12月16日、海外のテクノロジーメディアPhoronixが「GCC Developers Considering Whether To Accept AI/LLM-Generated Patches」と題した記事を公開した。この記事では、AI/LLM が生成したパッチを GCC が受け入れるべきかどうかという方針策定の必要性について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。

AI生成パッチを巡る新たな論点
GCC(GNU Compiler Collection)の開発コミュニティでは、AI/LLM によって生成されたパッチを受け入れるかどうか、明確な方針を定める必要性が急浮上している。現在の GCC には、この種のパッチを許可するか否かを定めたルールが存在していない。
問題の発端は、あるユーザーが GCC 16 のリグレッション(後退バグ)を修正しようとしたバグ報告だった。そこには、GPT-5-CodeX によって生成された 123 行に及ぶ修正パッチが添付されており、その投稿者は Intel のエンジニアであるとされる。
記事には、GCC Bugzilla に投稿されたパッチに添えられた次のコメントが引用されている。
“Fixed provided by GPT-5-CodeX fix the ICE for me.”
この投稿がきっかけとなり、GCC 開発者らは AI 生成パッチの扱いについて議論を始めた。
メーリングリストで始まった方針論議
GCC の開発メーリングリストでは、当該パッチを受け入れるべきかどうかを巡って議論が行われている。さらに、この議論の参考として、GNU Binutils および Glibc プロジェクトで採用されているポリシーが提示されている。
記事では、Binutils の LLM コンテンツに関するポリシーへのリンクが紹介されている。
同ポリシーでは、著作権上の懸念から LLM が生成したパッチそのものを受け入れない 方針が示されている。一方で、LLM を利用した発想補助や参考作業については、法的に問題のない範囲で、かつ明示的な使用の開示を条件として許容する姿勢をとっている。
GCC コミュニティ内でも、現時点では LLM による完全なパッチをそのまま受け入れるべきだとする意見は出ていない。特に今回のような 100 行を超える大規模パッチは、慎重に扱うべきだという見解が多い。
今後の判断は Steering Committee に委ねられる可能性
最終的な方針決定は、GCC Steering Committee が担うことになる見込みだ。議論の初期段階を見る限り、近い将来に AI 生成パッチが正式に受け入れられる可能性は低いとみられる。
状況次第では、Binutils で採用されているような「AI 生成パッチの直接の受け入れは不可」という方針を GCC も採用する流れになる可能性がある。
詳細はGCC Developers Considering Whether To Accept AI/LLM-Generated Patchesを参照していただきたい。