6月28日、CNBCが「Google limits Meta's use of its Gemini AI models, FT reports」と題した記事を公開した。GoogleがMetaによるGemini AIモデルの利用を制限したとFinancial Timesが報じたもので、その背景には「お金を出せば計算リソースは買える」という前提が崩れつつある現状がある。企業各社がチップやデータセンターに数十億ドル規模の投資を続けているにもかかわらず、AI需要の急増に供給が追いつかない。この制限は世界最大級のテック企業間でさえ、AIインフラの取り合いが起きていることを示している。
AI供給制約が「最優良顧客」をも直撃
Financial Timesの報道によると、Googleは2025年3月頃、MetaがGeminiモデルに求めていた計算容量(コンピューティングキャパシティ)を満額では提供できないとMetaに通告した。
この制限により、Metaの社内AIプロジェクトの一部が中断・遅延する事態となった。MetaはAIトークン(テキストを処理する際の最小単位で、単語や文字の断片に相当する。AIサービスではこの消費量が利用量の計測基準にもなる)の使用効率を高めるよう社内スタッフに促したとも報じられている。
影響を受けたのはMetaだけではなく、他のGoogleクライアントにも同様の制限が及んでいるが、その影響度はMetaより軽微だという。Metaが特に大きく影響を受けた理由として、FTはMetaのGemini需要が飛び抜けて大きかったことを挙げている。
なお、GoogleとMetaはいずれもFTおよびCNBCのコメント要請に営業時間外で即答していない。Reutersも当初この報道を独自に確認できなかったとしており、情報源は「事情に詳しい複数の関係者」とされている。
Googleが抱えるインフラ逼迫の構造
GoogleのCEO Sundar Pichaiは、2025年第1四半期(3月末締め)の決算において、Google Cloudの売上が200億ドルに達したことを報告する一方で、「計算リソースの制約がさらなる成長を妨げ、クラウド部門のバックログが前四半期比でほぼ倍増する一因になった」と述べている。需要の増加がそのまま収益増に直結しにくい構造的な問題が顕在化している。
Gemini自体も直近で大きな変化があった。Google GeminiのCoリードを務めていたNoam Shazeerが6月にOpenAIへ移籍したことが報じられており、Googleの基盤モデル戦略を取り巻く環境は揺れ動いている。ShazeerはTransformer論文の共著者であり、GoogleのLLM研究を長年牽引してきた中心人物の一人だ。またGoogleを一度離れてAIチャットサービス「Character.AI」を共同創業した後に復帰した経緯もあり、Geminiのアーキテクチャ設計への関与は深い。その人物がOpenAIに移ったという事実は、単なる人事異動以上の意味合いを持つと見られている。
何がエンジニアに影響するか
MetaがGeminiを外部APIとして大規模に利用していること自体、同社がLLaMAなどの自社モデルと並行して他社モデルも積極的に活用していることを示す。今回の報道はMetaの社内AI開発のペースに直接影響を与えた事例として、外部LLMへの依存リスクを改めて浮き彫りにした形だ。
「AIトークンをより効率的に使うよう促された」という点は、エンジニアリング組織への実務的な波及効果としてわかりやすい。プロンプトの最適化やキャッシュ戦略、バッチ処理といった「トークン節約」の重要性が、巨大テック企業の現場でも課題になっていることを示している。自社でLLMを開発・運用しているMetaのような企業ですら外部モデルへの依存を余儀なくされている一方、その外部モデルへのアクセスも保証されないとなれば、AIインフラの冗長化や複数プロバイダー戦略の重要性はより高まっていくだろう。
詳細はGoogle limits Meta's use of its Gemini AI models, FT reportsを参照していただきたい。