2月18日、Slackが「Announcing the Slack MCP server and Real-time Search API」と題した記事を公開した。この記事では、AIエージェントがSlack内のデータや機能へシームレスにアクセスすることを可能にするSlack MCPサーバーの提供開始について詳しく紹介されている。
以下に、その内容を紹介する。
外部ツール連携の標準規格「MCP」の採用
Model Context Protocol (MCP) は、Anthropic社が提唱したオープン標準であり、AIモデルが外部のデータソースやツールとやり取りする際のインターフェースを共通化するものだ。
これまで、AIにSlackの情報を読み書きさせるには、個別にSlack APIを呼び出すロジックを実装し、プロンプト内でその使い方を説明する必要があった。Slackが公式にMCPサーバーを提供したことで、MCP対応のクライアント(Claude, Cursor, IDEなど)は、共通のプロトコルを通じて即座にSlackの検索やメッセージ送信といった「ツール」を認識し、利用できるようになる。
Slack MCPサーバーで利用可能な機能
公式に提供されるMCPサーバーを介して、AIはワークスペース内の以下の要素を操作できる。
- メッセージとファイルの検索: 日付、ユーザー、コンテンツタイプによるフィルタリング。
- チャンネルとユーザー情報の取得: 公開・非公開チャンネルのメタデータ、および詳細なユーザープロファイルへのアクセス。
- 会話の読み書き: スレッドを含むメッセージ履歴の取得、メッセージの新規投稿、さらにはAIクライアント内でのメッセージ下書き作成。
- Canvasの管理: Canvasの作成、更新、およびMarkdown形式での読み取り。
実装例:LLMにSlackツールをバインドする
開発者は、LLMのAPIリクエスト時にSlack MCPサーバーのエンドポイントをツールとして定義するだけで、AIにSlack操作能力を統合できる。
以下は、OpenAI SDKを使用した実装イメージである。
const llmResponse = await openai.responses.create({
model: 'gpt-4o-mini',
input: `User: #tech-news チャンネルの過去1週間分の投稿から、特に反響の大きかった技術トピックを3つ選んで、要約をCanvasに作成して。`,
tools: [
{
type: 'mcp',
server_label: 'slack',
server_url: 'https://mcp.slack.com/mcp',
headers: {
Authorization: `Bearer ${context.userToken}`, // 実行ユーザーの権限を委譲
},
require_approval: 'never',
},
],
stream: true,
});
動作の仕組み
このコードを実行すると、AIはユーザーの依頼を解決するために「メッセージ検索(search_messages)」や「Canvas作成(create_canvas)」といったMCPツールが必要だと判断する。AIは自身の推論プロセスの中で自律的にこれらのツールを呼び出し、取得したコンテキストに基づいた実行結果をSlackへフィードバックする。
まとめ:MCPサーバーの活用で広がる可能性
SlackがMCPに対応したことで、エンジニアはAPIの「繋ぎ込み」という非本質的な作業から解放され、AIによるワークフローの自動化をより抽象度の高いレベルで構築できるようになった。今後、以下のようなユースケースが容易に実現可能になるだろう。
- デイリーレポートの完全自動化: 毎日決まった時間に、特定チャンネルの議論をAIが巡回。重要事項や決定事項を抽出し、サマリーを自動的にCanvasへまとめて共有する。
- コンテキスト重視のオンボーディング: 新入社員がAIに質問すると、AIが過去のスレッドやCanvasから関連ドキュメントを検索。社内ルールや過去の経緯を網羅した回答を提示する。
- 開発フローの高度な統合: AIがGitHubなどの他サービスと連携しつつ、進捗状況をSlackの適切なスレッドへ自律的に報告、あるいは必要に応じてエンジニアのCanvasにリリースノートのドラフトを作成する。
SlackがMCPという共通言語を得たことは、ワークスペースを単なるコミュニケーションの場から、AIエージェントが自律的に業務をサポートするアクティブな環境へと変貌させる大きな一歩と言える。
詳細はAnnouncing the Slack MCP server and Real-time Search APIを参照していただきたい。