10月8日、Python 3.14.0がリリースされた。この記事では、Python 3.14の正式リリースと、その主要な新機能や変更点について詳しく紹介する。
Python 3.14が正式リリース
Python 3.14.0は、プログラミング言語Pythonの最新メジャーリリースであり、3.13系から多くの新機能と最適化が加えられた安定版である。公式サイト(python.org/downloads/release/python-3140)からダウンロード可能だ。

主な新機能
Python 3.14では、多くのPEP(Python Enhancement Proposal)に基づいた新機能が導入された。主な変更点は以下の通りである。
PEP 779: Free-threaded Pythonの正式サポート
スレッドごとにGIL(Global Interpreter Lock)を共有しないFree-threadedモードが正式にサポートされた。これにより、マルチスレッド処理での性能が向上する。PEP 649: アノテーション評価の遅延
アノテーションの評価が遅延されるようになり、型ヒントを利用する際の柔軟性が向上した。PEP 750: Template String Literals(t-strings)
f-stringと同様の構文を利用し、カスタム文字列処理を柔軟に行えるt-stringが追加された。PEP 734: 標準ライブラリでの複数インタプリタサポート
標準ライブラリ内で複数のPythonインタプリタを扱えるようになり、より安全な並列実行が可能になった。PEP 784: Zstandard圧縮アルゴリズムの標準対応
新しいcompression.zstd
モジュールが追加され、Zstandard圧縮形式を標準で利用できるようになった。PEP 758: except式の括弧省略
except
およびexcept*
式で括弧の省略が可能になり、例外処理コードの記述が簡潔になった。Syntax highlighting in PyREPL
対話環境(REPL)にシンタックスハイライトが追加され、unittest
・argparse
・json
・calendar
の各CLIでカラー出力がサポートされた。PEP 768: 外部デバッガー向けインターフェース
オーバーヘッドなしでCPythonに外部デバッガーを接続できる新しいインターフェースが追加された。UUID versions 6–8: UUIDモジュールの強化
UUIDのバージョン6〜8をサポートし、従来の3〜5の生成速度も最大40%高速化された。PEP 765: finallyブロック内の制御構文制限
return
、break
、continue
でfinally
ブロックを抜けることが禁止された。PEP 741: 改良されたC API構成
Pythonの設定を細かく制御できる新しいC APIが導入された。新しいTail Call Interpreter
一部の新しいコンパイラではパフォーマンスを大幅に改善できる新しいインタプリタを試験的に利用可能。現時点ではソースビルドが必要。Improved error messages
エラーメッセージの内容がより明確かつ詳細になり、トラブルシューティングが容易になった。HMAC built-in implementation
HACL*プロジェクトによる形式的検証済みコードを利用したHMAC実装が組み込みで提供される。Asyncio introspection CLI
実行中のPythonプロセスを非同期タスク単位で検査できる新しいコマンドラインツールが追加された。pdb remote attach
pdb
モジュールがリモートから実行中のPythonプロセスへアタッチしてデバッグできるようになった。
ビルド関連の変更
Python 3.14ではビルドや配布方法にも大きな変更がある。
PEP 761: PGP署名の廃止
PGP署名が廃止され、代わりにSigstoreによる署名検証が推奨される。Experimental JIT compiler
macOSおよびWindowsの公式バイナリに試験的なJITコンパイラが含まれる。Android binary releases
公式にAndroid版Pythonバイナリの提供が開始された。
非互換・削除・非推奨の変更
非互換な変更点やC APIの削除・非推奨項目が多数存在する。詳細は以下のリンクで確認できる。
- Incompatible changes
- Removals and deprecations
- C API removals/deprecations
- Pending deprecations index
新しいWindowsインストールマネージャ
Windows向けインストーラが刷新され、新しい「Python Install Manager」が導入された。
Microsoft Storeのアプリページまたは公式ダウンロードページから入手できる。
このマネージャは、利用可能なすべてのパッケージをJSONファイルで提供し、柔軟なインストール制御を可能にする。従来のインストーラも3.14および3.15系の間は引き続き利用できる予定だ。
コミュニティとリリースチーム
記事の最後では、Hugo van Kemenade、Ned Deily、Steve Dower、Łukasz Langaの4名からなるリリースチームが、貢献者への感謝とPython Software Foundationへの支援を呼びかけている。
“Thanks to all of the many volunteers who help make Python Development and these releases possible!”
π(パイ)とポーの詩
恒例の「And now for something completely different」セクションでは、3.14(円周率)にちなみ、Edgar Allan Poeの『The Raven』をπの桁数に対応する“piem(パイ詩)”として再構成したMike Keithの作品「Near A Raven」が紹介されている。
Python 3.14は、スレッドセーフ化・圧縮処理・型アノテーション・開発体験のすべてにおいて進化を遂げたリリースである。
今後の3.15リリースに向けた基盤整備の意味でも重要なバージョンといえる。
詳細はPython 3.14.0 releasedを参照していただきたい。