11月17日、「Perplexityは失敗した最初のAIユニコーンとなるのか?(Is Perplexity the first AI unicorn to fail?)」と題したブログ記事が公開され、海外で話題を呼んでいる。この記事では、生成AI検索で急成長したPerplexity AIの持続可能性と失敗リスクについて詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。

投資家の空気感が映す「逆張り」予想
サンフランシスコのAIカンファレンスで「『逆張り』するならどのユニコーンですか?」と問われ、創業者・投資家300人超の票がPerplexityに集まったという。OpenAIにも次点で票が入ったが、より示唆的なのはPerplexityに対する評価であり、AI市場が急速に変化していることを表している。
200億ドルバリュエーションの重さ
Perplexityは2022年に創業され、2025年9月時点で月間7.8億クエリ、3,000万超のアクティブユーザーに達し、評価額は200億ドルまで跳ね上がったとされる。一方で調達総額は約15億ドルに及び、18か月で5億ドルから200億ドルへとバリュエーションが急騰、ほぼ隔月で資金調達を重ねるペースは、成長の裏付けなのか、もしくはビジネスモデル確立への焦りなのかという疑念を招く。
先行優位の蒸発
同社は「リアルタイムのWeb情報を統合するAI検索」の先行者として優位を築いたが、その優位は想定以上に早く失われたという。ChatGPTは2025年2月以降、広範なWeb検索機能を一般提供し、さらにOpenAIはAI検索統合ブラウザ「ChatGPT Atlas」を投入した。これはPerplexityの独自ブラウザ「Comet」と真正面から競合する。記事は、Perplexityが「基盤モデルの上に被せるラッパー」に近づいており、差別化が難しくなっていると論じる。
ユーザー獲得コストの問題
テックにおいて配布(ディストリビューション)は最重要KPIである。OpenAIは既に数億人規模の利用者基盤を持ち、検索は既存習慣への“機能追加”に過ぎない。Googleはさらに圧倒的で、ChromeやAndroidという日次・端末レベルの配布経路を持つ。これに対しPerplexityは1ユーザーずつ獲得し続けるしかなく、資金消費が膨らむ。PerplexityがGoogle Chromeを345億ドルで買収しようとした(が失敗に終わった)のも、同社がディストリビューションに大きな課題を抱えているからではないか、と推測される。
インド戦略は「虚栄の指標」か
2025年7月、Perplexityはインドの大手通信Bharti Airtelと提携し、年額₹17,000のProを3.6億人に1年間無償提供すると発表した。数字上は壮大な配布に見えるが、記事はこれを「虚栄の指標(vanity metrics)」の典型と断じる。インド市場は価格に極めて敏感で、NetflixやAmazonでさえ価格設定に苦戦する。仮に10%の利用登録(3,600万人)があっても、無償期間終了後の有料転換率は低く、2026年に無料トライアルが切れれば大半は無料のChatGPTやGoogleへ戻る、という見立てである。つまり、見栄えのよい利用者数が、単に次の資金調達用の“数字作り”に終わる危険を指摘する。
モデルを「持つ者」と「借りる者」
OpenAI(GPT-4oやo3)やGoogle(Gemini 2.5など)は基盤モデルを自社で所有し、学習から推論、改良のサイクルまで統制できる。対してPerplexityは他社モデルに依存しており、イノベーションの更新速度やコスト構造、機能差で常に後手に回る構図だとする。中核技術を“賃借”している限り、持続的な競争優位ではなく、期限付きの裁定機会に過ぎない—というのが記事の論点である。
総括— 先行者の役割は終わったのか
筆者は、Perplexityに対する“最初に失敗するAIユニコーン”という見立ては悲観ではなく現実主義だと結ぶ。市場の存在を証明した功績はあるが、巨人が本気を出した後に守り切る資源がない。ChatGPTの検索品質は十分で、Googleはプロダクト中枢にAIを統合済み。両社はより深い技術、広い配布、強いブランド、持続可能なビジネスを備える。対照的にPerplexityの200億ドル評価は脆弱な基盤に乗っていると断ずる。インド提携は決定打ではなく、むしろ有料転換の難しさを露呈する賭けであり、AIバブルがしぼむ局面では、虚栄指標とプロダクト基盤が脆弱な“ラッパー”が真っ先に淘汰されるのではないか、という警鐘である。
詳細はIs Perplexity the first AI unicorn to fail?を参照していただきたい。