5月9日、著者が「I returned to AWS and was reminded hard why I left」と題した記事を公開した。
長年のAWS信者が一度離れた後に復帰テストを試みたところ、セキュリティ制限により業務用メールシステムが3日間停止し、サポート対応の遅さを痛感する結果となった。この体験は、2024年以降のクラウド業界で議論が活発化している「ベンダーロックイン問題」「マルチクラウド戦略」の重要性を実体験で示すケーススタディとして注目される。
AWSの黎明期から15年間の熱狂的支持者だった過去
著者はAWS黎明期からの熱狂的な支持者だった。Amazon SQS、S3、EC2、SimpleDBといった初期サービスが登場した2007年頃から使い始め、メルボルンで初のAWSイベントを開催するほどの熱の入れようだった。クラウドコンピューティングの革新性に完全に魅了され、「15年間、真の信者だった」と振り返る。
当時のクラウドコンピューティングは、物理サーバーの調達に数週間かかる時代からの大きな転換点だった。しかし近年、特に2020年以降のコロナ禍でクラウド需要が急増する中、料金の高騰やサポート品質への不満が業界全体で表面化している。
積み重なった不満の数々
恋愛関係と同じように、不満は少しずつ積み重なっていく。著者が挙げるAWSへの具体的な不満は以下の通りだ:
- クライアントライブラリを6年間もコミュニティ任せにしていた点
- Python 2からPython 3への移行が異常に遅い対応
- DynamoDBの使いづらさと高額な料金(1日で75ドルの請求)
- データ転送料金の法外な高さ(現在でもGB当たり9セント)
- 複雑で分かりにくい課金システムによるデータ移動の重複請求
- AWS IAMの複雑さを「ルシファーが地獄の九層目で発明した最悪の拷問」と酷評
- **AWS Lambda**については「独自のWebサーバーと比べて本当のメリットはない」と断言
特にデータ転送料金については、2023年後半からEUの規制当局も注目しており、クラウドプロバイダーの「出口料金(egress fees)」が競争阻害要因として問題視されている。
オープンソースコミュニティへの「略奪的行為」
最も深刻な批判は、AWSのオープンソースプロジェクトに対する姿勢だ。Elasticsearch、Redis、MongoDBといったプロジェクトが明確に反対しているにも関わらず、AWSはOpenSearch、Valkey、DocumentDBとしてクローンを作成し、収益化した。
AWS is a predator.(AWSは略奪者だ)
この結果、コミュニティ側はSSPL(Server Side Public License)、Elastic License、RSALといった防御的ライセンスを導入せざるを得なくなった。この問題は現在も進行中で、オープンソースコミュニティとクラウドプロバイダーの関係に大きな影を落としている。
復帰テストで遭遇したセキュリティ制限の悪夢
著者は一度AWSから完全に撤退したが、最近になって以下の目的で一時的に復帰を試みた:
- AWS BedrockでのClaude/Anthropicのテスト(結果:直接契約より遅くて高い)
- 192コア、1TB RAMマシンでのベンチマークテスト
しかし、ここで予想外のトラブルが発生する。3時間ほどテストを実行していたところ、AWSから「アカウントのセキュリティ侵害の疑い」メールが届き、アカウントが制限された。
長期間休眠状態だったアカウントで突然高額なインスタンスを使い始めたことが、AWSの自動セキュリティシステムでアラートを引き起こしたと推測される。著者もこの仕組み自体は理解を示すが、問題はその後の対応だった。
サポート対応の現実:3日間のメール停止
アカウント制限により、深刻な業務影響が発生した:
- AWS WorkMail(メインの業務用メール)が停止
- 新しいAWSリソースの作成が不可能
- テスト作業の完全停止
著者は即座にサポートに連絡したが、以下の対応状況となった:
- プレミアムサポート未契約のため24時間待ちと告知されるも、3日経っても返信なし
- AWSフォーラムに投稿し、アドバイス通りにチャット機能を使用
- 30分待ちでようやくサポート担当者と接続、パスワード変更やアクセストークン削除などを実行
- 担当者は満足した様子で内部チームに依頼すると回答するも、それから24時間経っても解決せず
記事執筆時点で制限から4日が経過しており、業務用メールシステムは依然として機能していない。
完全移行への決意を新たに
この体験により、著者は自分がAWSを離れた理由を改めて実感することになった。
I am reminded why I left AWS and how I need to finish the job(なぜAWSを離れたのかを思い出し、完全に移行を完了させる必要性を感じた)
現在も残しているRoute 53のドメイン管理とAWS WorkMailからも完全に移行する決意を新たにしている。
この記事は、大手クラウドプロバイダーの便利さの裏にある複雑性とリスクを、実体験を通じて赤裸々に描いた貴重な証言である。特にセキュリティ制限によるビジネス影響の深刻さは、現在多くの企業が検討している「マルチクラウド戦略」や「ベンダー多様化」の重要性を改めて示している。
詳細はI returned to AWS and was reminded hard why I leftを参照していただきたい。