10月2日、FOSSAが「Announcing fossabot: AI Agent for Strategic Dependency Updates」と題した記事を公開した。この記事では、AIエージェント「fossabot」がソフトウェア依存関係の更新を戦略的に自動化する仕組みと、その背景にある課題について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
依存関係更新に潜む新たなリスク
FOSSAはこれまで、オープンソース利用に伴うコンプライアンスとセキュリティのリスク管理を提供してきた。しかし近年、依存関係の「更新停滞」と「過剰な依存の増加」という新たなリスクが浮上している。
- AIが生成する新しいリポジトリや依存ツリーは急速に増加している。
- 一方で、既存の主要アプリケーションはアップストリームの進化に追いつけず、更新が滞る。
この二極化が生じる中で、fossabotは「熟練エンジニアが24時間体制で更新作業を担うかのように」依存関係を扱うことを目的としている。
既存の更新プログラムの問題点
多くの企業では依存関係の更新は「最小限のパッチを当てる」にとどまっている。そのため、抜本的なバージョンアップや長期的な改善が後回しにされる傾向がある。
DependabotやRenovateといった従来のツールは戦略的判断を下せないため、単純なパッチ適用に偏りがちである。
これに対し、fossabotは複雑なアップグレード、特に熟練エンジニアが数時間かけるような作業も対応可能である。
fossabotによる更新提案の具体例
例として、lodash
を4.17.20から4.17.21に更新するケースでは以下のような分析を行う。
47ファイルの
lodash
利用箇所を解析非推奨メソッドや互換性問題がないことを確認
修正内容の内訳として以下を提示
merge
関数のプロトタイプ汚染脆弱性を修正template
メソッドの入力検証を改善defaultsDeep
のサニタイズ強化
このように、fossabotは単なるバージョン番号更新ではなく、アプリケーションに与える影響を評価したうえで推奨を提示する。
コードベース推論とAIによる拡張性
fossabotの特徴は「コードベース推論」にある。単にリリースノートを読むのではなく、自社アプリの利用状況を静的解析し、実際に破壊的変更が影響を及ぼすかを判断する。
- Reactライブラリの新しい書き方に対応するようコンポーネントを修正
- APIの前方互換性を確認したうえでメジャーアップデートを適用
- パッチ版に含まれる仕様変更を補うコード修正を追加
人間のエンジニアが短時間で行うには難しい規模の調査を、AIが疲労なく継続できる点が大きな強みだ。
評価フレームワークと信頼性確保
fossabotは「Accuracy(正確性)」「Consistency(一貫性)」「Correctness(正しさ)」の3指標(ACC)で自己評価を行う。
グループ | 複雑さ | low | medium | high |
---|---|---|---|---|
routine_minor_updates | ○ | ○ | ○ | |
multi_dependency_updates | ○ | ○ | ○ | |
major_version_upgrades | ○ | ○ | ○ | |
dev_dependencies | ○ | ○ | ○ |
特に、誤検出による破壊的変更の見落としは信頼性を損なうため、評価には重み付けが導入されている。
公開プレビューと今後の展開
fossabotは現在、JavaScriptおよびTypeScript向けにパブリックプレビューとして提供されている。GitHubアプリとして利用可能で、ユーザーは毎月15ドル分のクレジットを無料で得られる。
DependabotやRenovate、Snykが開いたプルリクエストを自動解析するほか、今後はfossabot自身が事前計画を含めたプルリクエストを作成する機能も予定されている。
詳細はAnnouncing fossabot: AI Agent for Strategic Dependency Updatesを参照していただきたい。