本連載は、「 エキスパートへの道しるべ(Load to Expert) 」をテーマとして、初級者がエキスパートになるためのヒントを、日本を代表するエキスパートの方々に伺う企画です。
今回は、2009年からAndroidに携わり、数多くの開発現場を支えてきた あんざいゆき さんにご登場いただき、Androidの魅力や学習のコツ、そして最新のトピックまで、余すところなく語っていただいきました。

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Android開発の魅力と進化
——まずは自己紹介をお願いできますか?
あんざい: はい、あんざいゆきと申します。株式会社uPhycaという会社を運営していまして、主にクライアント企業のAndroidアプリ開発をお手伝いしています。会社を立ち上げたのは2011年ですが、Android自体は2009年頃から触り始めました。もう15年ほど、Androidと一緒に歩んできたことになりますね。
——Android開発の概要や魅力について、改めて教えていただけますか。
あんざい: そうですね。今では多くの人がスマートフォンを使っていますが、そのOSは大きくiOSとAndroidの2つに分かれています。Androidはオープンソース(誰でも利用・改変できる公開ソースコード)で公開されているのが特徴で、頑張れば自分でビルドしたOSをデバイスに焼き込むこともできるんです。
——それはかなり自由度が高いですね。
あんざい: はい。それにスマホだけではなく、タブレット、Android TV、車載インフォテインメントシステム、スマートウォッチ、最近だとヘッドマウントディスプレイ用のOSなど、対象が広がっています。どのデバイスでも基本的に同じ開発手法でアプリを作れるのは大きな魅力だと思います。
Kotlinが切り開いた開発環境
——昔はJavaによる開発が中心だったと思いますが、今は状況が大きく変わっていますよね。
あんざい: はい。当時はEclipse(Java開発に広く使われたIDE)を使ってJavaで開発するのが当たり前でしたが、10年ほど前にAndroid Studioが登場してから大きく変わりました。今はKotlinが標準サポートされています。
——やはり新しく始める方はKotlinから学ぶのがよいのでしょうか。
あんざい: そうですね。新規開発ならまずKotlinです。Javaで一から作ることはほとんどありません。とはいえ、昔のコードをメンテナンスする仕事ではJavaを読む必要も出てきます。
——なるほど。Kotlinの魅力についても教えてください。
あんざい: Kotlinは関数型言語(データを変数ではなく関数で扱うスタイル)に近く、ラムダ式(関数をその場で定義できる記法)が書きやすいです。標準ライブラリも充実していて、コレクション(リストやセットなどのデータ構造)の処理なども簡潔に書けます。 Javaに比べてコード量が短く、読みやすくなるのが大きな利点ですね。
エキスパートになるまでの学び
——ご自身がエキスパートになるまでに、特に役立ったと感じる学び方はありますか。
あんざい: 一番は「良いコードを読むこと」だと思います。Androidはオープンソースなので、OSの中身を覗くことができるんです。プラットフォームのコードや公式のサンプルを読み込んで、裏側の仕組みを理解しておくと、その上に作るアプリの質が大きく変わります。
——コードリーディングが鍵だったのですね。
あんざい: はい。それにコミュニティ活動や登壇も大きかったです。発表のために調べる過程で、実際に話す内容の10倍は勉強することになります。そういう「登壇駆動勉強」は、自分を強く成長させてくれました。
——これまでで印象的なエピソードや失敗談はありますか。
あんざい: 失敗というより、変化の速さを実感した出来事ですね。私が出版した本があったのですが、リリースからわずか1か月半後にマテリアルデザイン(Googleが提唱するUIデザイン指針)が登場して、内容が一気に古くなってしまったんです。UIトレンドの変化は本当に速いと痛感しました。
——なるほど…著者ならではの経験ですね。

Androidエキスパートがおすすめする学習方法と情報収集方法
——これからAndroidを学ぶ初心者には、どんな学習方法をおすすめしますか?
あんざい: 今ならAndroid公式サイトのコンテンツを利用するのが一番確実です。体系的なカリキュラムが整っているので、順番にやっていけば個人アプリを出せるレベルまで到達できます。
——ご自身の情報収集はどのようにされていますか。
あんざい: Android公式ブログやMediumの公式アカウント、JetBrains(Kotlinを開発している企業)のブログをよく見ます。Connpassのイベント資料もチェックしますね。RSSリーダーで購読して効率的に追っていますし、「Android駄菓子」という週刊ニュースレターも便利で、毎週4〜5本の注目記事をまとめてくれるので助かっています。
あんざいさんが現在注目しているトピック
——最近注目しているトピックを教えてください。
あんざい: 一つはAIコーディングエージェント(AIがプログラミングを支援するツール)です。以前はCursorやClineを試していましたが、Android Studio にも内蔵の AI コーディングエージェントが最近入りました。
次にAndroid XR。今年中にヘッドマウントディスプレイの実機が出る予定で、VR対応アプリの可能性が広がります。
最後はAndroid 16ですね。大きな新機能は少ないものの、UI対応の変更が入り、既存アプリの対応が大変になる見込みです。
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あんざいさんから初学者へのメッセージ
——最後に、読者である初心者の方に向けてメッセージをお願いします。
あんざい: Android開発の一番楽しいところは、自分専用のアプリをサクッと作れることだと思います。「こんなアプリがあればいいな」と思ったら、まずはそれを作ってみてください。公式の学習コンテンツも役立ちますが、作りたいものを持って学ぶ方が早く身につきます。家族や友人のニーズでも構いません。世にないものを自分の手で生み出す、その過程が最大の学びになると思います。
参考リンク集
- Android Developers 公式サイト
- Android Developers Blog
- JetBrains Blog
- Medium - Android Developers
- Connpass - Android関連イベント
- Android駄菓子(週刊ニュースレター)
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