6月29日、The Next Webが「China's AI funding surge mints a unicorn every 5 days」と題した記事を公開した。米国の対中AI規制が当初の狙いとは逆に中国のAI投資を加速させている可能性を、DeepSeekの大型調達やユニコーン誕生ペースの急増といったデータを軸に論じている。
DeepSeekが中国史上最大の資金調達——その引き金となったモデル
最もインパクトのある事実から始める。DeepSeekが74億ドル(約1.1兆円)の資金調達を完了した。中国スタートアップ史上最大の初回外部調達であり、バリュエーションは500億ドル超となった。
創業者の梁文鋒(Liang Wenfeng)氏はそれまでの3年間、外部資金を一切受け入れず自己資金だけで運営してきた人物だ。量子ファンドのトレーダー出身で、DeepSeekは元々その付属研究機関として設立された。その梁氏が外部調達へ踏み切った背景として、The Informationは米Anthropicの「Mythos」モデルの存在を挙げている。
Mythosは今年4月にAnthropicがプレビューを公開したモデルで、元記事ではソフトウェアのセキュリティ上の弱点を高度に分析できる能力を持つと説明されている。梁氏はそのレベルに対抗するためには「はるかに大きな計算資源とデータが必要」と判断し、外部調達を決断したと報じられている。
調達はDeepSeekが管理するパートナーシップ形式で行われ、5年間のロックアップ条項により梁氏の経営権は維持される。米国の輸出規制やモデル制限措置は中国を牽制する目的で設計されたものだが、元記事はその結果として中国最大のAIラボに過去最大の軍資金を積ませることになったと指摘している。
5日に1社ユニコーン誕生——中国全体でAI投資が加速
この現象はDeepSeekにとどまらない。調査機関Hurunが発表した「2026 Hurun Global Unicorn Index」によれば、中国のユニコーン企業(未上場で評価額10億ドル以上のスタートアップ)は現在381社に達し、1年間で38社増加した。新規誕生ペースは平均5日に1社と、昨年の倍速だ。ByteDanceは世界トップ3のスタートアップにランクインしている。
中国政府は国家戦略としてAI産業への支援を強化しており、DeepSeekのような企業はその象徴的存在として位置付けられている。AIスケール競争の「極」は事実上、米国と中国の二極構造になりつつある。
次の波はヒューマノイドロボット
最新の資金が集まっているのはヒューマノイドロボット分野だ。元記事によれば、今週だけで中国のロボットメーカー2社がユニコーン入りし、合計バリュエーションは29億ドル超になったとBloombergが報じた。
- AI² Robotics:約50億元(7億3600万ドル)を調達
- X Square Robot:アリババ、ByteDance、美団(Meituan)が出資し、連続ラウンドを実施。2社ともに評価額200億元超
ロボット分野全体では今年すでに少なくとも460億元を集め、昨年の年間実績を既に上回っている。参入企業数は140社以上。NvidiaのJensen Huang CEOが「Physical AI(フィジカルAI)」と呼ぶ領域——ロボットや自律システムが物理世界で動作するAI——に、中国資本が集中投下されている構図だ。
元記事が示す構造的な問題提起
記事の核心的な問いはシンプルだ。ワシントンが制裁を強化するたびに、中国側に「もっと投資する理由」が生まれているのではないか、という点だ。スタンフォード大学のAI Index 2026でも中国と米国の性能差は縮まりつつあると報告されており、規制の実効性をめぐる議論は研究者・政策立案者の間でも続いている。
元記事はこの問題を断定的に結論づけているわけではないが、データが示す傾向——制裁強化の時期とAI投資加速の時期が重なっている点——は注目に値すると論じている。米中AI競争の行方を読む上で、見落とせない視点といえる。
詳細はChina's AI funding surge mints a unicorn every 5 daysを参照していただきたい。