1月13日、jsdev.spaceが「Meet Ripple: The Elegant TypeScript UI Framework」と題した記事を公開した。この記事では、コンパイラファーストのTypeScript UIフレームワークである「Ripple」について詳しく紹介されている。
以下に、その内容を紹介する。
2026年のフロントエンドにおけるRippleの重要性
フロントエンド開発は現在、大きな転換点を迎えている。AIによるコード生成が加速した一方で、コードの品質維持やレビューの負担といった「メンテナンス性」の課題が浮き彫りになった。ReactのHooks開発に携わり、Svelte 5のコアメンテナも務めたDominic Gannaway氏は、既存フレームワークが抱える冗長な状態管理や仮想DOMのオーバーヘッドが、人間のみならずAIにとっても認知負荷になっていると指摘する。
Rippleは、こうした背景から「AI時代のエンジニアリング」に最適化して設計された。
Rippleの主要な特徴
Rippleは、細粒度のリアクティビティ(Fine-grained Reactivity)を備えたコンパイラファーストのフレームワークである。
- TypeScriptファースト: 型安全性を前提とした設計。
- 直感的なリアクティビティ: track() と @ シンボルによる簡潔な状態操作。
- 仮想DOMの撤廃: SvelteやSolidJSと同様、コンパイル時にDOM更新ロジックを生成し、実行時のオーバーヘッドを最小化。
- 自動依存関係トラッキング: 開発者が手動で依存配列(dependency array)を管理する必要がない。
- AI親和性: 冗長なボイラープレートを排除したことで、LLMがより正確にコードを生成・理解できる。
Rippleの概要と設計思想
Rippleは、仮想DOMを必要としない、細粒度のリアクティビティ(Fine-grained Reactivity)を備えたコンパイラ主導型フレームワークである。その設計目標は以下の4点に集約される。
1. 実行時よりコンパイルを優先
コンパイラがDOMの依存関係分析やスコープ付きCSSの最適化を事前に行うことで、実行時の処理を極限まで削ぎ落とす。
2. デフォルトでのリアクティビティ
useState や ref()、複雑なSignalsといった概念を排除し、直感的な記述を実現している。
let count = track(0);
<button onClick={() => @count++}>{@count}</button>
track() で定義し、@ でアクセスするこの構文は、ボイラープレートを最小化し、AIによる正確なコード生成を容易にする。
3. 低い認知負荷
学習すべきプリミティブを絞り込み、ビジネスロジックを明白に保つ。
4. 細粒度なDOM更新
コンポーネント全体を再レンダリングするのではなく、更新が必要な特定のノードのみを直接操作する。
コア構文と実装例
Rippleは独自拡張子 .ripple を採用しており、JavaScriptの標準的な制御フロー(if や for)をテンプレート内で直接「文(Statement)」として記述できる点が特徴だ。
実装デモ:Todoリスト(Appコンポーネント)
Rippleの生産性と可読性の高さを示すため、原文で紹介されているTodoアプリのコードサンプルを紹介する。
1. TodoInput コンポーネント
入力状態を管理し、新しいタスクを追加するためのコンポーネント。
import { track } from "ripple";
component TodoInput({ onAdd }) {
// リアクティブな入力値を定義
let text = track("");
function submit() {
const v = @text.trim();
if (v) {
onAdd(v); // 親コンポーネントに通知
@text = ""; // 入力欄をクリア
}
}
<div class="input">
<input
placeholder="Add a task..."
value={@text}
onInput={(e) => @text = e.target.value}
onKeyDown={(e) => { if (e.key === "Enter") submit(); }}
/>
<button onClick={submit}>{"Add"}</button>
</div>
}
2. TodoItem コンポーネント
個別のタスクを表示し、完了チェックや削除を行うコンポーネント。
component TodoItem({ todo, onToggle, onDelete }) {
<li>
{/* チェックボックスの状態を反映 */}
<input type="checkbox" checked={todo.completed} onChange={onToggle} />
{/* 完了済みの場合はCSSクラスを適用 */}
<span class={todo.completed ? "done" : ""}>{todo.text}</span>
<button onClick={onDelete}>{"×"}</button>
</li>
}
3. App コンポーネント
アプリケーション全体の状態を統括するルートコンポーネント。
export component App() {
// リアクティブな配列(コレクション)を定義
const todos = #[];
function add(text) {
// リアクティブなオブジェクトを配列に追加
todos.push(#{ id: Date.now(), text, completed: false });
}
function toggle(t) {
t.completed = !t.completed; // 状態反転
}
function remove(id) {
const idx = todos.findIndex(t => t.id === id);
if (idx >= 0) todos.splice(idx, 1);
}
// 残りタスク数を計算(自動的にリアクティブに更新)
const remaining = () => todos.filter(t => !t.completed).length;
<div class="app">
<h1>{"Todo List"}</h1>
<TodoInput onAdd={add} />
<ul>
{/* JavaScript標準のfor文をインラインで記述可能 */}
for (const t of todos) {
<TodoItem
todo={t}
onToggle={() => toggle(t)}
onDelete={() => remove(t.id)}
/>
}
</ul>
<p>{todos.length}{" total / "}{remaining()}{" remaining"}</p>
</div>
}
フレームワーク比較
Rippleは、先行する主要フレームワークの「良いとこ取り」を狙った設計となっている。
| 機能 | Ripple | React | Vue 3 | Svelte |
|---|---|---|---|---|
| 状態モデル | track() + @ | Hooks | ref() / reactive | Stores |
| DOM更新 | 細粒度(直接) | 仮想DOM差分 | 仮想DOM差分 | コンパイル |
| ボイラープレート | 極小 | 多い | 中程度 | 少ない |
| AI親和性 | 極めて高い | 中程度 | 中程度 | 高い |
| ランタイム | 小 | 大 | 中 | 極小 |
結論
Rippleは、単なる新しいUIライブラリではない。ReactがJSXを、Svelteがコンパイルを一般化させたように、Rippleは「リアクティビティの自動化と簡素化」を次の標準にしようとしている。
レジェンド級のエンジニアによって設計されたこのフレームワークは、特に保守性とパフォーマンスの両立を求めるプロフェッショナルな現場において、重要な選択肢となる可能性を秘めている。AIがコードを書き、人間がそれをレビューする2026年以降の開発フローにおいて、このシンプルな構文とコンパイラ主導のアプローチは強力な武器となるだろう。
詳細はMeet Ripple: The Elegant TypeScript UI Frameworkを参照していただきたい。