6月23日、David Rosenthalが「AI's Affordability Crisis」と題した記事を公開した。この記事では、AIプラットフォームが莫大な補助金で需要を作り上げてきた「ドラッグディーラー型ビジネスモデル」が限界を迎え、トークン課金への移行が企業に激震をもたらしている実態について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「最初の一発は無料」——AIプラットフォームの補助金モデルの崩壊
AIプラットフォームはこれまで、ユーザーを囲い込むために大規模な価格補助を行ってきた。Rosenthalはこれを「ドラッグディーラーのアルゴリズム」と表現する。まず無料同然で使わせて依存させ、後から高い価格を請求する戦略だ。
この問題を最初に指摘したのは、Sequoia CapitalのDavid Cahnで、2023年9月のAI's $200B Questionだった。わずか9ヶ月後の続編AI's $600B Questionでは、収益ギャップの推定額が3倍に膨らんでいた。
補助の規模感を示す具体的な数字がある。半導体アナリストのSemiAnalysisが実施したテストによると:
月額200ドルのAnthropicサブスクリプションで8,000ドル分のトークンを消費でき、OpenAIでは14,000ドル分消費できる。
これはサブスクリプション価格の40倍〜70倍に相当する補助だ。SemiAnalysisがさらに試算したところ、現行の補助水準では、ユーザーがレート制限のわずか25%を使っただけで粗利がマイナス25%以上になるという。
OpenAIの財務実態:売上13億ドルに対してコスト340億ドル
6月15日、独立系ジャーナリストのEd ZitronがOpenAIの2025年財務データを入手・公開した。数字は衝撃的だ:
- 売上:130.7億ドル
- 費用・コスト:340億ドル
- 損失:209.2億ドル(非営利から営利法人への転換に伴う会計処理を含めると純損失385億ドル)
中でも目を引くのが販売・マーケティングへの支出だ。売上の44%にあたる57.3億ドルをマーケティングに費やしている。これだけの出費にもかかわらず、企業向け採用は横ばいのままだ。
トークン課金への移行で「7倍ショック」
補助金垂れ流しのバーンレートに耐えられなくなったMicrosoft、OpenAI、Anthropicは、相次いでサブスクリプションからトークン課金(実際の使用量ベースの課金)へ移行し始めた。
Financial Timesが取材したある中小企業のCEOはこう語っている:
「Anthropicが5月にトークン課金に切り替えた途端、初日にコストが7倍になった。"やばい、モンスターを作ってしまった"と思った。ユーザーベースの定額料金は、どれだけ使っても守られていたんだ」
NvidiaのVP Bryan Catanzaroも「自分のチームでは、コンピュートのコストが従業員のコストをはるかに超えている」と発言しており、AIを売る側の企業幹部でさえコスト問題を認めている。4人チームでAnthropicに月113,000ドルを支払っている事例も報告されており、これは1人あたり月28,000ドルで、月給を上回る可能性が高い。
2024年のMIT研究では、77%のケースで人間が作業する方が望ましいという結果が出ている。
赤字の構造:AIが生き残るには米国の雇用の27%を奪う必要がある
Financial Timesがゼロコストを仮定した上で試算したハイパースケーラーのAI投資リターン(2025〜2030年)は以下の通り:
| 企業 | 推定リターン |
|---|---|
| Microsoft | -9.2% |
| Alphabet | -15.7% |
| Amazon | +7.2% |
| Meta | -28.8% |
| Oracle | -35.6% |
これはコストをゼロとした場合の数字だ。実際にはGPUの減価償却、電力代、人件費が加わる。
Will Lockettは、今後数年でAI業界が約3兆ドルの債務を積み上げると推定する。3%・10年で計算すると年間309億ドルの元利払いが必要になる。これを賄うには、平均年収66,000ドルの米国人労働者を約3,250万人分代替する必要がある——これは現在の米国就業者数の約27%に相当する。
「パニック」の現在進行形
直近の動きとして、OpenAIのSam Altmanはコストが顧客にとって「大きな問題」になっていると認め、「抜本的な値下げ」を検討していると報じられた。一方でAnthropicは、トークン課金への移行を一時「停止」したとArs Technicaが報告している。
補助金で作り上げた需要と、それを支えきれない財務の現実。このギャップが埋まる前にIPOが訪れようとしている。
詳細はAI's Affordability Crisisを参照していただきたい。