テクノクラート的政治の失敗 ―『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
DRANK

マイケル・サンデル著『実力も運のうち 能力主義は正義か?』を読んで、これまで持っていなかった視点に出会うことができた。この本の大きなテーマは、ブレグジットやドナルド・トランプの当選といったポピュリズム的現象を発生させるに至った、「勝者」と「敗者」の分断である。その原因のひとつとして本書で強調されるのは、「テクノクラート的」な政治のあり方である。ポピュリストによる抗議を邪悪であるとか見当違いであるなどと解釈すれば、労働の尊厳をむしばみ、多くの人が見下され、力を奪われていると感じるような状況をつくり出した政治エリートの責任を免除することになる。この数十年にわたる労働者の経済的・文化的地位の低下は、避けがたい力の帰結などではない。主流派の政党とエリートによる統治手法の帰結なのだ。これらのエリートはいまや、トランプをはじめ、ポピュリストの支援を受けた独裁者が民主的規範に及ぼす脅威を懸念している。それは当然のことだ。ところが彼らは、ポピュリスト的反発へと至る怒りをあおることに自らが果たした役割がわかっていない。われわれが目撃している激動が、歴史的規模の政治的失敗への反応であることを理解していな…

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