソードは個人の不運ではなく、AIブームが引き起こした構造的な住宅危機の縮図として広く注目されている。
なぜ今、この問題が深刻化したのか
サンフランシスコの住宅逼迫は以前から慢性的な課題だったが、AIブームが状況を質的に変えた。2020〜2021年のパンデミック期には、リモートワークの普及と都市回避の流れを受けて空室率が上昇し、一時的に家賃が下落した地区もあった。しかし2022年以降、ChatGPTの登場を契機としたAI投資の急増により、OpenAI・Anthropic・Google DeepMindをはじめとするAI企業がサンフランシスコ市内およびベイエリアへの人材集中を加速させた。
高額報酬を得たAIエンジニアや研究者が限られた住宅ストックに殺到した結果、家賃相場は短期間で急騰。「six-figure」の収入があっても市場から弾き出される層が生まれた。サンフランシスコ市の住宅供給規制や建設コストの高さも供給増を阻んでおり、需要の急増に対して供給側が追いついていない構造的背景がある。
数字で見るサンフランシスコの住宅市場
サンフランシスコの住宅市場は現在、以下のような状態にある。
- 平均家賃:月3,827ドル(約57万円)
- 住宅の中央値:170万ドル(約2億5,500万円)
- **マリナ地区・パシフィックハイツの空室率:約3%**(2020年の13%から急落)
マリナ地区とパシフィックハイツはサンフランシスコ北部に位置する高級住宅街で、ゴールデンゲートブリッジに近くテック系富裕層に人気の高いエリアだ。この地区における空室率が2020年比で10ポイント以上低下しているという数字は、AIブームによる需要集中の激しさを端的に示している。
OpenAI・Anthropicの上場観測が、さらなる高騰を招く可能性
状況をさらに複雑にしているのが、OpenAIとAnthropicのIPO観測だ。両社はいずれも企業価値がほぼ1兆ドル規模とされており、上場が実現すれば少数の従業員に富が一気に集中する。
実際、OpenAIは昨秋の社内株式売却で約75人のマルチミリオネアを生み出し、それぞれが約3,000万ドルを受け取ったと報じられている。
Menlo VenturesのベンチャーキャピタリストであるDeedy Dasは最近、純資産2,000万ドル超のAIエリートが約1万人規模で形成されていると指摘した。この「AI富裕層」がサンフランシスコの不動産市場に与えるインパクトは、IPO実現とともにさらに大きくなる見通しだ。
恩恵を受けるのはごく一部
AIブームの恩恵は、極めて限られた層に集中している。一方で、その恩恵圏外にいる多数のテック系労働者——年収が6桁ドルあっても——は、居住コストの上昇にそのまま晒されている。リクルーターとエンジニアのカップルの話は、この構造を象徴している。AIが生み出す富の集中と、それが都市の住宅市場に与える波及効果は、サンフランシスコに限らず今後のテクノロジー都市が直面する共通課題となりつつある。
詳細はSan Francisco's AI boom is pricing out six-figure tech workers who can't find rent under $5,000を参照していただきたい。