10月1日、AWSが「Amazon ECS Managed Instances」を発表した。
この記事では、EC2の柔軟性と運用の全自動化を両立する「Amazon ECS Managed Instances(以下、Managed Instances)」の概要、使い方、主要機能、提供リージョンと料金体系について紹介する。
概要――EC2の自由度を保ったまま“フルマネージド”化する新しいECSの実行基盤
Managed Instancesは、Amazon ECSでコンテナを動かす際の新しい選択肢である。
EC2の全機能群(多様なインスタンスタイプ、価格オプション、ネットワーク性能、GPU対応など)を活用しつつ、基盤のプロビジョニング、スケーリング、セキュリティパッチ適用、コスト最適化といったインフラ運用はAWS側にオフロードできる。結果として、TCOの削減とベストプラクティス順守を両立しながら、アプリケーション開発に集中できる設計になっている。
主要機能
フルマネージド運用
AWSがインスタンスのプロビジョニング、スケーリング、メンテナンスを一括管理する。セキュリティパッチは14日ごとを目安に適用され、EC2 Event Windowsを使って計画的にメンテナンスを行える。
インスタンスタイプ選択の柔軟性
デフォルトでは最適なタイプを自動選定するが、ワークロード要件に応じてGPUやCPUアーキテクチャなどを指定できる。
コスト最適化の自動化
タスクの配置を継続的に最適化し、空のインスタンスを整理して終了する仕組みを備える。
EC2機能との深い統合
EC2の価格オプションと統合され、既存キャパシティを最大限活用できる。
セキュリティ――Bottlerocketベース
Bottlerocket OS上で稼働し、自動アップデートでセキュアな状態を維持する。
従来のECSとの比較
Managed Instancesの特徴は既存のECS(ECS on EC2、Fargate)と明確に異なる。以下に整理する。
項目 | ECS on EC2 | ECS on Fargate | ECS Managed Instances |
---|---|---|---|
インフラ管理 | ユーザーがEC2を用意・管理 | 完全に抽象化(インスタンス概念なし) | AWSが管理(パッチ、スケーリング、終了処理) |
インスタンスタイプ | ユーザーが選択 | 選択不可 | AWSが自動最適化(必要なら属性で制御) |
コスト効率 | 遊休リソース発生しやすい | コンテナ単位で従量課金 | 自動集約と遊休インスタンス削除で最適化 |
セキュリティ | OSパッチ適用も自前 | AWS管理 | Bottlerocket + 自動パッチ |
柔軟性 | 高い(EC2全機能利用可能) | 低い(ブラックボックス) | 高い(EC2の柔軟性を保持) |
課金体系 | EC2料金のみ | コンテナ利用時間課金 | EC2料金 + 管理費用 |
この表から分かる通り、Managed Instancesは「EC2の柔軟性を維持しつつ、運用負担をFargate並みに下げる」という中間的な選択肢として位置づけられる。
コンソールからのセットアップ手順
AWSマネジメントコンソールで新規ECSクラスターを作成するには、まず「Fargate and Managed Instances」を選択し、次の2つのモードから構成方法を選ぶ。
- Use ECS default:Pendingなタスク群を束ね、コストとレジリエンス指標に基づいて最適なインスタンスタイプを自動選択する推奨パス。
- Use custom – advanced:CPU・メモリに加え、最大20種の追加属性(アーキテクチャ、GPU有無、ネットワーク帯域など)でインスタンスタイプ候補を絞り込める詳細設定モード。
以降は、選択した属性に一致するインスタンスタイプの一覧が提示され、その条件に従ってECSが必要な台数のインスタンスを自動プロビジョニングする。




提供開始と料金、利用方法
Managed Instancesは、米国東部(バージニア北部)、米国西部(オレゴン)、欧州(アイルランド)、アフリカ(ケープタウン)、アジアパシフィック(シンガポール、東京)で提供開始済みである。利用はコンソール、AWS CLI、IaC(AWS CDKやCloudFormation)から可能で、EC2インスタンス費用に加えて管理手数料を支払うモデルとなる。
詳細はAnnouncing Amazon ECS Managed Instances for containerized applicationsを参照していただきたい。