9月24日、IEEE Spectrumで「AI Is Redefining the Concept of a Programming Language's Popularity」と題した記事が公開された。この記事では、AIの普及がプログラミング言語の人気という概念そのものを揺るがしつつある現状と、その未来像について詳しく紹介されている。以下に、その内容を簡潔にまとめて紹介する。
2025年のランキング結果と衝撃的な変化
IEEE Spectrumの「Spectrumランキング」では、今年もPythonが首位を維持した。一方で大きな注目を集めたのは、JavaScriptが昨年の3位から6位に後退したことである。ウェブ開発において長年トップクラスの存在感を誇ってきたJavaScriptが順位を落とすのは、多くの開発者にとってショッキングな出来事だ。
その背景には、AIの利用スタイルの変化がある。従来、ウェブサイトやアプリケーションの構築においては、JavaScriptの文法やフレームワークに精通することが必須とされてきた。しかし、現在では「バイブコーディング」と呼ばれるAI補助型の開発手法が普及し、自然言語で指示を与えるだけでAIがコードを生成する環境が整いつつある。結果として、 開発者があえてJavaScriptを学習・利用する必要性が減少しているのだ。
ランキングの測定手法とその限界
ランキングは以下の複数の指標を組み合わせて算出されている。
- Google検索トラフィック
- Stack Exchangeでの質問数
- 論文での言及数
- GitHubでの活動量
ただし、2025年における Stack Exchangeでの質問数は前年の22%まで減少 した。これは、開発者がChatGPTやClaudeといった大規模言語モデル(LLM)に直接質問するようになり、従来の公開フォーラムに依存しなくなったことが原因である。AI利用の広がりは、特定言語への「可視化された関心」を減少させ、特にJavaScriptのように利用シーンが明確だった言語に大きな影響を与えている。
プログラミング言語の意味が薄れる時代
AIアシスタントの普及により、開発者は文法や制御構造といった言語固有の知識にこだわる必要が減っている。
- LLMは十分な学習データがあれば、どの言語でもコードを生成可能
- 開発者の関心は「言語選び」から「AIにどう指示するか」へとシフト
- 言語間の違いは、CPUの命令セットの違い程度に扱われる可能性
この結果、 新しい言語が誕生しても、AIが十分なデータを持たない限り広まることが難しくなっている。 過去に『The C Programming Language』や『Starting Forth』といった名著が普及を後押ししたような事例は、AI時代には成立しにくいと考えられている。
将来像:ソースコードなき開発?
記事では、AIがプロンプトから直接「中間言語」に変換し、コンパイラやインタプリタに入力する未来も想定されている。この場合、ソースコードは「ブラックボックス」となり、開発者は以下の領域に専念することになる。
- ソフトウェアアーキテクチャの設計
- アルゴリズムの選択(例:A*探索アルゴリズムなど)
- ハードウェア資源の活用法
- システム全体の統合と品質保証
このシナリオでは、言語の細部よりも計算機科学の基礎知識を学ぶ価値が一層高まる とされている。
結論:人気の定義が変わる
プログラミング言語の人気ランキングは2013年以来続いてきたが、AIの登場により「人気」という概念そのものが揺らいでいる。特に、JavaScriptの順位後退はAI時代における学習や利用の変化を象徴する出来事といえる。来年以降、どのような指標でプログラミング言語の動向を測定すべきか、再考が求められている。
詳細はAI Is Redefining the Concept of a Programming Language's Popularityを参照していただきたい。