5月9日、Roy Schestowitz氏が「Techrights — Over 97% of the 'Linux' Foundation's Budget Goes Not to Linux」と題した記事を公開した。
Linux Foundation(LF)の最新年次報告書を分析した結果、同組織の予算の97%以上がLinux以外の用途に使われているとの指摘がなされた。さらに、Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏は、組織内の最高給取り役員のトップ10にも入っていないという。
予算配分の分析結果
Schestowitz氏の分析によると、Linux Foundationの年次報告書から、2025年に予測される3億1000万ドル以上の収益のうち、**Linuxカーネル開発に充てられるのは約2.95%**に過ぎないという。この数字は報告書の58ページと20ページの情報を組み合わせて算出されたものだ。
残りの97%以上の予算は、クラウド関連プロジェクト、AI関連プロジェクト、その他のオープンソースプロジェクトなど、Linux以外の用途に配分されている。記事では、この現象を「ミッション・クリープ(使命の拡散)」と表現し、多くのプロジェクトが「オープン」「クラウド」「AI」といったバズワードで包装されていると指摘している。
Torvalds氏の組織内での立場
Linuxの創始者であるLinus Torvalds氏について、記事は以下の点を指摘している:
- 組織の運営統制権を持っていない
- 報酬ランキングのトップ10に入っていない
- 最高給取りの役員たちは実際にはLinuxを日常的に使用していない
これらの指摘は、Linux Foundation内でのLinux開発コミュニティの地位について疑問を提起している。
Linux Foundationの変遷と現状
Linux Foundationは2000年に設立された非営利組織で、当初はLinuxカーネルの開発支援を主目的としていた。しかし近年は活動範囲を大幅に拡大し、現在では数百のプロジェクトをホストしている:
- クラウドネイティブ分野: Kubernetes、Prometheus
- ブロックチェーン分野: Hyperledger
- Web技術: Node.js
- AI・機械学習: LF AI & Data Foundation
同組織は企業スポンサーシップによって運営されており、プレミアムメンバーにはIBM、Intel、Microsoft、Google、Meta、Samsungなどの大手テック企業が名を連ねている。年会費は最高レベルで50万ドルに達する。
組織運営の透明性に関する課題
「Linux Foundation」という名称を冠しながら、実際のLinux開発への予算配分が3%未満という分析結果は、組織の透明性と使命に対する疑問を投げかけている。記事では、この問題の構造的な課題として、linuxmark.org(Linux商標管理サイト)がLinux Foundation自体にリンクしており、商標権の管理主体と予算配分の決定主体が同一組織にあることを指摘している。
オープンソースコミュニティからは、この状況に対する様々な意見が出ているが、Linux Foundationからの公式な反応はまだ確認されていない。
業界全体への示唆
この予算配分の実態は、オープンソース業界全体の資金配分や組織運営のあり方について重要な議論を呼ぶものと考えられる。特に、企業スポンサーシップに依存する他のオープンソース財団(Apache Software Foundation、Eclipse Foundationなど)にとっても、使命の明確化と透明性の確保が重要な課題として浮上する可能性がある。
なお、今回の分析は一つの視点であり、Linux Foundationの活動が間接的にLinuxエコシステム全体に貢献している側面も考慮する必要があることを付け加えておく。
詳細はTechrights — Over 97% of the 'Linux' Foundation's Budget Goes Not to Linuxを参照していただきたい。