10月22日、OpenAIがChatGPTを中核に据えた新しいウェブブラウザ「「ChatGPT Atlas」」をリリースした。
ChatGPTを中核に据えた新しいウェブ体験「Atlas」
OpenAIは、ChatGPTをブラウザそのものに統合した新製品「ChatGPT Atlas」を発表した。Atlasは、ウェブ上での作業・ツール・文脈をすべてひとつの場所にまとめ、ユーザーの目的達成を支援する“スーパーアシスタント”の実現を目指すものである。
これまでChatGPTに「検索機能」が追加され、最新情報を取得できるようになったが、Atlasはさらにその先を行く。ユーザーが閲覧中のページにChatGPTが寄り添い、内容を理解し、コピー&ペーストなしで直接支援する。チャット履歴や過去の会話内容も組み込まれており、より文脈に沿った支援が可能となる。
大学生で早期テスターのYogya Kalra氏は、「これまで講義中にスライドとChatGPTを行き来していたが、Atlasでは今見ている資料をそのまま理解してくれる」と語っている。
メモリ機能とユーザーコントロール
Atlasには「ブラウザメモリ」が搭載されており、ユーザーが訪問したサイトや文脈を記憶し、再利用できる。たとえば「先週見ていた求人情報をまとめて、業界動向を整理して」といった質問が可能だ。
ただし、これらのメモリは完全にオプションであり、ユーザーが自由に管理・削除できる。設定からメモリの閲覧やアーカイブが可能で、閲覧履歴を消すと関連するメモリも自動的に削除される。
また、アドレスバーの切り替えトグルを使えば、特定サイトでChatGPTの閲覧を許可または禁止できる。「ページの閲覧が許可されていない」状態では、ChatGPTはそのサイト内容を見られず、メモリも作成されない。
なお、既定ではブラウジング中の内容はモデルのトレーニングには使用されない。ユーザーが明示的に「ウェブブラウジングを含める」設定を有効化した場合のみ、トレーニングに利用される。
エージェントモードによる自動実行
Atlasでは、ChatGPTがブラウジング中にユーザーの代わりに行動する「エージェントモード」が搭載されている。これは以前発表されたChatGPT agentをベースに、ブラウザ内でより高速かつ自然に動作するよう改良されたものだ。
例えば、夕食会を企画している場合、レシピを入力するとChatGPTが近くの食料品店を探し、材料をカートに追加して注文まで行う。仕事の場面では、過去のチーム文書を読み込み、新しい競合調査を行い、要約レポートを作成することもできる。
質問に対してChatGPTが「タブを開いて実行してよいか」と確認する形で動作するほか、エージェントモードボタンから手動で起動することも可能だ。
この機能は現在、Plus、Pro、Businessユーザー向けにプレビューとして提供されている。
セーフティ設計とリスク対策
Atlasの開発にあたり、OpenAIはエージェント機能の安全性を重視している。ユーザーがログイン済みサイトや機密情報にアクセスする場合、次のような制限が設けられている。
- ブラウザ上でコードを実行・拡張機能をインストールすることはできない
- コンピュータ上の他アプリやファイルシステムにはアクセスできない
- 金融機関など特定サイトでは、操作を一時停止してユーザー確認を求める
- ログアウトモードで利用することで、エージェントの権限を制限できる
ただし、エージェントには依然としてリスクが伴う。たとえば、Webページやメール内に埋め込まれた「悪意ある隠し指示」により、意図しない操作やデータ流出を引き起こす可能性がある。OpenAIはChatGPT agent system cardでこれらの対策を公開しており、レッドチームによるテストと迅速なパッチ適用体制を整えている。
利用可能範囲と今後の展望
ChatGPT Atlasは本日よりmacOS向けに世界同時リリースされた。Free、Plus、Pro、Goユーザーが利用可能で、Businessプランではベータ版が提供されている。Enterpriseおよび教育機関向け(Edu)ユーザーも、管理者が有効化すれば利用できる。Windows、iOS、Android版も今後提供予定である。
初回起動時には、既存ブラウザからブックマーク、パスワード、閲覧履歴をインポートでき、すぐに使用を開始できる。
今後はマルチプロファイル対応、開発者ツールの改善、そしてApps SDK開発者が自分のアプリをAtlas内で発見されやすくする仕組みなどがロードマップに含まれている。また、ウェブサイト運営者はARIAタグを活用することで、Atlas内でのChatGPTエージェントの動作を最適化できる。
ChatGPT Atlasは、ユーザーがウェブ上で「調べる」「まとめる」「行動する」といった一連のタスクを統合的にこなせる新しいブラウジング体験を提案している。OpenAIは、これを“エージェント的ウェブ利用”への第一歩と位置づけている。
詳細はIntroducing ChatGPT Atlasを参照していただきたい。