6月27日、How-To Geekが「Google's new AI Studio can build Android apps now, and the results are surprisingly functional」と題した記事を公開した。Google AI StudioのブラウザベースAndroidアプリ構築機能を使い、システムレベルの権限を要する本格的なアプリを実際にゼロから作り上げた体験レポートだ。「ブラウザだけでどこまでいけるか」という問いへの答えが、想定以上に前向きな内容になっている。
ブラウザだけでAndroidアプリが動くところまで行けるか
Google AI Studioが最近のアップデートで、ブラウザ上からAndroidアプリを生成・ビルド・エミュレータで実行できる機能を追加した。従来、Androidアプリ開発にはAndroid Studioのインストール、SDKのセットアップ、相応のマシンスペックが必要だった。それをテキストプロンプト一発でどこまで代替できるかを検証したのが本記事だ。
筆者が作ったのは「ScrollPill」というアプリ。SNSやYouTubeなど「ダラダラ使いがちなアプリ」の上に、カプセル型のフローティングウィジェットをオーバーレイ表示し、使用時間に応じて色が変化する(緑→黄→赤)というデジタルウェルネスツールだ。AndroidのSYSTEM_ALERT_WINDOW権限やUsageStatsManagerを使うシステムレベルの実装で、決して「Hello World」レベルではない。
なお、記事中で用いられている「バイブコーディング(vibe coding)」とは、2025年初頭にAI研究者のAndrej Karpathyが提唱した開発スタイルで、詳細な仕様をコードで書くのではなく、自然言語のプロンプトを通じてAIに実装を任せながらソフトウェアを作り上げる手法を指す。
プロンプトの作り込みが鍵
筆者が送ったプロンプトは相当な分量だ。技術スタックの指定(**100% Kotlin、Jetpack Compose、Material 3、Room Database**)から、フォアグラウンドサービスの実装方針、1.5秒ごとのフォアグラウンドアプリ監視ループ、バッテリー消費への配慮まで細かく記述している。UIの色コードも#2ECC71(緑)、#F1C40F(黄)、#E74C3C(赤)と明示し、ドラッグ可能なウィジェットや画面端へのスナップ動作まで仕様として含めた。
以下は元記事で公開されているプロンプトの冒頭部分(原文より引用):
## 1. Core Development Stack
* **Language:** 100% Kotlin
* **UI Framework:** Jetpack Compose (using Material 3 styling and a Single-Activity architecture)
* **Build System:** Gradle using Kotlin DSL (`build.gradle.kts`)
* **Local Data Persistence:** Room Database or encrypted DataStore
このレベルのプロンプトを書けるかどうかが、バイブコーディングの成否を左右する。「作って」だけでは無理で、技術的な文脈を正確に伝える能力が依然として必要だ。
AI Studioが実際にやってくれたこと
処理が完了すると、AI Studioはまず複数のモックアップデザインを提示し、筆者に選ばせた。その後、コード生成→ビルド→エミュレータ起動まで自動で行い、プレビュー画面で動作を確認できる状態になった。
実装された機能は以下の通り:
- アプリ一覧から「監視対象」をトグルで選択できるダッシュボード
- 警告ゾーン・危険ゾーンの時間閾値を調整できるスライダー(デフォルト:0〜5分が緑、5〜10分が黄、10分超が赤)
- 危険ゾーンに入らずにアプリを終了できた回数を記録する「Escape Streak」
- フローティングウィジェット本体(カプセル形状、ドラッグ可能、画面端でドット状に折りたたまれる)
コードはGitスタイルのdiffビューアで変更箇所を確認でき、プロンプトを追加するたびに変更サマリーも表示される。さらにGeminiがプロジェクトを分析して機能提案をしてくる点も興味深い。筆者の場合、「週次アナリティクス機能」を提案されたという。
なお、Google AI Studioは現時点で無料枠でも利用可能だが、利用量に応じたレート制限があり、大規模なコード生成を繰り返す場合は制限に当たる可能性がある。料金・制限の詳細はGoogle AI Studio の公式料金ページを参照されたい。
実機インストールは一筋縄ではいかない
アプリ自体はエミュレータで期待通りに動作した。YouTubeを開くと緑のピル型ウィジェットが表示され、設定した閾値で黄→赤に変化する動作も確認できた。
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実機へのインストールはUIの「Install」ボタンから案内が表示される。USBデバッグを有効化してPCと接続する方式だ。USBデバッグの有効化は、Androidの「開発者向けオプション」からおこなう。adb(Android Debug Bridge)の基本的な動作原理を知っていると、トラブル時の対処がスムーズだ。
実際、筆者はここでUSBインターフェースのブロックエラーに遭遇した。原因はバックグラウンドで動作していたadbプロセスで、タスクマネージャーで発見して終了させることで解決した。完全にノーコードで実機まで届けられるかというと、現時点では多少のトラブルシューティングは覚悟しておく必要がある。エミュレータ上での確認までは非常にスムーズだが、実機デプロイの最後の一歩は依然として手動対応が入る余地がある。
何がエンジニアにとって実用的か
今回の検証で見えてくるのは、「動くものを素早く試作する」用途においてAI Studioは十分機能するという点だ。Android Studioをインストールせず、Kotlinを書かずに、システム権限を要するフォアグラウンドサービス付きアプリが動いた事実は大きい。
一方で、プロンプトに詳細な技術仕様を書ける前提知識がないと品質が下がること、実機デプロイにはadbの基礎知識が役立つこと、バグ修正は追加プロンプトで対応できるが完全自動ではないことも確認されている。
「バイブコーディング」という言葉が一人歩きしがちだが、この事例を見る限り、技術的なコンテキストを持つ人間が道具として使うのが現実的な使い方だ。プロトタイプを素早く形にしてステークホルダーに見せたい場面や、アイデアの実現可能性を手早く検証したい場面では、今後の有力な選択肢になり得る。
詳細はGoogle's new AI Studio can build Android apps now, and the results are surprisingly functionalを参照していただきたい。