9月11日、Ars Technicaが「Pay-per-output? AI firms blindsided by beefed up robots.txt instructions.」と題した記事を公開した。この記事では、AIによるコンテンツスクレイピングと著作権者への補償をめぐる新たな標準「Really Simple Licensing(RSL)」について詳しく紹介されている。
RSL標準とは何か
Reddit、Yahoo、Quora、Medium、The Daily Beast、Fastlyなど大手プラットフォームや出版社が、AIクローラーによる無断スクレイピングに対抗するための解決策としてRSLを発表した。これは従来のrobots.txtを拡張し、ライセンス条項を自動的に付与できる仕組みを提供する。
RSLはオープンかつ分散型のプロトコルで、出版社は自分のコンテンツをAIに利用させる条件(利用許諾、補償方法、対価のモデルなど)を明示できる。

RSLがサポートするライセンスモデル
RSLはRSS(Really Simple Syndication)の考え方を継承し、幅広いデジタルコンテンツに適用可能だ。出版社は以下のようなライセンス条件を選べる。
- 無料利用
- 出典表記付き利用(attribution)
- サブスクリプション
- ペイ・パー・クロール(AIがコンテンツをクロールするたびに補償)
- ペイ・パー・インファレンス(AIが回答生成にコンテンツを使用するたびに補償)
robots.txtでの具体的な記述例
RSL公式サイトでは、出版社がすぐに利用可能なテンプレートを提供している。以下はその一例だ。
# 注意: すべてのクローラーおよびボットは、RSL CollectiveのAIロイヤリティ・ライセンスの
# 条件に従わない限り、本コンテンツをAI学習に使用することを厳禁とする。
# ライセンスなしで本コンテンツをAI学習に使用するいかなる行為も、
# 当社の知的財産権の侵害に当たる。
License: https://rslcollective.org/royalty.xml
この記述により、従来の「クロール可否」指示だけでなく、ライセンス契約の有無を示すことができる。Fastlyはすでに技術的な強制力を持たせる仕組みを提供しており、Cloudflareも同様の施策を導入する可能性があるとみられている。
AI企業と出版社双方への影響
RSLは出版社の利益保護だけでなく、AI企業にとっても「ライセンスのスケーラブルな仕組み」を提供する点で有用とされる。AIモデルが実際に参照するコンテンツに対してのみ補償を支払うため、公平性と効率性を両立できる。
ただしGoogle、Meta、OpenAI、xAIといった主要AI企業は現時点で公式コメントを控えており、実際にどの程度受け入れられるかは不透明だ。
クリエイター側の声
MediumのCEOであるTony Stubblebineは「現在AIは盗まれたコンテンツで動いている。RSLこそがAI企業に『対価を払うか、利用をやめるか、事業を停止するか』を迫る唯一の方法だ」と強い言葉で導入を支持した。
Fastlyの共同創業者Simon Wistowも「RSLは健全なコンテンツエコシステムの基盤を築く」と評価している。
今後の展望
RSLは産業界主導の標準であるが、将来的には法制度に取り込まれる可能性も指摘されている。最近のAnthropicによる15億ドル規模の和解事例もあり、ライセンス違反が大きな金銭リスクにつながることが明確になっている。
開発者Doug Leedsは「オープンウェブを存続させるための仕組みだ。大手だけでなく小規模なクリエイターも収益化の機会を得られる」と述べ、幅広い普及を呼びかけている。
詳細はPay-per-output? AI firms blindsided by beefed up robots.txt instructions.を参照していただきたい。