6月6日、開発者が「Azure Linux "Desktop": A Build 2026 mashup of wslc, WinUI Reactor, and Azure Linux 4.0」と題した記事を公開した。
この記事では、Microsoft Build 2026で発表された4つの最新技術を組み合わせ、Windowsアプリ内でフル機能のLinuxデスクトップを動作させる実験的プロジェクトが紹介されている。最も注目すべきは、XAMLファイルを1つも使わずにWinUI 3アプリを構築し、ボタン一つでLinuxデスクトップが起動する点だ。
XAMLなしでWindowsアプリを構築
このプロジェクトの技術的ハイライトは、新しいWinUI Reactorフレームワークの使用だ。ReactorはWinUI 3インターフェースをコードファーストで構築する手法で、ReactのようにC#でUIを関数とステートフックとして記述できる。
このアプリには.xamlファイルが存在しない。タイトルバーからデスクトップサーフェスまで、すべてがApp.cs内のReactorファクトリで構築されている。これは、従来のXAMLとコードビハインドによるWPF/WinUI開発からの大きなパラダイムシフトを示している。
ReactorはReactの宣言的UI構築の思想をC#に持ち込んだもので、UIの状態管理がより直感的になると期待されている。
ワンクリックでLinuxデスクトップが起動
開発されたAzure Linux "Desktop"は、アプリ起動と同時に組み込みLinuxコンテナが数秒で立ち上がり、テーマ適用済みのXFCEデスクトップが表示される。セットアップは不要で、オーディオ、GPU加速、コピー&ペースト機能がすぐに動作する。
技術的には、コンテナ内でXRDPサーバー経由でXFCEを実行し、Windows RDPクライアントActiveXコントロールをWinUIウィンドウ内に配置している。ウィンドウサイズに合わせてLinuxディスプレイも自動リサイズされる。
Microsoft Build 2026の技術要素
このプロジェクトは以下4つの技術を組み合わせて実現されている:
1. wslc(新しいLinuxコンテナランタイム)
WindowsでOCIコンテナをネイティブ実行する新API。従来のWSLとは異なり、CLIとAPIの両方を提供し、プログラマティックなコンテナ操作が可能。
2. WinUI Reactor(XAMLレスUI構築)
React風の宣言的UIをC#で記述する新フレームワーク。XAMLファイルが不要になる。
3. Azure Linux 4.0
MicrosoftのLinuxディストリビューション。バージョン4.0はFedora Linux 43のスナップショットをベースとし、サーバー向けだがFedoraリポジトリを参照してデスクトップパッケージを追加可能。
4. .NET 10
ReadyToRunプリコンパイルによる高速コールドスタートと、x64/ARM64の単一コマンドビルドを実現。
技術的な工夫点
著者は興味深い技術的ハックも紹介している。WinUI内でのRDP制御では、WinUIツリー内の配置でDirectXプレゼンターが描画停止する問題があった。そこでWinFormsウィンドウとして実装し、準備完了まで画面外に配置してから貼り付ける手法を採用した。
また、コンテナ内でのSVGアイコン表示問題(bubblewrapサンドボックスとの非互換性)や、RDP経由オーディオのためのpipewire-module-xrdpカスタムビルドなど、実装者ならではの知見が共有されている。
開発の背景
このプロジェクトの背景には、Microsoftのクロスプラットフォーム戦略の進化がある。従来のWSLは仮想マシンベースだったが、wslcによるコンテナ化でより軽量で柔軟なLinux統合が可能になった。
また、ReactorによるXAMLレス開発は、Web開発者がデスクトップアプリ開発に参入しやすくする狙いがある。React経験者なら学習コストを抑えてWindowsアプリ開発に取り組める。
著者は「これは玩具だ」と前置きしているが、異なる技術要素の組み合わせで新しい可能性を探る実験として価値が高い。特にXAMLに依存しないWindowsアプリ開発の方向性は、今後のエコシステムに大きな影響を与える可能性がある。
詳細はAzure Linux "Desktop": A Build 2026 mashup of wslc, WinUI Reactor, and Azure Linux 4.0を参照していただきたい。