6月8日、Ed Zitron氏が「AI Is Slowing Down」と題した記事を公開した。
AI業界に衝撃的な計算結果が示された。現在建設中のデータセンターが投資回収するには年間1.75兆ドルの収益が必要だが、業界最大手のOpenAIとAnthropicの2029年予想収益合計はわずか3580億ドル。この5倍近いギャップが意味するのは、史上最大規模の技術バブル崩壊の可能性だ。
9.5兆〜15兆ドルのデータセンター建設ラッシュ
AI業界の狂騒ぶりを象徴する数字がある。Sightline Climateのデータによると、現在190GWのデータセンターが建設計画中だ。NVIDIAのJensen Huang CEOは「データセンターは1GWあたり800億〜1000億ドルかかる」と発言しており、総建設コストは9.5兆〜15兆ドルに達する計算になる。
この背景には、2022年末のChatGPT登場以降続く「AI軍拡競争」がある。各社がAI覇権を狙い、天文学的な投資を続けているのだ。しかし、ITバブル崩壊(2000年)やリーマンショック(2008年)の歴史を振り返れば、実需を大幅に上回るインフラ投資がどのような結末を迎えるかは明らかだろう。
Anthropicの3300億ドル、OpenAIの8520億ドルコミット
個別企業の数字も異常だ。Anthropicは、Google、Amazon、Microsoftに対して3300億ドルのコンピュート・チップコミットメントを行い、さらにCoreWeaveに300億ドル、SpaceXに150億ドルを追加コミットしている。
OpenAIはさらに巨額で、2030年末までに8520億ドルを消費すると予測され、Microsoft、Amazon、CoreWeave、Cerebras、Oracleに対して7700億ドル以上のコンピュートコミットメントを行っている。
問題は、これらの投資に見合う収益が見込めるかだ。
需要の70〜90%を占める2社だけで3580億ドル
最も深刻なのは需要と供給の圧倒的なミスマッチだ。190GWのデータセンター容量は、年間約1.75兆ドルの収益を生み出す必要がある。しかし現実は厳しい:
- OpenAIとAnthropicの2029年予想収益合計:3580億ドル
- 現在のAIコンピュート需要の**70〜90%**をこの2社が占有
- その他で数億ドル以上をAIに投資する企業は「Jane Street以外見つからない」状況
The Informationの報告では、OpenAIとAnthropicが全AIスタートアップ収益の89%を占めている。つまり、AI業界の命運は実質的にこの2社にかかっているのだ。
Oracle社に迫る3400億〜7000億ドルのリスク
特に危険な立場にあるのがOracleだ。同社はOpenAI向けに7.1GWのデータセンターを建設中で、コストは3400億〜7000億ドルに達する。Larry Ellison CEOは自社株を担保に210億ドルの融資を受けており、OpenAIの支払い能力に疑問が生じれば大規模なマージンコールに直面するリスクがある。
Microsoft AI CEOのMustafa Suleyman氏が「Anthropicのモデルは高すぎる」として使用をゼロに削減する意向を示したことも、需要の脆弱性を物語っている。
2028年第1四半期に月間100億ドル収益が必要
数学的に見ると、AnthropicとOpenAIは2028年第1四半期までに月間100億ドル以上の収益を上げる必要がある。両社は現在から2029年まで毎年約2倍の成長を続けなければならず、全AI企業の合計コンピュート需要も2030年までに10倍に成長する必要がある。
Zitron氏は「建設されているインフラとコミットメントが、生成AIとAIコンピュートが2030年までに年間2兆ドル以上の収益を生み出すことを要求するレベルで行われている」と警告している。現在の生成AIブームを「嘘つき、臆病者、愚か者、貪欲な煽り屋、そして騙されやすい人々によって永続化されたヒステリックな時代」と厳しく批判する背景には、こうした数学的現実がある。
詳細はAI Is Slowing Downを参照していただきたい。