1月27日、The Registerが「When AI 'builds a browser,' check the repo before believing the hype」と題した記事を公開した。この記事では、CursorがAIエージェントのみでウェブブラウザを構築したと主張するプロジェクトに対し、エンジニア視点から次々と投げかけられた「ツッコミ」の実態について詳しく紹介されている。

以下に、その内容を紹介する。
プロジェクトの概要と主張
Cursorを運営するAnysphere社のCEO、Michael Truell氏は、GPT-5.2を用いて同社IDE内でブラウザを構築したと発表した。同社の公式ブログによれば、1,000名規模のAIエージェントを1週間にわたって稼働させ、300万行を超えるコードを生成したという。
開発者たちが即検証
ソースコードがGitHubで公開されるやいなや、期待を寄せていたエンジニアたちはその内容に困惑することとなった。主なツッコミポイントは以下の通りだ。
- 「そもそもビルドが通らない」という基本への疑念: 多くの開発者がリポジトリをクローンしたが、最新のコミットすら正常にコンパイルできない状態であった。GitHub ActionsのCIも失敗し続けており、プロの開発現場であれば「リリース」と呼べる段階にないことが露呈した。
- 「スクラッチ開発」への疑念: 「ゼロから構築した」と謳いながら、実際には既存のウェブエンジン「Servo」や「QuickJS」に大きく依存していた。Cursor側は「自作の既存パーサーを流用した」と弁明しているが、これはAIによる純粋な新規生成とは言い難い。
- 「スパゲッティコード」という酷評: ServoのメンテナーであるGregory Terzian氏は、コードの品質を「スパゲッティの絡まり」と表現した。同氏は、既存の設計を正しく継承しているわけでもなく、「現実世界のウェブエンジンを到底支えられない、独自に劣悪な設計」であると断じ、非常に手厳しい評価(Burn)を下している。
- 非実用的なパフォーマンス: 苦労してビルドを通した開発者からは、単純なページの読み込みに1分近くかかるという報告が上がっており、実用性との乖離がツッコミの対象となっている。
費やされたコスト:1週間で数億円(推定)
この実験の背後にある「桁外れなコスト」も大きな話題となった。AIチャットボット「Perplexity」の試算に基づくと、そのリソース消費量は凄まじい。
- 消費トークン数: 約10兆〜20兆トークン。
- 推定費用: 当時のモデル価格で数百万ドル(日本円で数億円規模)。
「数億円を投じて1週間AIを回し続けた結果が、ビルドすら通らないスパゲッティコードなのか」という、コスト対効果に対する冷ややかな視線も集まっている。
マーケティングが先走った?
Cursorは補完ツールとしては優秀だが、今回の「AIがブラウザまるごと作った」という発表は、実態以上にマーケティングが先行してしまった事例といえる。「CIの通過」「再現可能なビルド」といった、開発の基本を置き去りにしたデモンストレーションは、開発者コミュニティからの信頼を逆に損なう結果となった可能性がある。
詳細はWhen AI 'builds a browser,' check the repo before believing the hypeを参照していただきたい。