5月19日、Ed Zitron氏が「AI Is Too Expensive」と題した記事を公開した。この記事では、AI業界の経済的持続可能性の根本的問題について詳しく分析されている。
現在のAI業界で実際に利益を上げているのは建設会社、NVIDIA、そして周辺のハードウェア企業のみだという衝撃的な分析だ。ハイパースケーラー(Microsoft、Google、Amazon、Meta)は過去3年間で8000億ドル以上を投資したにも関わらず、これらの投資を回収するためには、AI特化の売上で最低でも3兆ドルが必要という現実が待ち受けている。
2024年のOpenAI、Anthropic等の資金調達ラッシュや、各社のAI投資発表が相次ぐ中、投資家や業界関係者の間では「AIバブル」への懸念が高まっている。特に2024年第4四半期以降、NVIDIAの株価変動やハイパースケーラーの決算発表でAI投資の持続可能性が問われる機会が増加しており、今回のZitron氏の分析は、これらの懸念を具体的な数字で裏付けるものとなっている。
Microsoftの投資実態が示すAIビジネスの現実
特に注目すべきは、Musk-OpenAI裁判で明らかになったMicrosoftの投資実態だ。同社幹部の証言により、MicrosoftはOpenAIとのパートナーシップに約1000億ドルを投じたことが判明した。
Microsoft全体の2023年度以降の設備投資総額2938億ドルのうち、約870億ドル(30%)がOpenAI関連のインフラ構築に使用されている。一方で、MicrosoftのAI関連収益は2025年度推定で約179億ドルに過ぎない。年間880億ドル以上の設備投資に対して、収益は180億ドル程度という構図だ。しかもこれは運営費用を含まない数字である。
Microsoft 365 Copilotの契約者数は2000万人に達しているが、全員が月30ドル支払ったとしても年間収益は72億ドルが上限となる。この数字からも、AI投資の回収がいかに困難かが分かる。
業界全体の収益構造の根本的問題
記事によると、すべてのAIスタートアップは年間数百万から数十億ドルの損失を計上しており、キャッシュフローの改善方法を見出せずにいる。The Informationの調査では、ハイパースケーラーの売上バックログの50%以上がこれらAI企業からのものだという。
各社の売上予約(RPO)の急激な増加は、実質的に以下の大型契約によるものだった:
- Microsoft:OpenAIとの2500億ドル契約とAnthropic社との300億ドル契約
- Amazon:OpenAIとの1000億ドル拡張契約
- Google:Anthropic社との2000億ドル契約
これらを除けば、実質的にRPOは横ばいという状況で、AI以外の分野での成長は見込めていない。さらに深刻なのは、Amazon、Google、MicrosoftのAIコンピュート能力の少なくとも70%がAnthropic社とOpenAI社専用に割り当てられていることだ。この2社は莫大な赤字を垂れ流しており、過去3年間で合計540億ドルの資金提供を受けている。
回収不可能な投資規模
記事は、AI投資が経済的に成立するためには以下の4つの条件すべてが満たされる必要があるとしている:
- AI収益の爆発的成長
- 設備投資の停止
- GPU運用の収益性確保(コストと運用債務を含む)
- AI収益の長期安定性
現実的な数字で見ると、仮にAnthropic社が主張する年間売上450億ドルが事実だとしても、これは運営費用ゼロと仮定した場合でさえ、Microsoft、Google、Meta、Amazonのいずれか1社の単年度設備投資すら回収できない規模だ。
さらにハイパースケーラーは2026年に約7000億ドル、2027年に1兆ドルの追加投資を計画している。この投資規模を考えると、AI業界全体で3兆ドル以上の収益が必要という計算になる。
持続不可能なビジネスモデル
記事は最終的に、現在のAI投資ブームが経済的に持続不可能であると結論づけている。建設会社とハードウェア企業以外にとって、AIは現時点で経済的に成立しない事業だというのがZitron氏の見解だ。
この分析は、2024年のAI投資ブーム以降、業界関係者の間で囁かれていた懸念を数字で裏付けるものとなっている。各社の決算発表や投資計画を評価する際の重要な視点を提供している。
詳細はAI Is Too Expensiveを参照していただきたい。